亡国のイージス
| （2005年 日本）（上映時間２時間７分） 監督：阪本順治 出演：真田広之、寺尾聰、勝地涼、吉田栄作、谷原章介、豊原功補、光石研、 橋爪淳、佐藤浩市、池内万作、矢島健一、天田俊明、鹿内孝、平泉成、安藤政 信、チェ・ミンソ、岸部一徳、原田美枝子、原田芳雄、中井貴一 ＊ 丸の内ピカデリー１ほか松竹・東急系にて全国公開 ホームページ http://aegis.goo.ne.jp/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 訓練航海中の海上自衛隊イージス艦「いそかぜ」で、乗組員の死亡事故が起き る。先任伍長の仙石恒史（真田広之）は、陸に引き返すよう進言に行くが艦長 の姿はなく、副艦長の宮津弘隆二等海佐（寺尾聰）が「艦が何者かに乗っ取ら れた」と告げる。だが、それは宮津たちの策略だった。いそかぜは米軍の破壊 兵器を搭載したミサイルの照準を東京に向け、政府に要求を突きつける。一方、 一度は離艦した仙石は、艦の奪還を決意して引き返すのだが……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ハリウッド顔負けのスケールの軍事サスペンス・アクション映画 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ほぉ〜〜、日本でもこんなにスケールのデカい映画ができるようになったのね ぇ〜。というのが正直な感想。 ∈(￣ｏ￣)∋ 原作は福井晴敏の小説。 訓練中の自衛隊のイージス艦内で反乱が起きた、と副艦長の宮津が先任伍長の 仙石に告げる。一味には仙石の部下、如月がいるという。だが、実はそれはウ ソで、クーデターを起こしたのは、亡国の工作員ヨンファと結託した宮津たち だった。一度離艦したものの、艦の奪還を決意した仙石は引き返し、如月とと もに宮津たちと対決する……。 イージス艦内を舞台にした宮津やヨンファたち反乱集団と、それを阻止しよう とする仙石たちとの息詰まる対決を軸に、東京の政府の動きも描きつつ、スリ リングなサスペンス・アクション劇が展開されます。 「グソー」と呼ばれる米軍の特殊兵器を盾に政府を追い詰める宮津たち。複雑 なイージス艦内を移動しながら、奪還のチャンスをうかがう仙石たち。そして、 国民の生命とともに艦を守ろうとする渥美ら政府の人々。その三者のぶつかり 合いは見応えタップリ。ハラハラドキドキのシーンの連続で、特に「あわ や！」のクライマックスは、手に汗を握る展開です。 (⌒▽⌒；) 自衛隊の全面協力で製作されただけに、映像も迫力満点。ホンモノでなければ 出せない魅力にあふれています。ハリウッド映画を手がけるウィリアム・アン ダーソン（『いまを生きる』『トゥルーマン・ショー』）が編集を担当してい るのも、従来の日本映画にはない雰囲気を生み出している原因でしょう。 その迫力といい、スリリングさといい、ハリウッド映画顔負けの見事なエン ターティメント映画ですッ！ ただし、阪本監督は、楽しいだけのエンタメ映画にするつもりではなかったの では？ 深い人間ドラマと重たいテーマ性も、同時に追求したかったんじゃな いかなぁ〜。 まずドラマ的には、さまざまな登場人物の背景を入れ込んで、人間ドラマとし ての厚みを出そうとしています。それによって、どうして宮津はクーデターを 起こしたのか、仙石はなぜ艦に戻るという無謀な行動に出たのか、といった登 場人物の行動に説得力を持たせようとしています。 その試みは、ある程度は効果をあげていて、宮津の親としての思いなどはきち んと伝わってきました。仙石のプロ意識もそれなりに納得できます。しかし、 その他の人物については正直言って疑問だらけ。中途半端にエピソードを挿入 しただけで、とても彼らの人物像を描ききっているとは思えません。何だか、 せせこましい感じで、人間ドラマとして心を動かされるところはほとんどナシ。 テーマ性についてもツッコミ不足ですね。 国ってなんだ？ 国を守るってなんだ？ 平和ってなんだ？ 戦争ってなん だ？ てな重たいテーマを平和ボケの今の日本に撃ち込もうとしているものの、 ただセリフでチョコッと出されただけでは、な〜んも伝わるものはありません。 観客に何かを考えさせるきっかけとしては弱すぎますッ！！ (￣へ ￣ まあ、宮津の「何が何でも生きろ！」みたいなセリフが、一番言いたかったこ となのかなぁ〜、という気はするのですが……。 日本映画を代表するような人材が終結したキャストは文句ナシに素晴らしい。 あまりにもハマり過ぎていて、おもしろ味に欠ける気さえしてしまいました。 その中で、悪役を演じた中井貴一のスゴミが印象的。 ドラマ性やテーマ性についてはカラ回りしている感じがするものの、従来の日 本映画にないスケールの大きさとスリリングさは見応え十分。観るなら、エン タメ映画と割り切って、あんまり深いことは考えないで観ましょうね。 《ぽちのオススメ度》 ★★☆☆☆（＋1／2★） （ハリウッド顔負けの骨太なエンタメ映画。こういう映画をつくった意欲は買 えるが、エンタメ映画の枠は飛び出せず。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年７月29日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後３時20分の 回。 |