電話で抱きしめて (ＨＡＮＧＩＮＧ ＵＰ)
(2000年 アメリカ)(上映時間１時間34分)
監督：ダイアン・キートン
出演：メグ・ライアン、ダイアン・キートン、リサ・クードロー、ウォルター
・マッソー
＜ストーリー＞
３人姉妹の次女イヴ（メグ・ライアン）は、夫と一人息子に恵まれ、イベント
やパーティの企画をしながらロスで暮らしていた。一方、姉のジョージア（ダ
イアン・キートン）は女性誌の編集長を務めるバリバリのキャリアウーマン。
そして、妹のマディ（リサ・クードロー）は昼メロの女優。遠く離れて住む３
人は、電話のおしゃべりだけで結びついていた。そんな中、３人のパパで映画
脚本家のルウ（ウォルター・マッソー）が、老人性のボケで入院したことから
……。
＜レビュー＞
★ぽち：男。「Ｃｉｎｅｍａの王国」編集発行人兼ライター
☆もも：女。「Ｃｉｎｅｍａの王国」ライター
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コメディなのか、シリアスなドラマなのか、どっちつかずで中途半端
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★ぽち：悲しいなァ〜。ク、ク、ク……。 (T^T)
☆もも：ん？ いきなり泣いてどうしたの？
★ぽち：この映画で父親役を熱演したウォルター・マッソーが、去る７月１日
に79歳で亡くなったんだよ〜ん。
☆もも：てことは、これが最後の作品？
★ぽち：そういうこと。ちょっとしか出番がないのかと思ったら、なんのなん
の初めから終わりまでほとんど出ずっぱり。たいしたもんデス。
☆もも：うーん。でも、最後なら、もうちょっと良い映画に出してあげたかっ
た。
★ぽち：そんなにヒドかった？
☆もも：うるさいんだもん。セリフが多過ぎてサ。なんでもかんでもセリフだ
けで説明しようとする。場面が変わっても、それがずーっと続くから
疲れちゃう。もっと余韻ってものが欲しいゾ。少しは観客を休ませて
くれぇ〜！！
★ぽち：でも、この映画って、メグ・ライアンのところにかかってくる電話が
1つの目玉だろう？静かになっちゃったら商売にならんでしょうが。
☆もも：だから、その電話が問題なの。ボケて入院したパパからの電話と、離
れて暮らしている姉と妹からの電話が入り乱れてワケがわからん！
どうせならパパからの電話だけに絞って、姉と妹の電話なんかやめち
ゃえ！！ そうすれば父と娘の関係が浮き彫りになって、もっと深い
ドラマになったと思うんだけど。
★ぽち：そ、そんな乱暴な。あの電話のやりとりが一番笑えるんだから。コメ
ディ映画としては不可欠な要素。カットしたら、キムタクのいないＳ
ＭＡＰみたいになっちゃうヨ。
☆もも：ウッソー！！これコメディ映画なの？あんまり笑えなかった……。
★ぽち：確かに爆笑できる映画じゃないけどサ。製作者たちの狙いは「クスッ
と笑って、その後でジーンとくるって」って感じじゃないのかな。
☆もも：クスッともしないし、ジーンともこない。コメディなのか、シリアス
な感動のドラマなのか、どっちつかずで中途半端。
★ぽち：ドラマとしての深みがないのは認める。展開もお決まりのパターンで
先が読めちゃう。
☆もも：始まって20分で最後まで予想できる。ストーリーが、ありきたり過ぎ
る。
★ぽち：笑いについていえば、電話のやりとり以外はイマイチかな。けっこう
いろんなことやってるけど、製作者たちが思ってるほどおもしろくな
い。メグ・ライアンの仕事の関係でニクソン記念館を登場させて、ウ
ォーターゲートをネタにしたギャグをかましたりするけど……。
☆もも：ほーら、ドラマも笑いもツッコミ不足。やっぱり中途半端なんじゃな
い。なんかさぁ、内輪ウケのシチュエーションだけを積み重ねてるっ
て感じ。
★ぽち：そう言われれば認めるしか……。メグ・ライアンのファンなもんで、
少しは思いやりのある評価をしようかと思ったんスけど。
(*＾＾*ゞ ポリポリ
☆もも：そういう態度は読者に失礼！！ o(・＿・)○ バシッ！
★ぽち：イテッ！ (>_<) 読者の皆さん、ゴメンナサイ。 ｍ（＿＿）ｍ
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パパと娘の関係がよくわからない
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★ぽち：で、ドラマ的には、いったいどこがいけないのサ？
☆もも：最大の欠点は、ウォルター・マッソー演じるパパとメグ・ライアン演
じる次女との関係がよくわからないこと。パパは自分のパンツも間違
えるほどボケてるのに、次女の電話番号だけはしっかり覚えてる。そ
れに対して、次女も文句を言いながら、一生懸命パパの面倒を見ちゃ
う。２人のこれまでの背景が描かれていないから、そのワケが今ひと
つわからない。
★ぽち：パパにとって彼女は、３人姉妹の中で一番のお気に入りだからだよ。
それに、彼女もパパのことを心から慕っていた。それだけ結びつきが
強かったわけだ。
☆もも：でも、できのいい長女ジョージアのことだって、よくホメてるじゃな
い。それに、パパが離婚後にアル中みたいになって、次女の息子の誕
生パーティーをメチャメチャにする場面なんかが出てくると、いくら
実の親子だってあれじゃあ普通は愛想つかしちゃうでしょ。どうも納
得できないなあ。
★ぽち：パパがボケちゃって、もうそんなに長く生きられないんだもん。過去
のわだかまりなんか消えちゃったんじゃない？
☆もも：そんな物わかりのいいこといわれてもねぇ。だったら、３人の姉妹と
も同じじゃん。どうして次女だけ親密なのかさっぱり？？？
★ぽち：長女のダイアン・キートンは、バリバリのキャリア・ウーマンで超多
忙。末っ子のリサ・クードローは、昼メロの女優。結局、面倒見れる
のは次女しかいなかったわけだし。
☆もも：そのパターンそのものがありきたりでつまんない！ バリバリのキャ
リアウーマンの長女、自由気ままでチャランポランな妹、その間でオ
ロオロする次女。あ〜あ、どっかで聞いたような話。三姉妹の誰にも
感情移入できないんだなぁ。姉妹の話っていうとウッディ・アレン監
督の『ハンナとその姉妹』を思い出すんだけど、足下にも及ばない。
掘り下げ方が足りな過ぎる。それで、最後にとってつけたみたいなセ
リフで、強引に話をまとめようとする。離婚した母親の心情まで、セ
リフだけで語らせちゃうんだから。脚本がダメだなぁ……。誰が書い
たの？
★ぽち：製作のノーラ・エフロンの妹デリアが書いた自伝的小説を姉妹で脚色
したんだって。たぶん小説には、父と娘の関係がそれなりに描かれて
いるんじゃない。映画じゃ、そこを省略しちゃってるのかも。
☆もも：本人たちは、そのあたりのことがよくわかってるんでしょ。でも、観
客には全然伝わらない。身内で勝手に盛り上がって、どこまでも突っ
走ってった感じ。誰か止めろよ！ でも、プロデューサーは神様だ
からなぁ……。 ヤレヤレ ┐（´−｀）┌
★ぽち：ギャグなんかも含めて、自分たちは絶対におもしろいと思ってるんだ
ろうけどネ。
☆もも：それが逆に鼻についちゃうんだなぁ。アメリカじゃどうなのかな？
★ぽち：ニクソン関係のギャグとか、たぶんもっと笑えるんだろう。それにア
メリカ人って、こういう家族の和解みたいな話が好きじゃん。
☆もも：老人のボケに対する意識の違いもあるしね。日本じゃ、どうしても暗
い感じになっちゃうでしょ。アメリカじゃ、ギャグにしちゃうんだか
ら。それにあんな状態の父親を次女にまかせっきりにしている長女と
三女って、日本人だったら非難轟々（ごうごう）だよね。だいいちど
う考えても、夫も、子供も、仕事も抱えてる次女だけが面倒見るのっ
ておかしいよ。長女と三女は独り身なんだから、動きやすいはずじゃ
ない。そういう日米の意識の違いも大きいと思う。
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ラブ・コメならハマるメグ・ライアンも、ここでは力の入り過ぎ
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☆もも：ねぇ、パパの入院やなんかで混乱したメグ・ライアンが、病院の駐車
場でお医者さんの車に追突しちゃうじゃない？
★ぽち：ああ、あのイランからの移民の医者だろ。示談交渉に母親が出てくる
……。
☆もも：そうそう。あの２人って何のために出てきたの？
★ぽち：何のためといわれても……。そういや、あんまり本筋とは関係なかっ
たな。
☆もも：あの医者が「これも運命か？」なんて言うから、追突がきっかけで２
人は恋に落ちるのかなんて思っちゃった。なんたって、ラブ・コメの
メグ・ライアンっていうイメージが強いから。 (*^。^*)
★ぽち：まさかあ。でも、ホントあの医者の親子、あんまり意味なかったな。
☆もも：でしょ。そういうところも製作者たちの先走りなのヨ。
★ぽち：でもって、ラブコメじゃないメグ・ライアンはどうだった？
☆もも：力の入り過ぎ。見てて疲れる。
★ぽち：ていうか、あの人、いつも同じ演技なんだもん。ファンとしては言い
たくないけど。 (＾。^/)
☆もも：ラブコメではあの力の入った演技がハマって笑えるんだけど、こうい
う映画じゃちょっとね……。存在感からいったら、やっぱりダイアン
・キートンのほうが上ね。
★ぽち：監督兼任だからそんなに出番は多くないけど、しっかりキャリア・ウ
ーマンしてたよね。首輪みたいな真珠の首飾りがド派手！！ 実際に
あんな人いないって。 (＾0＾)
☆もも：年とったけどね。そういえば、メグ・ライアンの夫役のアダム・アー
キンってテレビの『シカゴ・ホープ』に出てた人でしょ？ ちょっと
見ないうちに太っちゃって。でも、出たと思ったらすぐ消えた。出張
っていう設定だけど、よくあんな状態の妻を放っていくよなぁ。これ
もご都合主義？ (・_・？)
★ぽち：途中で『シカゴ・ホープ』の撮影が始まったんじゃないの？(＾0＾)
でも、日本じゃ今『シカゴ・ホープ』はＣＳでしかやってないから、
皆さんにはいい顔見せになったんじゃない。彼って、『暗くなるまで
待って』とか『キャッチ22』なんかで有名な俳優のアラン・アーキン
の息子なんだよね。
☆もも：ウォルター・マッソーについては、頑張ってるのはわかるけど、やっ
ぱりちょっと痛々しい感じも……。
★ぽち：ただ合掌デス。では、最後に結論。
☆もも：とにかくセリフが多過ぎてうるさいし、肝心の父と娘の関係がツッコ
ミ不足。もっとポイントを絞って、ていねいに描けば、深い感動が味
わえるドラマになると思うのに、もったいないなぁ。
★ぽち：クスクス笑えるところもあるけど、全体に中途半端でパンチ不足。あ
まりにもヒネリのないストーリー展開には苦笑。
《もものおススメ度》
★★+1／2★
（身内で映画を作ると成功するか失敗するかで、これは明らかに失敗作。でも
、名優ウォルター・マッソーへの追悼を込めてサービス。）
《ぽちのおススメ度》
★★
（ホームページに主人公一家の年表が載っていました。それを見て「ああそう
いうことなのか」と何度も思いました。そんなもの読まなくても納得できる映
画にしてくれぇ！）