青い夢の女 (MORTAL TRANSFER)
（2000年 フランス・ドイツ）（上映時間２時間２分）
監督・脚本：ジャン＝ジャック・ベネックス
出演：ジャン＝ユーグ・アングラート、エレーヌ・ドゥ・フジュロール、ミキ
・マノイロヴィッチ、ヴァレンティナ・ソーカ
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＜ストーリー＞
精神科医のミッシェル（ジャン＝ユーグ・アングラート）は、窃盗癖とマゾヒ
スティックな性癖を持つ人妻オルガ（エレーヌ・ドゥ・フジュロール）の診察
中に居眠りをしてしまう。目覚めると目の前のオルガは絞殺されていた。自分
が眠っている間に無意識に殺してしまったのだろうか。疑心暗鬼になったミッ
シェルは、どんどん追い詰められていく……。
＜レビュー＞
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事件の真相は物足りないものの、ブラックな笑いが冴えるサスペンス
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『ディーバ』（1981年）、『ベティ・ブルー／愛と激情の日々』（1986年）で
世界的に注目され、日本でもファンが多いジャン＝ジャック・ベネックス監督
の８年ぶりの新作。
この人の映画にしては珍しく、ギャグがタップリ詰まったコメディ・サスペン
スです。
主人公は精神科医のミッシェル。離婚歴があり、現在は画家のエレーヌと恋愛
中。
そんな彼のクリニックに通ってくるのが、セクシーな人妻オルガ。彼女には窃
盗癖に加え、マゾヒスティックな性癖もあった。裏のフィクサーである夫から
暴力を振るわれることに、このうえない快感を感じていたのだ。 W(゜o゜)Ｗ
ある日、いつものようにミッシェルの前で、オルガは夫から暴力を受ける快感
を語る。それを聞くうちにミッシェルは次第に深い眠りに落ちてしまう。
そして目が覚めた彼の前に横たわっていたのは、オルガの死体。なぜ彼女は死
んでいるのか？ 昏睡状態の自分が殺してしまったのか？ (？_？)
とりあえずソファーの下に死体を押し込んで、次の患者の診察を始めるミッシ
ェルだった。
やがて、混乱するミッシェルのもとにオルガの夫が訪ねてくる。
オルガが彼の金を持ち逃げしたというのだ。ミッシェルが共犯だとにらんだ彼
は、「金を返さなければお前を殺す」と脅すのだが……。
この映画には３つの魅力があります。
まずはサスペンス。夢を使うのはちょっとばかり卑怯って気もするんですが（
何でもアリだもんねぇ）、それでもサスペンスとしてのおもしろさはかなりの
もの。
なかなか部屋から運び出せない死体。警察から向けられる疑惑の目。身に覚え
のない大金。患者の死で混乱する主人公が、どんどん窮地に追い込まれる。
ミッシェルが自分のことを告白する精神科医、お札を燃やすクセを持つ不思議
な男など、奇妙な人物も次々に登場して、まさにナゾがナゾを呼ぶ展開。なん
だなんだ？ いったいどうなってんだ？ とスクリーンにズルズル引きずり込
まれてしまいました。 (^-^)
そして、笑いもこの映画の大きな要素。といってもかなりブラックな笑いなん
ですけどね。
ミッシェルが路上でオルガの死体をもてあますシーンとか、死体を墓場に隠す
シーンなんか、かなりおバカで笑えます。このへんはブラックな笑いが苦手な
人でも、イケるんじゃないでしょうか。僕もけっこう笑いました。
まあ、その分、サスペンス的な穴もたくさんあるんですけどね。死体を何人に
も目撃されたりして、「おいおい、とっくに逮捕されてなくちゃおかしいゾ！
」ってなもんで。 (＾。^/)
で、３つめは映像。ベネックス監督のこれまでの作品同様、映像がバツグンに
美しい。タイトル通り「青」を基調に、黄色い車、鮮やかな絵画、白い雪とい
ったカラフルな色がバランスよく配置されています。
しかも、きれいなだけでなく、いつまでも余韻が残る印象的なシーンが多いん
です。主人公の夢の中のシーンなんかシュールでおもしろかったなぁ〜。
てなわけで、サスペンス、ブラックな笑い、そして美しい映像によってかなり
ポイントの高いこの映画。
でも、残念なのは事件の真相がつまらなかったこと。せっかくあそこまで盛り
上げたんだから、もうちょっとヒネったオチを用意してくれてもよかったんじ
ゃない？ (｀ヘ´)
それに、主人公の心の軌跡がイマイチ描ききれていないのも不満だな。
この映画のテーマは、一種の自分探しだと思う。不思議な事件を通して、主人
公が自分の過去と向き合うワケ。それは子供の頃に両親のセックス場面を目撃
したという、ありがちなトラウマなんだけどネ。
でも、それがあんまりきちんと描かれていない気がします。サスペンスのネタ
としてだけ都合よく使っている感じ。
そのあたりをもう少しきちんと描いて、主人公の心が変化していくようすが見
えたなら、あのラストもかなり違ったものになったんじゃないでしょうか。セ
ックスという素材が難しいのはわかるけど、そのあたりに物足りなさが残りま
した。
ところで、ベネックス監督は大の日本びいき。８年の沈黙の間には、日本をテ
ーマにしたＴＶドキュメンタリーもつくったとか。今回も来日中に渋谷の街を
物珍しそうにビデオ撮影してたそうです。
で、当然ながらこの映画にも、日本にちなんだものが登場！ 主人公が恋人と
行った店が日本料理店なんだよねぇ〜。でも、あれって何の意味があるんだ？
ハリウッド映画に、突然おかしな日本趣味が登場するのと同じに思えちゃうん
ですけど……。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（ベネックス監督のことを知らない人が観ても、けっこう楽しめると思う。ヒ
チヒックばりのサスペンスが楽しい。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2002年１月８日（火）シネスイッチ銀座にて。午後12時の回。