甘い人生(A BITTER SWEET LIFE)
| （2005年 韓国）（上映時間２時間） 監督・脚本：キム・ジウン 出演：イ・ビョンホン、キム・ヨンチョル、シン・ミナ、キム・レハ、ファ ン・ジョンミン、エリック、チン・グ、オ・ダルス、キム・ヘゴン ＊新宿武蔵野館ほかにて全国公開 ホームページ http://www.amaijinsei.com/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 組織のナンバー2であり、ホテルの総マネージャーを務めるソヌ（イ・ビョンホ ン）は、出張に出かけるボスのカン（キム・ヨンチョル）から、若い愛人、ヒ ス（シン・ミナ）の監視を命じられる。彼女と若い男との密会現場に踏み込ん だソヌだが、ボスの命令に背いて報告しないままに男を追い出す。この決断が ソヌの運命を大きく変えていくのだった……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 『箪笥』の監督が独特の映像美で描く、血と暴力に満ちたフィルムノワール 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 イ・ビョンホン主演。てことで、「ビョン様」目当てのご婦人方が大挙して押 し寄せているこの映画。配給会社も＜切ない愛の物語＞という切り口のＰＲで、 タイトルも『甘い人生』とくりゃあ、ビョン様ファンはますます大喜びってワ ケだ。 (^○^) でも、ご注意くださいませ。ラブ・ストーリーとは全然違いますから！ この映画は、完全なるフィルムノワール、つまり黒社会映画。アヤシイ魅力に あふれたホラー映画の怪作『箪笥』のキム・ジウン監督が、フランスのフィル ムノワールを踏襲して撮った、オマージュ的な作品なのです。 フィルムノワールとくりゃあ、当然ながら、バッツンバッツン人が殺されるわ けで、この映画でも何十人もの人間が血をドバドバ流しながら死んでます。ビ ョン様ファンの女性のみなさんは、それを承知のうえでご覧くださいませ。テ レビの「美しき日々」みたいな話だと思って観にいくと、ヤケドしますぜ。 ボスに信頼されて、ホテルの責任者にまでのしあがった男が、ボスの出張中に 若い愛人の監視を命じられて、それがきっかけでとんでもない運命に突入して いくというお話。 シン・ミナ演じる愛人が、ファム・ファタール的な存在として、男たちのバト ルの発端となるのだが、彼女とイ・ビョンホン演じる主人公との愛がキッチリ 描かれることはありません。愛を知らない男と、愛人というイメージとは裏腹 に無邪気な女という２人のキャラクターを使って、そこはかとない情感を漂わ せるのみ。それどころか、愛人なんて、途中からほとんど登場しなくなったち ゃうんですから。 だって、そりゃそうでしょ。２人の恋愛ドラマの比重を重くしちゃったら、フ ィルムノワールじゃなくなっちゃうもんね。 というわけで、映画のほとんどは、組織の人間どもの裏切りと復讐のドラマで す。それもとびっきりスサマジく、エグいドラマ。 ナイフでブッ刺し、銃で弾丸をぶち込み、拷問で手をぶっ潰す。おおお！ そ こまでやるかね、てなぐらいのバイオレンスなシーンの連続なのだ。 とはいえ、「こんなの、とても正視できません！」という気分にさせないのは、 その映像の美しさゆえ。前作『箪笥』での映像も印象的でしたが、今回も全体 を包むダークな雰囲気の中で、独特の映像美をサク裂させています。カメラ ワークがスゴすぎだヨ〜〜。 ；￣ロ￣）！！ そして、緊張感の引っ張り方も見事。やるかやられるかのギリギリの緊張感の 中で、主人公の気持ちの変化を的確にとらえ、後半に行くにしたがってスリリ ングさをどんどん倍増させていきます。 主人公をいたぶるだけいたぶっておいて、一気に反撃させるところなんて、思 わずうなっちゃいましたねぇ〜。あれだけ溜め込めば、観客は当然主人公の気 持ちに寄り添うわけで、おかげでバイオレンスなシーンもそれほど抵抗なく観 てしまえるのだ。「遠慮するな徹底的にやっちまえぇ〜〜〜い！！」。 全体を包むダークで虚無的な雰囲気も、この映画にはピッタリです。 でもって、イ・ビョンホンがカッコよすぎ！ 本人が「私の代表作だ」と言う だけのことはあります。セリフではなく、肉体で破滅していく男の姿を表現し ているもん。この演技を観たら、テレビドラマでの彼の演技なんてブッ飛んじ ゃうな。 最初からフィルムノワールというワクをはめてつくっているので、そのへんで 多少窮屈で物足りないところも感じられます。ストーリー的にも、もうひとヒ ネリ欲しかった気がするし……。香港の『インファナル・アフェア』のように ヒネリまくれとは言わないけどネ。 でも、それを凌駕するだけの魅力は十分に備わった映画だと思います。キム・ ジウン監督の才気が感じ取れます。 「どうせイ・ビョンホン主演の女性向け映画だろ？」な〜んて思ってるアナタ、 ためしに観てみたら壮絶な復讐劇にブッ飛ぶかもヨ。 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆（＋1／2★） （キム・ジウン監督の演出と役者たちの演技は一見の価値あり。このテのフィ ルムノワールが苦手な方には、さすがにオススメしませんけど……。） （ぽち） 〔鑑賞データ〕 2005年４月29日（金）シネ・リーブル池袋にて。午後１時15分の回。 |