茶の味


(2003年 日本)(上映時間2時間23分)
原作・監督・脚本・編集:石井克人
出演:佐藤貴広、坂野真弥、浅野忠信、手塚理美、我修院達也、土屋アンナ、
三浦友和、轟木一騎
*シネマライズにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.chanoaji.jp/
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<ストーリー>
山間の自然豊かな町に住む春野一家。高校1年生になる長男ハジメ(佐藤貴広)
は、転校生に片思い、妹の幸子(坂野真弥)は巨大な自分の幻覚が見えて悩ん
でいる。母の美子(手塚理美)はアニメーターに復帰し、義父(我修院達也)
の助けを借りて作画に励む。催眠治療士の父ノブオは、そんな妻を見て少し寂
しい気持でいる……。

<レビュー>
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普通なようで普通じゃない。ちょっとハズした石井流ホームドラマ
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『鮫肌男と桃尻女』『PARTY7』の石井克人監督の新作。2004年カンヌ国
際映画祭の監督週間のオープニング作品です。

バイオレントな前2作とは一転して、今回はのほほんとしたホームドラマを展
開。といっても、普通のホームドラマを想像すると痛い目にあっちゃいますぜ。 (^_-)
何しろ一見普通に見える登場人物が、み〜んなどっかヘンなんですから。

まず、娘の幸子がヘン! 巨大な自分の分身に見つめられて困っています。一
家の主ノブオの父アキラもヘンです。音叉を鳴らして、ひんぱんに自分の声の
調子を合わせています。ここまで、極端じゃないにしても、その他の家族もみ
んなどこかヘン。しかも、みんな何かしら問題を抱えているようです。

こういうヘンな人たちが展開するドラマもやっぱりヘンなのだ。何しろまとま
ったストーリーってものが皆無なんですから。
一応、長男ノブオの転校生に対する恋の行方や、妹幸子の自分の分身退治の戦
い(逆上がりを修得すれば消える!?)などがメインのストーリーらしきもの
になっていますが、それがきちんと起承転結で展開するわけでもないし、登場
人物の心理をキッチリ描いているわけでもない。

そのほかにも、家に出入りする叔父のアヤノ(浅野忠信)とかつての恋人(中
嶋朋子)との再会劇、ノブオの弟で漫画家の轟木の誕生日記念の奇怪なCDづ
くり、母親美子のアニメーターへの復帰劇、ヤクザが森に埋められる話などな
ど、いろんなエピソードがテンコ盛りでバラバラ状態。いったいこれって何な
のヨ??? (?_?)

でも、これって石井監督にとっては、別にヘンな世界ではないのかもしれませ
ん。普通にやっているつもりで、ビミョーに普通とはズレている。一般ピープ
ルとは、少しだけものの見方が違っている。そういう人なのかもしれません。

笑いにもそれが表われています。これまでの作品同様に、今回もかなりコミカ
ルな映画なんですが、笑いのツボがビミョーにズレているのね。
基本はオバカ&オゲレツな笑いで、漫画家・轟木とアシスタント、それにジイ
サンの3人が「山、山、山〜〜」とナンセンスな歌を歌うところなんか、誰で
も無条件に笑えちゃうんですヨ。
だけど、多くの笑いはちょっとツボがハズレていて、あんまり笑えない人がい
る半面、大爆笑しちゃう人もいる。そのビミョーなズレ方がある種の味になっ
ているのです。 _(‥ )

そういえばウンコネタが好きなのも石井監督の持ち味か!? ウンコが空から
降ってきたかどうかで延々論争を展開した『PARTY7』に続いて、今回も
浅野忠信がオバカなウンコネタを披露。 (^0^)

こうして、何ということもないエピソードが展開し、ちょっとハズレた笑いと
鮮烈な映像、一風変わったセリフに彩られたこの作品。脚本も編集もけっこう
シュールで、ワケのわからんシーンや異様に長いシーンも登場します。

とはいうものの、まったく現実から離れているのではなく、普通のドラマとし
て感動できるシーンもある。
たとえば、長男ハジメが転校生の乗ったバスを後ろから追いかけていくシーン
なんか、青春ドラマでそのまま使えそう。また、ジイサンのアキラが死んだ後
で、遺品を前に家族が集うシーンは、温かで、ジンワリした感動が伝わってき
ます。

こうした一般大衆にもわかりやすい視点に軸足を置きつつも、それとはちょっ
と違った視点の世界が展開する。このビミョーさがこの映画の魅力なのだと思
います。

それに、いつも感心させられるのは役者がマジに演じていること。『PART
Y7』での原田芳雄のオバカぶりには笑わされましたが、今回も三浦友和、手
塚理美、浅野忠信といったそうそうたる顔ぶれがマジにバカをやっているのが
スゴイ。
佐藤貴広、坂野真弥という2人の子供の演技もなかなかのもの。和久井映見の
ナレーションもこの映画にピッタリ。
ただし、チラッと出演のSMAPの草なぎ君、目立ちすぎです!!!(笑)

でも、まあなんといっても特筆すべきなのは我修院達也のハジケ方でしょうな。
この人を、発掘というか復活させただけでも、石井監督の手腕は見事。まさ
か昔の若人あきらがこんな姿になろうとは……。 W(゜O゜)W

ありがちなホームドラマを想像してはいけません。ハマる人はハマるけれど、
そうでない人にはどうってことのない映画。笑いも全員が爆笑できるわけでは
ない。そのあたりを覚悟してご覧くださいませ。

《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆(+1/2★)【ちょっとだけオススメ。おヒマでしたらどうぞ】
(独特の笑いを中心にハマる人はハマる映画。なので、すべての人にオススメ
とはいきません。ボク的にはソコソコはおもしろかったですが……。)
                          <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2004年7月20日(火)シネマライズにて。午後1時15分の回。


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