クライシス・オブ・アメリカ(THE MANCHURIAN CANDIDATE)
| （2004年 アメリカ）（上映時間２時間10分） 監督：ジョナサン・デミ 出演：デンゼル・ワシントン、メリル・ストリープ、リーヴ・シュレイバー、 ジョン・ヴォイト、キンバリー・エリス、ジェフリー・ライト ＊ ユナイテッド・シネマとしまえんほかにて全国公開中 ホームページ http://www.coa-movie.jp/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 1991年、湾岸戦争下のクウェートにおいて軍曹のレイモンド（リーヴ・シュレ イバー）は、英雄的な活躍を見せ、帰国後は母エレノア（メリル・ストリー プ）の後ろ盾を受けて副大統領候補となる。だが、彼の上官だった陸軍大尉マ ルコ（デンゼル・ワシントン）は、かつての部下が悪夢を見ると訴えたことを きっかけに、クウェートでの出来事に疑問を抱くようになる……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 権力者たちの恐怖のたくらみを暴くコワ〜イ心理スリラー 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 サイコ・スリラーの傑作『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミ監督が、1962年 のジョン・フランケンハイマー監督作品『影なき狙撃者』を現代風にリメイク した映画。おまけに主演はデンゼル・ワシントンでメリル・ストリープが共演。 なのに、ユナイテッド・シネマ系中心の上映なのはなぜ？ ちょっと扱いがジ ミじゃないこと？ レクター博士に呪われても知りませんことヨ。 (⌒▽⌒) それはともかく、デミ監督の作品らしい雰囲気がプンプン漂う映画です。 物語の基本はサスペンス。 上院議員の母のバックアップのもと、副大統領候補にまでのぼりつめたレイモ ンド。彼は、かつて湾岸戦争で英雄的な活躍を見せたことで知られていた。 だが、彼の上官だったマルコは、しだいに当時の出来事に疑問を抱くようにな る。そして、そのウラに隠された恐ろしい事実に迫っていくのだった……。 という話をフツーに描いたら、ありがちなアクション・サスペンスにでもなり そう。しかし、ジョナサン・デミ監督は、これをコワ〜イ心理スリラーに仕立 てています。 かつてマルコやレイモンドとともに戦った兵士たちが共通して見る悪夢や、奇 怪な手術のようすなどを強烈な映像に映しとって、ミステリアスで、オドロオ ドロしい世界を構築しているのです。そう、あの『羊たちの沈黙』とも共通す るアブナイ世界なんですねぇ〜。 (=_=;) そして、そうしたコワ〜イ世界の背景に、いったいどんな真実があったのかを 主人公のマルコが解き明かしていくワケ。 その核心に存在するのは、権力者たちによるマインドコントロール。それは想 像を超えたスサマジイもの。 ただし、登場するネタ自体はそんなに珍しいものではありません。ロボトミー 手術だの、電話によるコントロールなど陳腐といえば陳腐。 でもって、このテの話にありがちなウソくささを感じちゃうと、それでもうオ シマイかもしれません。 しかし、そういうウソくささはあんまり感じませんでしたね。デミ監督らしい 不気味さをかきたてる演出がウマイからさぁ、けっこうリアルに感じちゃうん だよねェ〜。 もちろん、デミ監督はけっして絵空事ではなく、これに近いことが現実に起き ていると考えているのでしょう。 「政治家や巨大企業や軍なんて、なにやってるかわかんないゾ〜〜〜！！ あ いつら"国のため"を口実に、身の毛もよだつようなことやってるかもしんない ゾ〜〜〜〜！！」 というデミ監督の権力を疑う姿勢が、この映画の背景に強烈に横たわっている のです。 はたして、ホントにこんなことが行われているのか？？？ ボクも真相は知りませんが、絶対にないとは言い切れない気がします。現実の 世界を見てみると、"国のため"という大義名分のもと、人権などお構いなしの 恐ろしい陰謀が行われているのかも……なんて気がしてしまいます。 （￣□￣；）！！ 中盤でほぼ事件の全貌が見え始めて、やや中ダルミしたものの、クライマック スの大統領就任祝いの式典に向かって、再びスリリングに盛り上がっていきま す。 そして、最後に残るのは、何か不気味で恐ろしい思い。得体の知れない恐怖が 迫ってきます。 主演のデンゼル・ワシントンはいつも通りのシブい演技。副大統領候補を演じ たリーヴ・シュレイバーも存在感がありました。 しかし、なんといっても注目はメリル・ストリープ。もしかしたらマインドコ ントロールよりもコワイ彼女の母の愛が、この映画最大のハイライトかも。あ る意味、『羊たちの沈黙』のアノ人に匹敵するコワさか！？ 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆ （社会派サスペンスと心理ホラーの要素をうまくミックスしたベテラン監督ら しい映画。『羊たちの沈黙』ほどの戦慄はないものの、不気味な恐怖感はかな りのもの。特にサイコホラーや社会派サスペンスが好きな人は観ても損はない と思います。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年４月２日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後１時の回。 |