アレキサンダー(ALEXANDER)
●『アレキサンダー』（ALEXANDER）
（2004年 アメリカ）（上映時間２時間53分）
監督・脚本：オリバー・ストーン
出演：コリン・ファレル、アンジェリーナ・ジョリー、アンソニー・ホプキン
ス、ヴァル・キルマー、ロザリオ・ドーソン、ジャレッド・レト
＊丸の内ピカデリー1ほかにて全国公開
ホームページ http://www.alexander-movie.jp/
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＜ストーリー＞
紀元前356年、マケドニア王フィリッポス（ヴァル・キルマー）とオリンピア
ス（アンジェリーナ・ジョリー）との間に生まれたアレキサンダー（コリン・フ
ァレル）は、父の暗殺によってわずか20歳で王位に就く。ペルシア帝国を征服し
た彼は、さらに７年をかけてインドまで東征するのだが……。
＜レビュー＞
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古代の英雄を１人の人間として描こうとしたオリバー・ストーンの野心作
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アレキサンダー大王といえば、誰でも名前ぐらいは知っているはず。しかし、
どんな人物だったかはあまり知られていないでしょう。そこでオスカー監督オリ
バー・ストーンが、その波乱の生涯を映画化。
もともと熱〜い映画が得意なストーン監督。ベトナム戦争を扱った『プラトー
ン』、ケネディ暗殺の真実に迫った『ＪＦＫ』など、これまでに現代の歴史を描
いてきただけに、紀元前の人物をどう描くか大注目なのでした。O(^-^)O
映画は、アレキサンダー大王が亡くなってから40年後に、アンソニー・ホプキ
ンス演じるエジプト王プトレマイオスが、自伝の口述筆記をして、かつて仕えた
アレキサンダーを語るという構成。彼の幼少時代から、王位に就いた後に、ペル
シア帝国を征服したのをはじめ東方に大遠征をし、野望半ばで32歳で亡くなるま
でが描かれます。
ユニークなのがその切り口。けっして大昔の英雄として描くのではなく、現代
人と同じ目線で１人の人間としての彼を描いていきます。
野心家の母親への屈折した思い、その母が憎む父との関係、同性愛まで避ける
ことなく描いて、実に人間臭い人物像を生み出しているのです。
しかも、スッキリとわかりやすく描くのではなく、複層的に描写。たとえば、
母への思いでは、自分を野心の道具にしようとする母に反発しつつも、やはりど
こかで慕っている姿を描く。父親に対しても、愛と憎しみを同時に感じている。
また、敵や味方の反逆者を容赦なく殺すかと思えば、自由主義者として人種の融
和による国家建設を唱え、被征服者たちに恩情をもって接する。
こうして、完全無欠のヒーローとも、ただの暴君とも言い切れない複雑な人間
として捉えるところは、いかにもオリバー・ストーン監督らしい描き方だと思い
ます。
ちなみに、アメリカでこの映画が大コケしたのは、こういう単純でないところ
が嫌われたのかも。アメリカの観客って、わかりやすい話が好きな人が多いもん
ねぇ〜。
ただなぁ〜、監督の意図したことがうまく伝わっているかといえば疑問。全体
のタッチが仰々しい割には、アレキサンダーの悩みや苦しみが、きちんとは伝わ
ってこないんだよねぇ〜。どっちかというと、セリフだけで感情を表現するとこ
ろが多いしさぁ〜。なんだか上滑りしている感じです。
まあ、オリバー・ストーンに“行間で読み取らせる”ような繊細なドラマなん
か期待しないけれど、やたらに叫べばいいってもんでもないでしょう。
エジプト王プトレマイオスが、自伝を口述筆記する構成も、クドいばっかりで、
あまり効果的とは思えませんでした。（古代史だから説明が必要なのはわかるけ
ど……。）
その代わりにスゴイのが戦闘シーンです。スサマジイ迫力で思わず息を飲んで
しまいました。ラスト近くのインドの戦いなんて、あなたそりゃあ、とんでもな
い戦いですよ。意外な動物同士が激突しちゃうんですから。ボリショイサーカス
でもあんなものは見られませんぜ（笑）。そんなスゴイ闘いの場面が、２度しか
登場しないのがもったいない。
そのほか、バビロンをはじめとする街や宮殿などのゴージャスさも印象に残り
ます。さすがに、総製作費200億円をかけたというだけのことはあります。
主演のコリン・ファレルは、あれほどの東征をした人物にしてはやや線が細い
感じ。それよりも存在感があったのが母親役のアンジェリーナ・ジョリー。ハン
パでなくコワいです。ヘビが似合いすぎです。『トゥームレイダー』のあとは、
今度は『スネーク・ウーマン』てな映画でもいかがでしょうか？ (＾0＾)
というわけで、単純にわかりやすい英雄としてでなく、複雑な面を持った１人
の人間として描こうとしたオリバー・ストーンの意図は素晴らしい！
でも、それがうまく成功しているかといえば疑問です。
戦闘シーンの迫力などで、それなりに楽しめるものの、なんたって３時間近い
映画ですからねぇ〜。もっと深いドラマを見せてくれないとツライよなぁ〜。
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆（+1／2★）【ちょっとだけオススメ。おヒマでしたらどうぞ】
（視点はユニークだがイマイチ物足りず……。少なくとも、観終わってスカッ
とできるスペクタクル映画を期待する人は、観ない方がいいと思います。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2005年２月７日（月）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後１時45分の回。