アダプテーション(ADAPTATION)
（2002年 アメリカ）（上映時間１時間55分）
監督：スパイク・ジョーンズ
出演：ニコラス・ケイジ、メリル・ストリープ、クリス・クーパー、カーラ・
シーモア、ブライアン・コックス、マギー・ギレンホール
＊シネマライズほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.adaptation.jp/
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＜ストーリー＞
『マルコヴィッチの穴』の脚本で大成功を収めたチャーリー・カウフマン（ニ
コラス・ケイジ）。スーザン・オーリアンの著書「蘭に魅せられた男 驚くべ
き蘭コレクターの世界」の脚色を依頼されるが、アイデアがまとまらない。一
方、彼の双子の弟ドナルド（ニコラス・ケイジ）も脚本家を目指し、脚本家養
成セミナーに参加。出来上がった作品は周囲から高く評価される。チャーリー
は追い詰められ、突飛なアイディアを思い付くが……。
＜レビュー＞
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人を食いまくった話で楽しませる。これぞ才人のなせるワザ
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世の中には、凡人には想像もできない発想をする人がいるもの。この映画の監
督スパイク・ジョーンズ、脚本家チャーリー・カウフマンもそういう人たちで
す。前作『マルコヴィッチの穴』（1999）で俳優ジョン・マルコヴィッチの頭
の中に侵入するという奇想天外な映画をつくった彼ら。今回もとんでもない映
画をつくってしまいました。 Ｗ（゜Ｏ゜）Ｗ
この映画の原作はスーザン・オーリアンというジャーナリストの「蘭に魅せら
れた男 驚くべき蘭コレクターの世界」という本。蘭に魅入られた男を女性ジ
ャーナリストが取材した本なんですが、普通ならこれをそのまま映画化します
よね。ちょっと変わったラブ・ストーリーかなんかにアレンジして……。
ところが、さすがにチャーリー・カウフマン。そんな単純な話にはしません。
主人公はなんと自分自身。「蘭に魅せられた男 驚くべき蘭コレクターの世界
」の脚色を依頼されるが、なかなかうまくいかず七転八倒。
そんな中、脚本家志望の双子の弟ドナルドが書いた脚本が絶賛される。
あせったチャーリーは、自分自身を主人公にするという突飛なアイデアを思い
つく。そして、取材のために原作の著者スーザンに接近する……。
映画はカウフマンの苦悩と、蘭に魅入られた男ジョン・ラロシュと彼を追いか
ける女性ジャーナリストのスーザン・オーリアンとの不思議な関係を軸に描か
れます。
カウフマンが実際にこの本の脚色を依頼されたのは事実だし、ジョン・ラロシ
ュとスーザン・オーリアンの存在も事実。でも、映画で描かれる彼らの関係は
フィクションだし、それよりなにより実際はカウフマンに双子の弟なんかいや
しない！？
このようにウソとホントをごちゃ混ぜにして、アッとビックリのユニークな世
界をつくり出したのがこの映画。誰が脚本家自身を主人公にする？ まさしく
人を食った映画といえるでしょう。 (・<;_;)ムシャムシャ
前半から中盤は、苦悩するカウフマンと、ジョン・ラロシュを追うスーザン・
オーリアンの姿が、わりと淡々と描かれます。
そこでの見どころはなんといっても笑い。コメディーとして笑える場面がたく
さんあるんですが、いちばんおもしろいのはカウフマン兄弟のキャラクターで
すね。
２人ともハゲでデブという設定ですが、兄は自分に自信がなくて女性にも逃げ
られる。一方、弟は楽天的で女性にも積極的。しかも、兄が書くシナリオがハ
リウッド映画とは違うユニークなものなのに対して、弟はいかにもハリウッド
的なエンタメ系。
こういう正反対の２人をニコラス・ケイジがまとめて演じていて、それがひた
すら笑えるんですヨ。 (^０^*)
ボク的には、シナリオが書けずに悩むカウフマンの姿がなんだか自分に投影さ
れて、よけいにおもしろく観てしまいましたね。
ただし、『マルコヴィッチの穴』ほどのハジケ方や映像の斬新さはないかなぁ
〜、と思っていたんですが、なんのなんの。後半の展開を観てブッ飛んじゃい
ました。 (ノ゜ο゜）ノ
どうしても脚本が書けないカウフマンがスーザンに会いにニューヨークに行く
んですが、それをきっかけにとんでもないことが起きます。それまでは、ハリ
ウッド映画とは縁遠いタッチだったのに、いきなりガチガチのハリウッド流ア
クションサスペンスが展開されちゃうんです。その急展開ときたら、まるで暴
走機関車並み。 σ(^◇^;)
これにはあきれるのを通り越して、笑ってしまいました。よくもまあこんなに
ワケのわからん暴走をするもの。でも、それが無条件に楽しいんですよねぇ。
しかも、この映画、ただ楽しいだけじゃないんです。人を食った話だけど、後
半はけっこうまともな人間ドラマが展開される。
カウフマン、ジョン・ラロシュ、スーザン・オーリアンという３人はいずれも
悩みを抱えていて、自分を変えたいと思っている。でも、それがとんでもない
事件を巻き起こす。
映画の中のシナリオ講師がカウフマンに向かって、「人生が淡々と進むなんて
何もわかっちゃいない！」てなことを言うのですが、その言葉通り、無風に思
えた人生に突然大暴風雨が襲ってきちゃうというこの皮肉。
「うーむ、ドラマチックな人生っていったい何なの？」と考えさせられてしま
いました。人生はまさにドラマですねぇ〜。
そして、同時に人間讃歌も伝わってきます。人間て、こんなにヘンだけど、と
ってもおもしろいでしょ〜？ というつくり手の思いが伝わってくるんです。
人を食った話で楽しませて、しかも人間ドラマでちょっぴり考えさせる。いや
ぁ〜、ユニークな映画ですよ。
役者では、この作品でアカデミー助演男優賞を取ったクリス・クーパー（アリ
ス・クーパーじゃないよん）、そしてメリル・ストリープの渋い演技が光りま
す。しかし、それより何よりやっぱりニコラス・ケイジでしょ。ハゲでデブの
ダメダメ人間を演じただけでなく、その双子の弟までまとめて演じちゃうんで
すから。まさに怪演デス。 (^-^)//""
こういう脚本を書けるチャーリー・カウフマンは才人。クレジットの脚本担当
がチャーリー＆ドナルド・カウフマンになっているのにも大爆笑。おまけにエ
ンドタイトルで「ドナルドを偲んで」と出るに至ってはもう降参。(_
_,)/~~
それにしても、ジョン・ラロシュやスーザン・オーリアンといった実在の人物
が、こんなハチャメチャなシナリオを許したのもスゴイこと。きっとシャレが
わかる人たちなんでしょうねぇ〜。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない？】
（遊び心のある人にオススメ。『マルコヴィッチの穴』が楽しかった人は、き
っと楽しめるはず。この不思議な魅力は実際に観てもらうしかありません。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2003年８月26日（水）シネマライズにて。午後11時40分の回。