Dolls<ドールズ>


(2002年 日本)(上映時間1時間53分)
監督・脚本:北野武
出演:菅野美穂、西島秀俊、三橋達也、松原智恵子、深田恭子、武重勉
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<ストーリー>
恋人・佐和子(菅野美穂)を捨て、社長令嬢との結婚に走った松本(西島秀俊
)。だが、式当日、佐和子が自殺未遂をしたことを知り、式場を飛び出す。精
神的ショックから錯乱し、口がきけなくなった彼女を連れ出し、松本は旅に出
るが……。

<レビュー>
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映画史に残る映像美。ただし、破滅型の恋愛ばかりというのはちょっと……
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早くも大ヒットの北野武監督最新作。北野監督の作品といえば、昔はクロウト
筋の評価はいいのに、なぜかお客が入らなくてさぁ〜。鬼瓦権造メイクの北野
監督が「お前ら、観に来いよぉ〜!」とファンを怒っていましたっけ。
(^。^/)

今回北野監督が取り上げたテーマはなんと「愛」!
物語の中心となるのは、松本と佐和子というカップルの話。社長令嬢との結婚
を選んで婚約者の佐和子を捨てた松本は、結婚式の当日に佐和子が自殺未遂を
起こし、精神に異常をきたしたと知る。
式場を抜け出した松本は病院へ行って佐和子を連れ出し、口がきけずどこに行
くかもわからない彼女を赤いヒモで結んで、あてもなくさまよい始める……。

という話に、別の2つの恋愛話が絡んできます。1つは若い頃に別れた女が、
今も約束通りに自分を待っていると知ったヤクザの親分の話。そしてもう1つ
は、事故で片目を失明したアイドル歌手に会うために、自分の目を突いてしま
うファンの青年の話。

そして、こうした物語全体が文楽の世界でくくられています。冒頭とラストに
登場するのは近松の人形浄瑠璃「冥途の飛脚」。

この映画を観てまず目を奪われたのは映像の美しさです。いや、美しいとかい
う次元ではない。これはもうアートです。すべての映像が芸術として完結して
いる。その一場面一場面を絵葉書かポスターにして、部屋に飾っておきたくな
っちゃいましたぜ。 (*^。^*)

特に美しいのが、松本と佐和子が歩き続けるシーン。紅葉、満開の桜、雪とい
った日本の美しい四季をバックにした映像が心に染み渡ります。山本耀司の衣
裳も素晴らしい存在感を示している。
ひょっとして、映像の美しさでは日本映画史に残る傑作ではないか。 (~ヘ~)
そんなことまで考えてしまいました。
さすがに芸術にも造詣が深いタケちゃんだけのことはある!

では、ドラマはどうなのか。
う〜ん、なんだかねぇ〜。イマイチなんですよ。
恋愛映画にありがちなベタベタした感じはないし、セリフを極端に削って、淡
々と描いたところはいいんですけどね。それでもなんか物足りないの。
3つの物語とも、本当は切ない話なんだけど、その切なさが胸をググッと突く
ところまではいかない感じなんです。

やっぱり中心になる松本と佐和子のストーリーが弱すぎると思うなぁ〜。
逆玉男とフラれて自殺未遂した女ってさぁ、なんだかチープな話すぎるよね。
だいたい自殺に追い込んだ張本人のクセに、今さら病院から連れ出してヒモで
くくって連れまわすってのはなんなんだ? 身勝手すぎるじゃないの! それ
を愛とか言われてもなぁ〜。

ヤクザの親分にしたって、自分の都合で別れたクセに、今さらなんだよ! っ
て感じ。アイドルの追っかけも、考えようによってはただのアブナイ男だし。
これまた愛とか言われても……。 (´ヘ`;)

それに、よくよく考えたら、3つの話とも破滅型の恋愛でしょう。
しかも、女の人が深〜く傷ついているじゃないの。女が傷つかないと愛じゃな
いわけ? 失礼しちゃうわ! まったく男って身勝手なんだから! だいたい
女はそんなに弱くないわよ。すぐに立ち直って前向きに生きてやるんだから。
フン!(と臨時に女になってみました。) (`ヘ´)

3つの話とも人形浄瑠璃の濃密さに負けちゃってる気がします。
「いいじゃねぇか。バカヤロー! 愛なんだから」
鬼瓦権造メイクでそう北野監督に言われたとしても、ワタシャ納得できかねま
す。

それでもボクは、最後までまったく飽きずに観てしまったのだ。
なんたって映像の美しさがハンパじゃないでしょう。それに、いかにも北野監
督らしいユーモアもところどころにある。車椅子芸人のホーキング青山あたり
が、いい味を出していたりしてね。

3組のカップルもハマってるんだ。これが。特に菅野美穂は、こういうストイ
ックな役をやるとスゴイよね。なんたって昔イグアナまで演じちゃったコだか
らねぇ。 (^0^)
ヤクザの親分の恋人役の松原智恵子サンのはかない美しさも、印象的でした。
ちなみに、深キョンは普通にアイドルしてましたゾ。

とにかく最後まで飽きさせずに見せてくれるところは、さすがに北野監督とい
うところ。映画史上に残るような映像の美しさだけでも見応えがある。
ただし、そこに潜む切なさを受け止められるかどうかは、人によってビミョー
なところでしょう。個人的には、ストーリー的にもうちょっと工夫があれば、
その切なさがもっともっと伝わってきたと思うんですが……。

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(よほど北野作品が体質に合わない方でなければ、それなりに楽しめる映画で
は? ただし、心が揺り動かされるかどうかは個人差がありそう……。)
                           <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2002年10月20日(日)シネマ・ロサにて。午後3時の回。


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