デアデビル(DAREDEVIL)
（2003年 アメリカ）（上映時間１時間43分）
監督・脚本：マーク・スティーヴン・ジョンソン
出演：ベン・アフレック、ジェニファー・ガーナー、マイケル・クラーク・ダ
ンカン、コリン・ファレル、ジョン・ファヴロー
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＜ストーリー＞
父親と二人暮しの少年マット（ベン・アフレック）は、ある日、廃棄物を目に
浴びて視力を失ってしまう。だが、残りの感覚が超人的に鋭くなり、超感覚で
物事を感知する「レーダーセンス」を体得、格闘技や体操などで体も鍛え上げ
る。やがて、成長したマットは、昼間は弁護士として働きながら、夜になると
"デアデビル"に変身し、犯罪者に制裁を加えていくが……。
＜レビュー＞
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こんな時代にお気楽なヒーローはもう要らない！？
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完全無欠のヒーローがバッタバッタと敵を倒していく。
そんな単純明快なヒーロー映画には、最近なかなかお目にかかれません。近頃
のヒーローはみんな屈折しまくりです。
人気のアメリカンコミックを映画化したこの作品も、暗い影を背負ったヒーロ
ーが主人公。アメコミを映画化した作品には『バットマン』のように暗いタッ
チの映画が多いけれど、その中でも並はずれて暗〜い雰囲気が漂います。
主人公のマットは子供の頃に事故で失明してしまう。しかも、その後、父親の
ボクサーが八百長を断ったことから殺されてしまう。
そんな不幸を背負いつつも、視覚を除く四感を超人的に発達させた彼は、昼は
弁護士として「正義」を目指しながら、夜になると深紅のマントをまとって“
デアデビル”に変身し、裁判から逃れた悪を討っていた。
『サイモン・パーチ』（1998）のマーク・スティーヴン・ジョンソン監督は、
主人公が背負った影を真正面から映し出します。
例えば、超人的ヒーローの活躍を描くなら、失明の場面なんかはサラッと流す
はず。でもねぇ、この映画ではそれをちゃ〜んと見せるんですよ。父が殺され
る場面も、とっても暗い描き方をするんです。で、マットの心の痛みや悲しみ
をしっかり伝える。
それでもまた足りないのか、デアデビルになって悪を討つようになってからも
、マットを悩みの渦に叩き込みます。
彼は自分がやっていることが正しいと思いつつも、同時に大きな迷いを感じて
いるんです。知り合いの神父に「暴力は暴力しか生まない」と言われて、言葉
では強がってみせるものの、内心では大いに悩みます。
しかも、やがて彼の悩みをますます大きくするような事件が起きる。
いやぁ〜、とにかく暗い雰囲気です。屈折しまくりです。明るくてハチャメチ
ャなヒーローを望む人は、とてもついていけないんじゃない？ (・_・？)
もちろん、基本はアクションヒーローものなので、そういう面でもキッチリと
つくられています。特に後半は、デアデビルと暗黒街の黒幕フィスク＝別名キ
ングピン（『グリーン・マイル』のマイケル・クラーク・ダンカンのスゴミの
ある悪役ぶりが素晴らしい！）、彼に雇われたスキンヘッドの暗殺者ブルズア
イ（コリン・ファレルさんよぉ〜、こんなマヌケな役やるなよぉ〜〜〜（笑）
）、それに格闘技の達人でマットの恋人エレクトラ・ナチオスといった人物が
絡み合って、大迫力のアクションシーンを展開しています。
ほとんどの場面が夜なので、暗い中でのアクションシーンが多いんですけれど
ね。それでも、ＣＧをはじめ細かなテクを使ったりして、かなりの見応えある
シーンを生み出しています。「闇の中のスパイダーマン」といった感じのワイ
ヤーを使ったアクションがバツグンに楽しい。 (*^。^*)
超人的な主人公の感覚を、映像技術で巧みに表現したところも見事です。
でもねぇ、それでもやっぱりフツーのアクション映画とは違うんですヨ。だっ
てさぁ、危機一髪のところでヒーローが登場して敵をやっつけるはずなのに、
アラアラアラ……。
ラストも悪をカンペキに叩きつぶしてメデタシ、メデタシ〜！！！ とはなら
ないんだよねぇ。
うーん、こういうのってどうなんでしょう。 (~ヘ~;)
単純明快に悪をやっつけるヒーローが好きな人は、相当な違和感を持つんじゃ
ないかなぁ。全体を包む暗い雰囲気を敬遠する人も多い気がします。
ただし、ボクは、こういう人間臭いヒーローを歓迎します。屈折しまくりの主
人公には好感が持てたし、「暴力は暴力を呼ぶだけで何も解決しない」という
メッセージも明確に伝わってきて、それなりに楽しく観ることができました。
欲を言えば、せっかくここまでやったのなら、もっと徹底的に主人公の心の葛
藤や内面の変化を掘り下げて欲しかった気がするのですが……。
柱はアクションヒーローものだとはいえ、もう少し深みのある人間ドラマを展
開して欲しかった。そこがスゴクもったいないなぁ〜。
今のアメリカにこういう映画が登場するのは、興味深いことです。政治家や一
般国民はともかく、少なくともハリウッドのモラルは、「悪はやっつけろ〜〜
！」という単純明快なものではなくなっているんでしょう。それがクッキリと
表れた映画だと思います。
どうせなら、「暴力は暴力を呼ぶだけ」というメッセージをブッシュ大統領殿
にも届けてあげたいですね。復讐なんて結局は虚しいものなのだよ。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観て損はナシ】
（アクションヒーローものとして傑作というわけではありませんが、人間ドラ
マの視点を強く打ち出したところに好感が持てます。料金分ぐらいはソコソコ
楽しめるのでは？）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2003年４月９日（水）シネマサンシャインにて。午後４時10分の回。