ダンサー・イン・ザ・ダーク(ＤＡＮＣＥＲ ＩＮ ＴＨＥ ＤＡＲＫ)
(2000年 デンマーク)(上映時間２時間20分)
監督：ラース・フォン・トリアー
出演：ビョーク、カトリーヌ・ドヌーブ、デビッド・モース、ピーター・ストーメア
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
＜ストーリー＞
ミュージカルを愛する女性セルマ（ビョーク）は、遺伝性の病気で視力を失い
つつあった。だが、彼女は無理を承知で必至で働いた。自分と同じ病気を持つ
一人息子を救うため手術費用を稼いでいたのだ。ところが、ある日、その金が
盗まれてしまい……。
＜レビュー＞
冒頭３分以上も音楽だけの暗黒のスクリーンが続く。
何だ、こりゃ？ (・_・")？
やがて現われたのは主人公セルマがミュージカルの練習をするシーン。
だが、それはまるでドキュメンタリーのような映像だ。手持ちカメラを多用し
たり、雑な感じのカット処理を施したり……。
（いやぁ〜、一瞬、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を思い出しちゃいま
したヨ。ホント、ああいう雰囲気の、典型的なドキュメンタリータッチの映像
なんです。）
これって、いったいどういう意図があるわけ？ (？_？)
で、そこからストーリーが展開していくのだが、これが超ベタな話なんだなぁ
〜。
貧乏のドン底にいるうえに、失明の危機に瀕している主人公セルマが、一人息
子の失明の危機を救うために、手術費用を稼ごうと朝から晩まで必至で働く。
ところが、大家でもある警官が金に困り、せっかく貯めた彼女の金を盗んでし
まう……。
ま、そこから先は完全なネタバレになるので言わないけど、その後もアンラッ
キーがドバーッと彼女に押し寄せて、悲劇的なラストへと突入していくわけ。
お見それしましたァ！ 世界不幸自慢コンテストに出たら間違いなくアンタが
優勝！！
世界に冠たる日本の「おしん」だって、足もとにも及ばない苦難のテンコ盛り
だもんね。
でもさぁ、いまどきこんなに暗くてツライ話、誰もやんないよなぁ〜。
だって、どこにも救いがないんだもん。悲しくて涙を流すどころか、だんだん
気持ち悪くなっちゃうヨ。オエーッ！！ (><)
なのに、ラース・フォン・トリアー監督は、これをちゃ〜んと泣ける映画に仕
上げてしまったんです。
さてさて、いったいどんなテクを使ったのか。 (・_・？)
映画全体を２つのパートに分けたんですねぇ。セルマの厳しい現実をさっき紹
介したようなドキュメンタリータッチの映像で赤裸々に描き、そこから逃避し
た彼女の空想の世界をきらびやかなミュージカルで描いたわけ。
その対比がお見事！！ (^-^)//""
全体の中で、ミュージカル場面がいいアクセントになっていて、現実の世界の
過酷さを瞬間的に忘れさせてくれる。不幸続きの超ベタな話に起伏をつけて、
うまい具合に観客を泣かせてくれるんです。
んー、こういう作戦を誰が思いつくだろうか。敵ながらアッパレじゃ！！（何
で敵なのかよくわからんけど……）
しかもそのミュージカル場面がハンパじゃない出来。
なんたってビョークの歌と踊りが素晴らしい。
もともとミュージシャンとして、魂を揺さぶるようなユニークな歌声とパフォ
ーマンスが特徴の彼女が、ここでもその才能を充分に発揮している。彼女が歌
い踊ると、その場の磁気が変わっちゃうんですヨ。
それに比べて彼女の演技はヘタです。一生懸命やってるけど。
ただ、そのヘタさが、うまいことドキュメンタリータッチの演出とマッチして
、独特のリアル感につながっている。
このへんも、トリアー監督の作戦なのかな。
だって、普通は考えないでしょ？ 映画はシロウト同然のビョークを主役に使
おうなんてサ。けっこうワガママだって評判だし……。 (＾。^/)
ビョーク以外では、友人役のカトリーヌ・ドヌーブの存在感がバツグン。さす
がに、映画史に残る女優さんだけのことはある。
それから、『グリーン・マイル』に出てたデビッド・モース（警官ビル役）も
いい味出してます。ちょっと往生際は悪かったけどネ。 (＾0＾）
ただねぇ、客席で涙を流してたお客さんに失礼と思いながらも、＜ぽち＞は後
半時々笑ってしまったんです。
というのは、トリアー監督の作戦が全部ミエミエだったから。「次はこういう
展開になるゾ」「きっとミュージカル場面だゾ」って予想すると、全部当たっ
ちゃうんだよネ。それで、思わず笑っちゃった。
まあ、これは僕の性格がヒネクレてるからなんでしょうが……。
みなさんは、くれぐれもそういう意地の悪い観方をしないように！
それから、あのラストはねぇ〜。どうだかねぇ〜。
「後味の悪い終わり方の映画があってもいいじゃん」っていう意図はわかるん
だけど、あんまりミもフタもない終わり方でサ。やっぱりちょっと？？？
僕が脚本を書くなら、もう少し余韻のある終わり方にすると思う。だって、こ
の映画全体を貫くテーマは「母の愛」。それをもっともっと実感させる終わり
方じゃないと……。
それでも、なかなかユニークでよくできた映画なのは確か。
おまけに絶対に泣ける！
泣きたいあなたは、ハンカチをたくさん用意して今すぐ映画館へゴー！！！
(＾o＾)／
《ぽちのオススメ度》
★★★＋１／2★
（４つ星あげてもいいんだどサ。やっぱりあのラストの表現方法は、僕の感性
に合わないんだよねぇ〜。）
＜ぽち＞