あなたが寝てる間に…(ＷＨＩＬＥ ＹＯＵ ＷＥＲＥ ＳＬＥＥＰＩＮＧ)
(1995年 アメリカ)
監督：ジョン・タートルトーブ
出演：サンドラ・ブロック、ビル・プルマン、ピーター・ギャラガー、ピータ
ー・ボイル
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＜レビュー＞
「スピード」で一躍スター女優の仲間入りをしたサンドラ・ブロック主演。
「予期せぬ人生が人生」。
サンドラ演じるヒロイン、ルーシーの亡きパパの言葉がこの映画のテーマ。
まったく予期しない出来事が次から次へと、これでもかといった具合にルーシ
ーを襲う！
追いつめられた彼女の運命やいかに!? なーんてね。
殺人事件もパニックもありません。だって、登場人物はみーんな善人なんだか
ら。
クリスマスを間近にしたシカゴを舞台に、メルヘンチックでハートウォーミン
グなラブ・ストーリーが展開します。
ルーシーは、電車の料金所で働いている天涯孤独の女の子。性格はとびきりい
いんだけど、地味で目立たないタイプ。そんな彼女のたったひとつの喜びは、
毎朝彼女のいるブースにコインを入れて通勤電車に乗るハイソでリッチそうな
ハンサム男、ピーター（くっつきそうな濃い眉毛のピーター・ギャラガー）に
会えること。言葉すら交わしたことのない彼を密かに「夢の王子さま」と呼ん
で、いつか結婚できる日を夢みてる。まさに少女マンガ的ヒロインなのだ。
リッチな男が電車で通勤するの？
なんて少々疑問はあるのだけれど、まあそれはともかく、クリスマスの朝、ホ
ームで男たちにからまれ、線路に突き落とされて意識不明になった彼の目前に
電車が！
これも恋のなせる業か、ルーシーは体を張って救うのです。
ところが、どうも打ち所が悪かったらしい王子さまは、白雪姫みたいにそのま
ま眠り続けてしまいます。
「私たち結婚するのに……」。ルーシーは病院で思わずつぶやきます。すると
、それを聞いた看護婦や警官は彼女をフィアンセと誤解、さらに駆けつけてき
たピーターの家族たちは「こんないい人と婚約してたなんて……」と驚くやら
大喜びするやら。
本当のことを言えないまま、どんどん深みにはまっていくルーシー。そこに登
場したのが優等生で弁護士のピーターとは正反対の地味な弟、ジャック（ビル
・プルマン）。派手好みの兄の趣味に合わないルーシーを初めは疑うものの、
だんだんその素朴さと純真さに惹かれていく。ルーシーもどこか亡き父親に似
ている彼に好意を……。
そうこうするうちに、眠れる王子ピーターが突然、昏睡状態から目覚めます。
いよいよルーシーのウソがバレで大混乱……かと思いきや、ピーターが彼女の
ことを思い出さないのは後遺症だと片付けられ、さらにピーターの名付親で家
族同然のソウルおじさん（彼はルーシーのウソを知っている！）には、「彼女
を逃したらお前はアホだ」と暗示をかけられます。
ワケのわからないままに「生まれ変わった気分」とか言ってルーシーにプロポ
ーズするピーター。これぞウソから生まれたホント。だけど、ルーシーの心に
はもうジャックが……。
病院での結婚式で全員にウソをついていたことを告白するルーシー。また以前
の日常に戻った彼女の目の前に、ある日落ちてきたのはコインではなく婚約指
輪。顔をあげるとそこにいたのは……。
ストーリーは単純だし、予想通りの展開ではあるけれど、テンポもいいし、セ
リフも巧みだから飽きさせない。初めはサエないサンドラがだんだんキュート
な魅力を発揮してくるのも見ていて楽しい。
ももは、個人的にはピーターのお人好しでノーテンキな家族とか、アパートの
オーナーの息子、ジョーＪｒがお気に入り。サブキャラが面白いのも、この映
画のお楽しみなのです。
だけど、この作品をあえて「クリスマス特集」に選んだのには、別のワケがあ
るんですよ。バックの季節はまさにクリスマスからニューイヤーにかけてで、
シカゴの街のクリスマスイルミネーションがきれいなのは言うまでもない。
でも、もっといいのは、いろんな場面で使われる登場人物の心を映し出してい
るようなクリスマス風景。実に効果的なんだな、これが。
アパートの一室で猫とつつましく暮らしているルーシーのツリーは精一杯飾り
付けられているけれど、プレゼントの箱はない。家族も恋人もいない彼女の孤
独がひしひしと伝わってくるみたい。
そんな彼女がピーターの家族に招待され、雪景色の中をポインセチアの鉢植え
を抱えてやってくる。ためらっている彼女の前に広がるのは、家中が電飾で飾
られた暖かそうな光景。まさに典型的なアメリカの中流家庭のクリスマスって
感じ。
家の中では、おばあちゃん手作りの熱いエッグノック、クリスマスのご馳走。
ツリーの前で家族の記念写真をとったり、プレゼントの交換をしたり、ルーシ
ーにももちろんプレゼントが。
暖炉に吊るされたみんなの名前の書かれたソックスの中にもルーシーの分がち
ゃんとある。
「家族って素晴らしいわ。特にクリスマスの時はね」。
うれしそうなルーシーの表情にこっちまで胸がキュンとなっちゃいます。
そして、ジャックとルーシーが互いを意識し始めた時、クリスマスに吊るされ
る"やどり木"が小道具として使われます。この木の下にいる人はキスしてもい
いっていう習慣があるのよね。
偶然にも二人はそこにいたわけで、家族が見守る中、互いの胸の高鳴りを隠そ
うと素っ気なくキスするシーンもまたグッドなのです。
すべてを告白したルーシーが一人、アパートのツリーを片付ける姿はとっても
さみしい。何だか「お祭りは終わったんだよー」って感じがして。
だから、ラストが生きるのよね。憎い演出です。
一人ぼっちでクリスマスを過ごすあなたにも、家族と一緒に楽しむあなたにも
、恋人同士にも、感情移入できるシーンがきっとあるはず。
それではみなさんハッピー・クリスマス！！
＜もも＞