シンデレラマン(CINDERELLA MAN)
| (2005年 アメリカ) 監督：ロン・ハワード 出演：ラッセル・クロウ、レネー・ゼルウィガー、コナー・プライス、ポー ル・ジアマッティ、クレイグ・ビアーコ、ブルース・マッギル ＊ 全米公開2005年６月予定。日本公開2005年９月予定 ホームページ http://www.movies.co.jp/cinderellaman/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ ライトヘビー級のボクサーだったジム・ブラドック（ラッセル・クロウ）は、 一時はスポットライトを浴びたものの、その後は挫折し、おりからの大恐慌の ために職もなく、妻（レネー・ゼルウィガー）や子供を養うこともできないど ん底の暮らしを送る。そんなある日、ふとしたことから急遽リングにカムバッ クすることになり、予想を裏切って連勝を続け、「シンデレラマン」と呼ばれ るようになる。そして、ついにヘビー級王座に挑戦するのだが、その相手はな んとリング上で２人も殺しているマックス・ベアという強敵だった……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 実在のボクサーの挫折と栄光を家族愛を軸に描いたヒューマン・ドラマ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ボクサーの再起物語といえば、やっぱりガッツ石松企画・製作・脚本・監督・ 主演の『カンバック』（1990）でしょうか。 て、オイオイ！ 数あるボクシング映画の代表がそれかいッ！！ (^o^) まあ、『ロッキー』（1976）とか『レイジング・ブル』（1980）とか、いろい ろありますよね。 監督ロン・ハワード、製作ブライアン・グレイザー、脚本アキバ・ゴールズマ ン、主演ラッセル・クロウという『ビューティフル・マインド』（2001）の チームに、オスカー女優レネー・ゼルウィガーが参加したこの映画。大恐慌時 代に活躍した実在のボクサーを取り上げた再起物語で、別に驚くようなネタじ ゃありません。 しかし、それをボクシング映画という切り口ではなく、家族の愛の物語として 描いたところが、いかにもロン・ハワード作品らしいところ。 ボクはこのジム・ブラドックなるボクサーについてよく知らないのだが、たぶ んアメリカではかなりのヒーローなのでしょう。それを徹底したヒーローとし てではなく、一人の夫、父親という側面にスポットライトを当てて描いていま す。 オープニングは全盛期のブラドックの姿。それをサラッと流すと、いきなりド ン底の彼と家族のツラ〜イ生活ぶりに突入します。 さすがに大恐慌時代ということで、とんでもない貧乏生活なんです。子供にま ともにご飯も食べさせられなくなって、彼らを親族の家に預けちゃう悲惨な状 況なんですから。 そんな中、ブラドックが恥や誇りを投げ捨てて、かつてのボクシング仲間に頭 を下げて借金をします。その金で電気の供給を再開してもらい、子供たちを連 れ戻してくるシーンは涙ウルウルものです。 (T_T) といっても、そこはさすがにハワード監督。けっして悲惨さを押し売りするよ うな仰々しい描き方ではありません。全体のトーンは、あくまでも抑制的。そ れがかえって、心にジワジワ染みとおる感動を呼んでいくのです。 このあたりまでは完全に人間ドラマが中心で、ボクシングの要素はほとんど登 場しません。ボクシング映画を期待した人は大ハズレ〜〜〜！ しかし、中盤で、相変わらず貧乏にあえぐブラドックに、元マネージャーがピ ンチヒッターでリングに上がる話を持ちかけるところから、断然ボクシング映 画の要素が強まります。 １試合だけの約束で、それも勝てるはずがないと思われていたブラドックが、 意外にも大勝利し連戦連勝。そのおとぎ話のような再起物語に、人々は彼を 「シンデレラマン」と呼ぶ。そして、ついにヘビー級チャンピオンに挑戦する ところまではいあがる……。 中盤から後半は、連戦連勝で復活するブラドックの姿が、迫力満点のボクシン グシーンを中心に描かれます。ボクらブラドックのことを知らない者にとって は、ハッピーエンドなのかそうでないのかさえわからないので、その分なおさ らハラハラするんです。 (◎-◎;)!! 同時に、その陰で揺れ動く妻の気持ちや、ブラドックの妻や子供に対する思い などもバランスよく配置されています。最後までヒューマンドラマの要素は薄 まりません。感動できるシーンもたくさんあります。 もともとアクションはお手のもののラッセル・クロウだけに、今回のボクサー 役も見事にハマっています。同時に強くたくましい夫・父親の顔も、きちんと 演じています。 一方、妻役のレネー・ゼルウィガーも、ときには優しく、ときには夫もビック リの力強さを見せたりと、いくつもの表情を演じ分ける演技。ただし、どうし ても『ブリジット・ジョーンズの日記』を思い出しちゃって、なんだか笑っち ゃうのよねぇ〜。ゴメンナサイ。 それ以外では、マネージャー役のポール・ジアマッティが印象的。この人、セ リフ以外のところで、きちんと演技ができる人ですねぇ〜。主演作の『サイド ウェイ』でもそうでしたが、けっして二枚目じゃないけど存在感がすごい。 ラストはいかにもアメリカ映画的なありふれた終わり方。まあ、実話だからじ ょうがないんでしょうけど、輝かしいその人生を賞賛するような結末には、う んざりでした。もうちょっと、深みのある終わり方も可能だったと思うんだけ どねぇ〜。 とはいえ、全編を通してみると、ボクシング映画のおもしろさと人間ドラマの 魅力をうま〜くミックスした良い映画でした。すべてにおいてソツがないので、 あまり文句のつけようもありません。誰が観ても、それなりに満足できる映画 だと思います。 ただし、あまりにもソツがなさすぎて、逆に物足りない感じもしてしまうので す。ボクシングシーンにしても、人間ドラマにしても、「どこかで観たシーン だよなぁ〜」という感じで、新鮮さはあまりなかったですね。まあ、その分、 安心して楽しめるのは確かですけど。 映画の中で、「再チャレンジ」の大切さが強調されていましたが、もともとア メリカはそういう社会じゃなかったんでしょうか？ それとも、最近は、大統 領の子供が大統領になるような固定化された社会で、再チャレンジが難しくな っているの？ だから、こんな映画を作ったのかなぁ〜？？？ 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆（＋1／2★） （大恐慌時代に再起した家族の愛の物語。そこにボクシング映画の要素が加わ った作品という感じなので、アクションやスポ根もののファンよりも、ヒュー マンドラマが好きな人にオススメです。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年４月５日（火）リサーチ試写会、イイノホールにて。 |