愛してよ
| （2004年 日本）（上映時間１時間47分） 監督：福岡芳穂 出演：西田尚美、塩顕治、松岡俊介、野村祐人、鈴木砂羽、菅田俊、筒井真理 子 ＊ 12月17日よりシアター・イメージ・フォーラムにて公開 ホームページ http://www.aishiteyo.com/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ シングルマザーの美由紀（西田尚美）は、10歳の息子ケイジ（塩顕治）をキッ ズ・モデルとして成功させるために一生懸命。ケイジはそんな母を冷ややかに 見つめつつ、仕方なくつきあってあげている。やがて、美由紀の恋人が登場し、 ケイジは大いに傷つく。美由紀と離婚した実父に会いに行ったケイジは、母の 恋人を殺してくれるように頼むのだが……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 シンプルな感動ではなく観客にアレコレ考えさせる母子のドラマ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 廣木隆一監督、矢口史靖監督、平山秀幸監督、中江裕司監督、SABU監督など、 日本映画の名だたる監督の作品に出演してきた西田尚美。そんな彼女の主演映 画というので、舞台挨拶つきの完成披露試写会に足を運んだのでした。 事前の情報でシングルマザーの母親と息子の話と聞いていたので、コン・リー 主演の『きれいなおかあさん』のように、たくましい母親と健気な息子の感動 物語だと思っていたのですが、実際は大違い。感動するどころか、観ていてど うにも落ち着かない気分になってしまったのです。 基本は、母と子の愛と葛藤の物語。元気だけれど身勝手で強引なところがある シングルマザーの美由紀と、いろいろなことで傷つき周囲を醒めた目で見てい る10歳の息子ケンジ。その母子が対立や反発の末に心を通わせるというお話。 そこにケンジと母の再婚相手との関係、実父との交流そして悲劇、果てはモデ ル・オーディションに参加した子供たちの境遇まで、かなりの時間を割いて描 いている。 その背景には、いじめ、万引き、倒産、リストラ、虐待、自殺など、深刻な社 会問題まで垣間見える。 ケンジの心象風景と思われる映像や、自殺した女の子の幽霊（？）まで登場。 とにかくたくさんの要素がごちゃ混ぜで、どうにも落ち着かない。もっと整理 して、感情移入しやすい映画にしろ〜〜〜！！ ＼（＊｀∧´）／ と思ったのですが、どうやら福岡監督はわざとこういう映画にしたらしい。わ かりやすい感動物語にするのではなく、親子の絆というネタを使って、観客に いろんなことを考えさせる問題提起型の映画をつくりたかったようなのです。 そういう視点で観ると、それなりによくできた映画だと思います。観る人によ って、様々な捉え方ができるし、観終わってアレコレと考えてしまいます。 それがよくわかるのが後半の展開。後半になるにつれて母子のドラマよりも、 ケンジ少年の成長物語としての比重がかなり重くなってくるんですよね。さら に、彼の周囲の少年少女の生き方も……。同年代の子供たちや、そういう子ど もを持つ親たちは、特に考えさせられるのではないでしょうか。 とはいえ、ラストはちゃんと母子の感動ドラマへと持っていっています。未来 への光もきちんと示しています。 ただし、たくさんの要素を入れ込んでいるため、どうしても描き足りないとこ ろが目立ってしまいます。特にケンジの周囲の子供たちの行動、背景などは納 得できないところがたくさんありました。もう少し練り上げて、中身を整理し てもよかった気がしますね。 西田尚美は相変わらず良い個性をしています。飄々とした感じがたまりません。 息子役の塩顕治クンも自然な演技。監督の意向で台本ナシで演じたこともプラ スしているようです。 いかにも感動物語らしいネタだし、オープニングがコメディタッチだったりす るので、そういうことを意識したまま観ていると、途中で期待を裏切られてし まうかも。けっして涙、涙のドラマというわけではないので。そのあたりにご 注意を。 どちらかといえば、毎日悩みながら子育てをしている母親のみなさんなんかが、 グッとくる映画かもしれませんね。 《ぽちのオススメ度》 ★★☆☆☆（＋1／2★） （なかなかユニークでおもしろい映画。ただし意欲が空回りしているところも 見受けられる。もう少し整理したほうがよかった感じ。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年12月17日 ＴＯＫＹＯ ＦＭホール試写会（舞台挨拶付き）にて。 |