60セカンズ (GONE IN SIXTY SECONDS)


(2000年 アメリカ)(上映時間1時間58分)
監督:ドミニク・セナ
出演:ニコラス・ケイジ、アンジェリーナ・ジョリー、ジョバンニ・リビージ、
   デルロイ・リンドー、ロバート・デュバル

<ストーリー>
かつてスゴ腕の車泥棒として活躍したメンフィス(ニコラス・ケイジ)は、今
は引退し、まともな仕事についていた。そんな彼のもとに、弟キップ(ジョバ
ンニ・リビージ)が車泥棒でドジをふんで、依頼人から殺されそうになってい
ると連絡が入る。故郷に戻ったメンフィスは、弟の生命を救うために、数日の
間に高級車50台を盗むという常識ハズレの仕事を引き受けるが……。

<レビュー>
こんな映画をつくって、「車泥棒になりたい!」って人が増えたらどーすんの
サ!? (^0^)

いやぁ〜、そのぐらい車泥棒のスリルや快感が生き生きと描かれているんデス。
ユニークな泥棒の手口やグッズが登場して、「フーン、なるほどねぇ」と感
心させられることばかり。車ネタもたくさん出てくるから、車好きの人ならな
おさらたまらんだろうなぁ。

でも、さすがにただの泥棒をヒーローにするわけにはいかなかったのか、「本
当は嫌なんだけど、しょうがなく泥棒するんですぅ〜」という設定を用意。
すでに車泥棒から足を洗ったメンフィスが、依頼人に殺されかけている弟キッ
プの命を救うために、「数日間で高級車50台を盗め!」という要求を受け入れ
る……。

一度まっとうな道に戻ったのに、不本意ながら再び悪事に手を染めるというパ
ターンはよくありがちな話。それでも、けっこう効果的なんですよねぇ、この
パターンって。だって、当事者の心の葛藤がモロに出てくるじゃないですか。
でも、この映画では、それはただの添え物。一応は、車泥棒に戻るハメになっ
たメンフィスの心の葛藤や、その引き金になった弟との対立なんかが描かれて
いるけど、表面的でまったく深まりのない描き方。だから、全然つまらない!

そして、何よりも致命的なのが緊迫感があんまりないこと。
だって、問題の弟が解放されて兄メンフィスのそばにいるんだもん。
依頼人がかつて殺人を犯した狂暴なヤツで、「もしも逃げ出したりすれば母親
も殺してやるゾ!」なんて脅すけど、どうも説得力ないなぁ。大切な人質を手
放してどうすんの? (・_・?)

まあ、それでも見応えのある場面は多い。
前半では、泥棒復帰を決めたメンフィスの仲間集めが大きなポイント。
かつての仲間に連絡をとって、犯行に引き入れようとする。それが長老のドニ
ー(ロバート・デュバル)、メンフィスのかつての恋人スウェイ(アンジェリ
ーナ・ジョリー)をはじめかなりユニークで魅力的な連中ばかり。

そこに弟のキップと仲間の若い車泥棒たちが加わって、着々と準備が進む。
ハイテク技を得意とする若手とそれを否定するベテランたちの対立があったり、
仕事を横取りされたと誤解した地元のチンピラたちに襲撃されたりと、いろ
いろな仕掛けも用意されている。

その中でも、大きな柱になるのが、かつてメンフィスを逮捕できなかった刑事
キャッスルベック(デルロイ・リンドー)の活躍。メンフィスが再び犯行を行
うと感じた彼は、徹底マークして今度こそ逮捕にこぎつけようとする。
本格的な追及は犯行が始まる後半からだけど、それまでもアレコレと仕掛けて
きてなかなか見せてくれる。

なにしろ、クライマックスの「高級車50台盗み」はたった24時間の出来事です
からねぇ。そこに持って行くまでにたくさんオードブルを用意しないと、間が
持たないわけですヨ。

そしていよいよ後半。24時間で高級車50台を盗む犯行がスタート。
ここからは断然おもしろくなってくるゾ!
車泥棒のスピーディーでスリル満点のシーンが次々と登場。その華麗な盗みの
テクニックは、まさに芸術って感じ。
メンフィスがこれまでどうしても盗めなかった憧れの車に、まるで女性を口説
くように優しく話しかけるところなんか、もう「車泥棒」とか「犯罪」ってい
うジャンルを超越しちゃってるもん。

ただねぇ、犯行があまりにもうまく行くもんだから、「アレアレ」って感じも
するんだなぁ。途中でいくつかのトラブルがあって作戦が変更されたりするけ
れど、とりあえずは49台の車をあっさり盗んじゃう。あんまり、あっさりしす
ぎて、なんだかちょっと拍子抜け。
まあ、24時間に50台の車を盗むなんて、もともと荒唐無稽で現実には起きそう
もない話だから、リアリティーがないのは当然なんだけどサ……。

犯行の仕上げはメンフィスが盗む50台目の車。ところが、これが警察にキャッ
チされて白昼の街中で大カーチェイス大会をくり広げることになる。ビックリ
するようなスケールじゃないけれど、それなりにスリリングで楽しいカーチェ
イスだ。 (^-^)

ただし、ラストは最悪です。 (´ヘ`;)
なんだ? あの甘すぎる結末は。そこに至るまでの刑事とメンフィスの心の交
流がきちんと描かれていないから、ただの付け足しにしか思えないゾ。ただ、
うまく話をまとめようとしただけなんじゃないのか?
やっぱりドラマ的に観ると、つらいものがあるなぁ、この映画。

とまあ、けっこうイチャモンをつけましたが、それを上回るほど魅力的な車泥
棒のシーンやカーチェイスがこの映画の見どころ。
つまり、細かな心理ドラマは全部付け足しで、泥棒に至る準備と犯行の様子を
楽しんじゃうのが、正しい見方ではないでしょうか。
そうか! やっばりこれ、ただの車泥棒の映画だったんですねぇ! (^0^)

では、最後に役者さんたちに対する感想を。
まず、主演のニコラス・ケイジはさすがに貫禄アリ。
以前『シティ・オブ・エンジェル』を観た<もも>ちゃんが「天使が似合わん
ぞ! 犯罪者キャラのほうがピッタリだ」と言ってたけど、確かにそうだわ。
こういう役のほうが絶対に似合う! 一度足を洗ったのに、どんどん車泥棒に
ハマッていく姿がよく出ていました。

で、相手役のアンジェリーナ・ジョリーは、俳優ジョン・ボイトの娘で『ボー
ン・コレクター』でデンゼル・ワシントンと共演したり、現在公開中の『17歳
のカルテ』にも出演。幅広い役ができると評判で、今回はセクシー・キャラを
演じているのだが、残念ながら存在感ナシ。ニコラス・ケイジ演じるメンフィ
スとの恋の復活劇が描かれているけど、これもただの付け足しなんだもん。
「セックスと車泥棒とどっちが興奮する?」なんて聞くけど、そりゃ「車泥棒
に決まってんじゃん!」と言いたくなるぐらい存在感のない役で損してます。

刑事役のデルロイ・リンドーや、車泥棒の長老役のロバート・デュバルをはじ
め、その他の配役はなかなかビシッと決まってましたね。

ちなみに、この映画、スタントマン出身のH・B・ハリッキーが製作・監督・
脚本・主演・スタントの5役を務めた1974年の『バニシング IN 60"』のリ
メイクだそうです。
それから、「60セカンズ」って言っても、1分間で50台の車を盗む話じゃあり
ません。そのぐらいスゴ腕の車泥棒だってことなので、誤解のないようにネ。

《ぽちのおススメ度》
★★★
(ドラマ的にはつまんないけど、エンターティメント性は高いと思いますヨ。お
金払っても元は取れるはず。)
                                    <ぽち>


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