チェンジング・レーン(CHANGING LANES)
（2002年 アメリカ）（上映時間１時間38分）
監督：ロジャー・ミッチェル
出演：ベン・アフレック、サミュエル・Ｌ・ジャクソン、シドニー・ポラック
、ウィリアム・ハート、キム・スタウントン、トニ・コレット
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＜ストーリー＞
急な車線方向によって走行中の車同士が接触する。この事故によって、先を急
いでいた双方のドライバー、ギャビン（ベン・アフレック）とギブソン（サミ
ュエル・Ｌ・ジャクソン）のうち、ギャビンは弁護士としての仕事でピンチに
陥り、ギブソンは家族を失いかける。怒りの収まらない２人の悪意は、お互い
に向けられるようになり……。
＜レビュー＞
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サスペンスと人間ドラマを融合。サスペンスは途中で失速するものの……
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なんだかカーアクション満載の映画のようなタイトル。でも中身は全然違いま
す。ガチガチのエンターティメント映画とは違う雰囲気を持った映画です。
物語は２人の男の偶然の出会いから始まります。
１人はエリート弁護士のギャビン。もう１人はアルコール依存症で妻子と別居
中のギブソン。ギャビンはある財団をめぐる訴訟を担当していて、裁判所へ急
いで車を走らせていた。そして、強引に車線変更した彼の車とギブソンの車が
接触。おかげでギブソンは子供の親権をめぐる裁定に遅刻し、親権を失ってし
まう。怒りに震える彼の手にはあるファイルが握られていた。それはギャビン
が現場に置き忘れたファイルで裁判の重要な証拠。それがなければギャビンは
裁判に負けるだけでなく、詐欺罪で刑務所に送られるかもしれないのだ……。
まったくの赤の他人がちょっとした交通事故から激しく対立し、お互いの運命
を狂わせる。この発想がおもしろいですねぇ〜。誰でも考え付きそうなネタだ
けれど、ここまで暴走していくとは予想しませんでした。 Ｗ（゜Ｏ゜）Ｗ
前半は、サスペンス的な魅力が前面に出た展開です。ファイルを取り戻そうと
するギャビンと、怒りに燃えて彼に復讐しようとするギブソンの対決が見応え
アリ。裏の稼業を利用したり、相手の車に工作したりと、お互いに予想もでき
ない行動を取って相手を困らます。先の読めない駆け引きに思わずハラハラ。
ｏ（＾ｏ＾）ｏ
でも、ただハラハラするだけではありません。この映画の大きな特徴は、サス
ペンスと同時に、車線変更によって起きた出来事によって人生の車線変更を迫
られるようになる２人の人間ドラマを描いているところ。
そこで特に印象的なのが、善悪を単純に割り振っていないこと。ギャビンもギ
ブソンもどちらも、完全な善人でも、完全な悪人でもないんですよね。怒りで
ブチきれてとんでもないことをした後には、殊勝に反省して善意の行動を取ろ
うとしたりするんです。そうやって善人と悪人の間を行き来するところが、い
かにも人間臭くて、ドラマに厚みを加えていたと思います。
ただし、善悪がはっきりしていないだけに、２人のどちらにも感情移入しにく
いのは事実。それによって途中で飽きてしまう人もいるかもしれません。
そういう人にとっては後半はますますツライと思う。何しろ前半のようなサス
ペンス的な魅力は消えちゃうんですから。
後半は２人の対決よりも、それぞれが抱えた人間ドラマを中心に描かれます。
ギャビンの裁判の背後には義理の父親の不正があり、そこに妻も絡んで、彼は
正義と不正の間で揺れ動きます。
一方、ギブソンは妻子との関係が微妙なものになっていきます。
そして２人は相変わらず善意と悪意の間で揺れ続けます。それが性善説と性悪
説という哲学的なテーマにまで踏み込んでいく……。 (~ヘ~;)
エンターティメント的な楽しさがあった前半に比べて、後半はそれがほとんど
ない。テンポも失速して間延びしている感じ。その代わり、自分の人生を見つ
め直すようになる２人の人間ドラマはじっくり描かれている。そういう視点で
観れば、かなり手応えのあるドラマだと思いました。
ただし、あのラストはちょっと予定調和すぎる感じ。あそこまでソツなくまと
めちゃうと、今までの厚みのある展開は何だったの？ てな気がしてしまう。
別にきれいにまとめなくても良かったんじゃないのかなぁ〜。 (？_？)
それに登場人物の背景が複雑なので、消化不良で十分に描ききれていない部分
が目立つんです。これもこの映画の欠点だと思う。
まあ、そういう欠点はあるんですが、全体としては良く出来た映画だと思いま
した。サスペンスと人間ドラマをうまくブレンドしたところが良かった。料金
分ぐらいはキッチリ楽しめましたネ。 (*^。^*)
監督のロジャー・ミッチェルは『ノッティング・ヒルの恋人』の監督ですが、
こういうタイプの映画もつくれるなんて意外。
役者ではサミュエル・Ｌ・ジャクソンのキレ方がスゴイッ！！！ ベン・アフ
レックの顔がイマイチ迫力不足なだけに、なおさらスゴミを感じてしまった。
それに、ギャビンの義理の父親役のシドニー・ポラック（『トッツィー』『愛
と哀しみの果て』などの監督サン）や、ギブソンのアル中カウンセリングの会
のスポンサー役の名優ウィリアム・ハートも出番は少ないながら、さすがに存
在感がありました。
サスペンス的な魅力もあるにはありますが、それよりも２人の男の人間ドラマ
として観たほうがいいと思います。ハラハラドキドキの攻防戦に期待しすぎる
と失望しますヨ。（でも、ＣＭはいかにもエンタメ映画みたいなんだよねぇ〜
。それにつられて観にいくと絶対にガッカリするよなぁ〜。）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（人間ドラマの好きなボクはそこそこ楽しめたので、それなりに評価は高いの
ですが、みなさんにオススメできるかというと……。うーん、人によって評価
が分かれそうな映画ですね。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2002年11月11日（月）ＨＵＭＡＸシネマズ４にて。午後４時10分の回。