28日後．．．(28 DAYS LATER)
（2002年 イギリス）（上映時間１時間54分）
監督：ダニー・ボイル
出演：キリアン・マーフィ、ナオミ・ハリス、ミーガン・バーンズ、ブレンダ
ン・グリーソン、クリストファー・エクルストン、レオ・ビル
＊渋谷シネクイントほかにて全国公開
ホームページ http://www.foxjapan.com/movies/28dayslater/
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＜ストーリー＞
イギリスの霊長類研究所に動物愛護活動家たちが忍び込み、実験動物を檻から
解放しようとする。だが、その動物たちは、恐ろしいウイルスに感染していた
。その28日後、ロンドン市内の病院の一室でジムという青年が目覚める。彼は
、交通事故にあい意識を失っていたのだった。マークとセリーナという男女に
出会った彼は、イギリスのほとんどの地域が汚染され、非感染者はわずかしか
生き残っていないことを知らされる……。
＜レビュー＞
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Ｂ級ホラーの素材をスリリングに昇華したダニー・ボイルの快心作
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この映画の第一の勝因はそのアイデアにあります。
動物によってもたらされたウイルスがイギリス中を汚染。血液によってウイル
スに感染すると凶暴性を帯び、誰彼となく襲いかかる。よって、誰かが感染し
たら、一瞬のうちに殺さなければならない。たとえそれが親兄弟でも……。
という設定自体がかなりスリリング。しかも、最近のＳＡＲＳ騒動なんかがあ
るから、けっして架空の話だと切り捨てられない怖さがあるんです。
ただし、こういうアイデアは、Ｂ級ホラー映画などでありがちなもの。それを
さらに深みを持った見応えある作品に昇華させたのは、ひとえにダニー・ボイ
ル監督の演出力のおかげです。 (*^。^*)
冒頭は霊長類研究所の襲撃場面。そこから一転して、病院にいる主人公の青年
ジムが昏睡状態から目覚めるシーンに移る。ジムは周囲を見回すが誰もいない。
「ＨＥＬＬＯ！」という呼びかけが空しく響くだけ。
ジムは街へ出てみる。だが、そこもまったくの無人。荒廃した街を歩き続ける
ジム。そのあまりにも孤独な姿。しかし、同時に彼を取り巻く街並みは静寂に
包まれ、美しささえ漂わせている。
このシーンでもうつかみはＯＫ！ ボクの心はスクリーン引き込まれ、ジムと
ともにロンドンの街をあてもなく歩き続けました。こうしたとてつもなくパワ
ーを持った映像も、この映画の大きな魅力です。夕日をバックにしたビル街、
おどろおどろしい闇、美しい野の草花……。時には美しく、時には怪しく、時
には寒々しく、時には暴力的に迫ってくる映像の力は、ハンパなものではあり
ません。
本当に誰もいないのか？ いったい何が起きたのか？ (・_・？)
混乱しながら歩くうちに、ジムは礼拝堂に入り込む。しかし、そこにあったの
は、おびただしい死体の山。それでも、「ＨＥＬＬＯ！」と声をかけるジム。
すると、突然、牙をむいて彼に襲いかかる神父の姿。
必死で逃げるジムは、マークとセリーナという男女に救われ、恐ろしい事実を
知らされる。やがてジムたちは、わずかな希望にすがって、軍隊の基地がある
らしいマンチェスターへ向けて出発する。
このようにウイルス感染者の襲撃から逃れて、必死に生き延びる男女の物語で
す。基本となるホラー部分のスリリングさは見事としか言いようがありません
。野獣のように襲ってくる感染者たちの姿からは、人間の本質に潜む暴力性ま
でも想起させられ、背筋がゾクゾクするほどでした。
スピード感あふれる映像と音楽。あわや危機一髪の場面のあとに、パーティー
や無人のスーパーでのショッピングといったホッとするシーンを織り込むメリ
ハリ。どれをとっても一級品の演出です。
途中でややダレかかるものの、後半は軍隊の基地で起きる恐怖の出来事に、ア
クション・ヒーロー的な要素もチラッとミックスさせて、再び有無を言わさぬ
パワーでスクリーンに引きずり込みます。 Ｗ（゜Ｏ゜）Ｗ
そして、ただのホラーで終わらないのも、この映画の凄いところ。Ｂ級ホラー
なら、ただ襲われる対象でしかない人物にきちんとキャラクターを与え、しか
もメッセージ性まで表現している。
たとえば、凶暴なウイルスに感染した人々よりも、ある意味でもっと恐い人間
の本性をあぶり出す。そして、それでも希望を捨てずに未来を信じることの大
切さも伝えている。
それを象徴するのが明るさを持ちながら、けっしてわざとらしくないラストシ
ーン。前半のジムの叫び「ＨＥＬＬＯ！」がここでうまく使われています。
（ただし、このラストシーンには別バージョンもあるらしい）
というわけで、スリリングなホラー映画としても一級品だが、それを超えたメ
ッセージ性を持った映画としてもかなりの出来。最初から最後まで、まったく
飽きさせないボイル監督の演出力は素晴らしい！ (^-^)//""
『トレインスポッティング』で高く評価されたものの、レオ様主演『ザ・ビー
チ』などでやや評価を下げたダニー・ボイル。ここで一気に名誉挽回という感
じ。ていうか、こういう小品のほうが本領を発揮する監督なのかもね。けっし
て大きいことがいいとは限らないのです。山椒は小粒でもピリリとね。
(^_-)-☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない？】
（テンポのよさ、映像の力などで、ほとんど飽きさせない。ホラー映画のスタ
イルは取っているものの、もっと幅広い層にアピールできる映画です。ただし
血はドクドクなので要注意ヨ！）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2003年９月10日（水）シネクイントにて。午前11時30分の回。