（2004年　韓国）（上映時間１時間56分）
監督・脚本：イム・チャンサン
出演：ソン・ガンホ、ムン・ソリ、リュ・スンス、イ・ジェウン、チョ・ヨン
ジン、ソン・ビョンホ、パク・ヨンス
＊Bunkamuraル・シネマにて公開。順次全国公開
ホームページ　http://www.albatros-film.com/movie/barber/
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＜ストーリー＞
1960年代の韓国。大統領官邸のある町で床屋を営むソン・ハンモ（ソン・ガン
ホ）は、ある日、突然、大統領の理髪師を命じられる。仕事を続けるうちに、大
統領の昼食会に招かれたり、近所で英雄扱いされるようになるハンモだったが、
北からの武装ゲリラの侵入とともに、市民に対する無差別なスパイ狩りが始まり、
とうとうハンモの幼い１人息子までが連行されてしまうのだった……。

＜レビュー＞
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楽しく笑いながらも、権力の恐ろしさが身にしみてくる韓国コメディーの秀作
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1960年代〜1970年代にかけて、大統領官邸の近所に住んでいたために、大統領
専属の理髪師になってしまった男とその家族の数奇な運命を描いた韓国映画。

な〜んていうと、とんでもなくシリアスな映画に思えちゃうかもしれませんが、
実際はゲラゲラ笑える楽しいコメディー。　(^o^)

最初のほうなんて、完全に落語なんですヨ。政治のことなんかまるでわからな
い理髪師ハンモが、周囲に言われるままに選挙の投票をする。投票所で、「こっ
ちに丸をつけるんだ」「いや、あっちだ」と大騒ぎするところは、まるで落語の
与太郎と長屋の人々。

でもって、その与太郎、じゃなくてハンモが自分の店の女の子を妊娠させ、あ
あだこうだの大騒ぎの末に、「四捨五入したらもう堕ろせないから産め！」と、
女の子に頼んでそのまま結婚。

おりしも、出産の日は「4.19革命」の日で、不正選挙に抗議する学生たちが抵
抗のデモを決行し大混乱。出産間近の妻をリヤカーに乗せたハンモは、学生たち
の間を右往左往するばかり。　(;´Д`)

というように、ハチャメチャに楽しいドタバタ喜劇を展開しつつも、その背景
にある韓国の現代史を庶民の目でしっかりと描いていくユニークな映画なのです。

その後、ハンモはある出来事がきっかけで（これもマヌケな出来事なのだが）、
大統領の理髪師に大抜擢ぃ〜〜〜！
だんだん羽振りがよくなって、ついにはアメリカ訪問にまで同行。ニクソン大
統領と一緒にニュースに登場しちゃったりして、もう笑うしかないオバカな展開
です。

でも、やがて暗い影が……。北の武装ゲリラの侵入をきっかけに、スパイの疑
いのある市民が次々に逮捕されるなど、恐怖政治が始まるのです。そして、つい
にまだ幼いハンモの息子までが逮捕されてしまうのだった。　（*￣0￣*）

だけど、そんなコワイ話も、笑いを前面に出して描くんです。だって、逮捕す
るスパイの見分け方が、実にお下劣かつオバカな方法。あんなんでスパイが見つ
かりゃ、世界中スパイだらけですぜ。やれやれ。

当局に捕まった人間は、拷問にかけられるのだが、そこもけっこう笑えてしま
う。特にお子様の電気ショックシーンには大爆笑。これから観る方のために詳し
いことは言いませんが、底抜けにオバカでシュールなシーンです。

こうして、恐怖政治や軍事クーデター、ベトナム戦争など、当時の時代を背景
に、権力に翻弄される庶民の悲哀をおもしろおかしく表現。話自体はフィクショ
ンなれど、韓国の現代史がよーく理解できます。

しかも、最後は親子の愛を情感タップリに描き出して、涙を誘うという意外な
展開。息子をおぶって歩くハンモの姿には思わずググッときてしまいました。　
(T_T)

ハンモ役のソン・ガンホ（『ＪＳＡ』『シュリ』）のオマヌケで、温かな演技
が見事。同時期公開の『復讐者に憐れみを』で、スサマジイ殺人者を演じた人と
は思えません。
その奥さん役のムン・ソリは、ちょっと引退したシム・ウナっぽい雰囲気も感
じる、控えめながら存在感のある女優。そして、２人の息子役のコも、オトボケ
な感じがたまりませんでした。

ドタバタなお笑い映画を展開しつつ、権力者の圧政を告発し、さらに親子愛の
ドラマまで見せてしまう。これがデビュー作というのが信じられないぐらいのイ
ン・チャンサン監督の脚本、演出が素晴らしい！　最初にこんな見事な映画をつ
くっちゃって、あとは大丈夫なのか！？

《ぽちのオススメ度》
★★★★☆【絶対にオススメ！　みんな観てねぇ〜】
（またしても、韓国映画のスゴさを思い知らされた映画。コメディーと社会派
の要素が無理なく融合した映画です。）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜ぽち＞

〔鑑賞データ〕
2005年３月３日（木）Bunkamuraル・シネマにて。午後４時30分の回。