エニイ・ギブン・サンデー (ＡＮＹ ＧＩＶＥＮ ＳＵＮＤＡＹ)
(2000年 アメリカ)(上映時間２時間31分)
監督・脚本：オリバー・ストーン
出演：アル・パチーノ、キャメロン・ディアス、デニス・クエイド、ジェーム
ズ・ウッズ、ジェイミー・フォックス、ＬＬクールＪ
＜ストーリー＞
アメリカンフットボールのプロチーム、マイアミ・シャークスは、プレーオフ
を前に連敗が続き、ついにはベテランのクォーター・バック、キャップがケガ
をしてしまう。ヘッドコーチのトニー・ダマトは、苦肉の策で若手選手ウィリ
ーを起用。それが見事に当たってチームは勝利する。だが、チームワークなど
まったく考えない彼のプレーに、チームメイトの不満が頂点に達し……。
＜レビュー＞
オリバー・ストーンが遊んじゃってます。（笑）
自ら酔っ払いの解説者役で出演しちゃってるぐらいだもんネ。それも何シーン
も……。
そんな精神的な余裕が、この映画を今までのストーン作品とは異質なものにし
ている。
『プラトーン』『７月４日に生まれて』『JFK』『ニクソン』などなど、彼の作
品には強烈なメッセージ性と、時には観客を無視しているとも思える激しい
自己主張がつきもの。
その"濃厚"さがどうも肌に合わなくて、「オリバー・ストーンなんか大嫌い！
(｀ヘ´) 」っていう人だってたくさんいるのだ。
だけど、この作品には、いつものメッセージ性や自己主張はそれほど感じられ
ない。プロスポーツという料理しやすい素材を得て、完全な娯楽作品の出来あ
がり！ 個性派シェフのストーン監督にとって、このぐらいベーシックな料理
は軽ーくこなせちゃうのかも。
だから、ふだんは彼の作品に抵抗を感じる人でも、そんなに苦労せずに入って
いけるんじゃないかな。
とはいうものの、安心するのはまだ早いゾ。（*^。^*）
いつものストーン作品のエッセンスは、今回もふんだんに散りばめられている。
たとえば、アメフトの試合のシーンのド迫力映像。これまでの戦場シーンの雰
囲気が、そのままスタジアムに持ち込まれている。ストップモーション、ロー
アングル、極端なアップ、素早いカメラの切り替えといった様々な手法を駆使。
超ド級のスペクタクル映像を生み出しているのだ。
その圧倒的な迫力には、アメフトを知らない人でもノックアウトされちゃうは
ず。 ( ゜＿゜；)
前のほうの席で観ると、頭がクラクラしちゃうかもしれませんので、どーかご
注意を！
そして、娯楽作品とはいっても、チラホラと社会性が顔を覗かせるのがいかに
もストーン監督らしいところ。
巨額な金が動く中で、スポーツらしさが失われていくアメフトの世界。それを
取り巻くテレビ局などマスコミの横暴さ。チームのビジネス価値を上げるため
に平気で現場に口を出すオーナー……。そんな現在のアメフトの世界をシニカ
ルな視点で描いている。
娯楽作品の中でも、ちゃーんと社会批判を展開しちゃうんだもの、さすがにベ
トナム反戦世代、転んでもタダでは起きません！
いつもほどの濃厚さはないものの、いかにも肉食人種っていうタッチはここで
も健在。あっちこっちにコッテリ感が漂っているから、やっぱり本能的につい
ていけない人もいるんだろうなぁ。
それに、全体の半分はゲームのシーンだし、アメフトをよく知らない人にとっ
ては、かなりツライと思います。
ただし、ドラマ自体は、誰にでも受け入れられやすいごく平凡な話。
家族も去ってフットボールだけに打ち込むベテランコーチ、ケガをして引退の
危機に追い込まれた名クォーター・バック、それに取って代わったワガママな
若手選手、父親からチームを引き継いだ若い女性オーナー。
なーんて設定は、よくあるパターンじゃない？
チームの内紛だとか人種間の対立といった出来事だって、どっかで見たような
話だしサ。
リアルさはあるけど、意外性や切り口の斬新さはほとんどゼロ。（｀ヘ´）
ところが、それを豪華キャストが演じると、すっごくワクワクする話になっち
ゃうんだ、これが。
主役のヘッド・コーチ役はアル・パチーノ。いまさら言ってもしょーがないけ
ど、この人が出たらハズレはナシ。あの貫禄には誰もかないません。
特に、試合前に選手を相手に繰り広げる大演説が素晴らしい。
「勝つ日曜日もあれば負ける日曜日もあるだろう。大切なのは、勝つにせよ負
けるにせよ、人間らしくできるか、だ！」なんてセリフ、この人じゃなくちゃ
言えませんヨ。（^-^）//""パチパチ
そして、若き女性オーナー役はキャメロン・ディアス。生意気女のハネっ返り
ぶりが実にハマっている。
そのほか、ベテラン・クォーターバック役のデニス・クエイド、若手黒人選手
役のジェイミー・フォックスなど、どれもみんな花マルの演技。
これだけ豪華な配役が揃えば、平凡な話も急に輝き出すから不思議なもの。
ホント、登場人物がみんな生き生きとしてきちゃうんだから……。
ちなみに、あのチャールトン・ヘストンもカメオ出演。でも、全米ライフル協
会のリーダーでガチガチの共和党支持者の彼が、民主党支持者でゴア副大統領
を応援しているストーン監督の映画に出るのってなんか不思議……。大統領選
を前に、民主党ＶＳ共和党の激突！？
さてさて、プレーオフを前に連敗を続け、内紛まで起きたチームは最後にどう
なったでしょう。
これが予想通りの展開で、予想通りのエンディングを迎えてしまうのだ。
「なんだ、これでおしまいなの？ あっ気ないなぁ」と思っていたら、なんと
エンドタイトルと同時に、とんでもないドンデン返しが……。これには思わず
ビックリ。（ ゜＿゜；）
いやあ、ストーン監督、最後の最後についにやらかしてくれました。さすがに
お騒がせ監督だけのことはあるワン！ Ｕ＾ェ＾Ｕ
これから観る人は、エンドタイトルが始まっても、すぐに席を立ったりしない
ようにネ。
個人的には『JFK』みたいな社会性の強い作品のほうが好きだけれど、これはこ
れでよくできた、余計なことを考えずに楽しめる作品ではないでしょうか。
それにしても、この映画、アメリカじゃ過去のストーン作品の中でオープニン
グの興行成績がいちばん良かったとか。
それって、映画の出来とかに関係なく、アメリカ人がただアメフト好きだから
じゃないのか？
自分の主義主張が前面に出た作品より、そうじゃない作品のほうがウケるなん
て、ストーン監督にとって皮肉な現象かもしれないなぁ。
いやいや、ちょっと待て。あのしたたかなストーン監督のこと。もしかしたら
、そういうことも計算済みでこの映画をつくったのかも。
「アメリカ人はこんなくだらねぇものに熱中しちゃってサ。どーせロクなもん
じゃねぇや」なんて裏で笑ってたりして……。まさかね。
《ぽちのおすすめ度》
★★★+1／2★
（音楽がバツグンにいいです。サントラ必聴！ それも加味してこの点数にし
ました。）
＜ぽち＞