アビエイター(THE AVIATOR)


(2004年 アメリカ)(上映時間2時間49分)
監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ブランシェット、ケイト・ベッキ
ンセール、ジョン・C・ライリー、アレック・ボールドウィン、アラン・アルダ、
イアン・ホルム
* 丸の内ルーブルほかにて全国公開
ホームページ http://www.aviator-movie.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

<ストーリー>

1927年、21歳のハワード・ヒューズ(レオナルド・ディカプリオ)は、親から
受け継いだ巨万の富で映画製作の夢を叶えようとハリウッドに乗り込み、初監
督作『地獄の天使』の撮影に挑んでいた。だが、完璧な映像を追い求めるあま
り、予算は際限なく膨らんでいき……。

<レビュー>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
レオ様の熱演で描く超リッチな大バカ野郎の半世記
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

実在の映画製作者兼監督兼飛行家、ていうかケタはずれの大金持ちのハワー
ド・ヒューズの人生を描いたドラマ。

この人ったら、とんでもない大バカ野郎です。 (* ̄0 ̄*)
まあ金持ちのやることなんざ、ボクのような貧乏人には理解不能なワケですが、
この人の場合、そういう次元をはるかに超えちゃってます。

親から相続した遺産を湯水のごとく注ぎ込んで、超大作映画をつくったかと思
えば、飛行機の開発に乗り出して航空会社を買収しちゃう。
猪突猛進とはまさにこのことで、いったん始めちゃうと周りなんか見えなくて、
ひたすら前に突き進む。既成の概念や常識なんかお構いナシ。
そうやって、主人公が既成の権威とぶつかり合っていく姿は、痛快ですらあり
ます。 (⌒▽⌒)

迫力タップリの飛行機のシーンや、華やかなハリウッドの美しいシーンなど、
映像も見応えタップリ。
中盤には、女優キャサリン・ヘップバーンとの風変わりな恋愛模様なども描か
れます。

でもって、このへんまでは、ちょっぴり変わった野心家が、ズンズン前に進ん
でいく物語という感じなのだが、そこから先はどんどん暴走して異常な世界に
突入じゃあ〜〜〜!!

最初からチラチラ出ていた異常なまでの潔癖症がエスカレート。血を流すまで
ゴシゴシ手を洗ったりする。おまけに恋人が心配なあまり盗聴までする異常さ
も。
こうして、狂気としか言いようがないアブナイ世界に足を踏み入れ行くのです。

この異常さの引き金になったのは、飛行機事故の惨事や、恋人との仲たがいな
ど。だが、さらにさかのぼれば幼少時代に起因するらしい。それが少しずつ明
らかになってくる……と、言いたいところだが、最初からバレバレなんだよ!
 )`ε´(

だって、オープニングで幼少の主人公とお母ちゃんとのシーンが登場するんだ
もん。あれを観たら「たぶん、彼の異常さは子供時代から始まっているんだろ
うなぁ〜」って最初から読めちゃうよねぇ〜。しかも、あの程度の描き方じゃ、
底が浅くてなんだか釈然としないゾ!

でもねぇ、最後の最後でもう一つタネあかしがあるのです。
子供時代に起因するのは彼の異常性だけでなく、映画や飛行機への執着も、そ
こから始まっていることがわかるんです。
つまり、ハワード・ヒューズという人間は、その野望も異常性もすべては、子
供時代に始まっていること。子供のまんま大人になった人物であることを、
マーチン・スコセッシ監督は明らかにしていくのです。

そして、同時に、そういうヤツがアナーキーに暴走していくことによって、新
しいものが生まれていくことも見せてくれます。映画の後半で出てくるパンナ
ムとのガチンコ勝負なんて、現在の航空自由化につながる話だもんねぇ〜。

この「異端者こそが真の創造者になりうる」という視点は、深読みすれば、最
近の息苦しい雰囲気のアメリカに対するある種の批判が込められているのかな
ぁ〜?

レオ様のイッちゃった演技はスゴかったです。ゾクゾクします。ああいう異常
性を演じるのは、きっと役者冥利に尽きるのでしょう。ケイト・ブランシェット、
ジョン・C・ライリーなど脇役陣も熱演。アレック・ボールドウィン、ジ
ュード・ロウやカメオ出演のウィレム・デフォーなども見もの。

前作『ギャング・オブ・ニューヨーク』では、アメリカという国の光と影を描
いたスコセッシが、今回は一人の異端の人物の光と影を描いています。それが、
この映画の最大の魅力。品行方正な偉人の話なんかよりも、こういうハチャメ
チャ野郎の話のほうが何十倍も面白いんもんねぇ〜。おかげで、2時間49分がち
っとも長く感じませんでした。

まあ、主人公の親との関係とか、全然描けていないところも多くて、あとにな
ってみると不満はテンコ盛にあるんですけどね。観ている間は、それをあまり
感じさせないのがスコセッシ監督のパワーかもしれません。

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆(+1/2★)
(人間ドラマとしては描写不足が目立つものの、スコセッシらしい演出とレオ
様の熱演で見応えは十分。ハワード・ヒューズを知らなくてもけっこう楽しめ
るはず。)
                          <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2005年4月12日(火)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時45分の回。

[レビュートップページ][「あ」のページ]