ダブル・ジョパディー (ＤＯＵＢＬＥ ＪＥＯＰＡＲＤＹ)
(1999年 アメリカ)
監督：ブルース・ベレスフォード
出演：アシュレイ・ジャッド、トミー・リー・ジョーンズ、ブルース・グリー
ンウッド、アナベス・ギッシュ
＜ストーリー＞
シアトル郊外に、実業家の夫ニック、息子のマティと一緒に住む主婦リビー。
ある日、セーリング中に夫が大量の血痕を残して失踪。彼女は状況証拠から、
夫殺しの罪を着せられてしまう。息子を親友のアンジーに託して刑務所に服役
するリビー。ところが、獄中で、事件そのものが夫の仕組んだワナだったこと
を知る。やがて仮出所した彼女は、保護監察官トラヴィスのもとを脱走し、自
分をおとしいれた憎きニックの行方を追うが……。
＜レビュー＞
「母の執念恐るべし！」
★ぽち／男・「Ｃｉｎｅｍａの王国」編集発行人兼ライター
☆もも／女・「Ｃｉｎｅｍａの王国」ライター
★ぽち：とにかくスゴイぞ！ 女の執念。自分を裏切った夫を徹底的に追いつ
めていく。あの迫力にはみんな圧倒されちゃうよ。
☆もも：違う、違う。女の執念じゃなくて、「母」の執念。子供に会いたい一
心で夫を追跡していくんだから、復讐が目的じゃないのよ。だけど、途中か
らは夫への復讐を中心に据えて話を運んでいく。それが、最後にきて、グッ
と子供のことが前面に出てくるわけ。だから、ラストシーンがよけい感動す
るのよ。観客は、「ああそうだった。彼女にとって大切なのは夫への復讐な
んかよりも、子供との再会だったんだ」って気づくの。泣いている人もいた
わよ。(;_;)シクシク。
★ぽち：でも、最後はやっぱり夫を……。あの決着のつけ方はちょっと意外だ
ったゾ。アクシデントっていうか、偶然みたいなものだろう。
☆もも：偶然でも何でもいい。あんなヤツは殺されて当然なんだ！ おっと凶
暴になっちゃったゾ。
★ぽち：そ、そんなギラギラした目で見るんじゃない！
☆もも：それぐらい演出がうまいんじゃない？ 何度も夫を殺すチャンスがあ
るのに、そうしないで、観客をジラす。そして、観客の気持を高めておいて、
最後にはキッチリ決着をつける。カタルシスなんだなぁー。
★ぽち：ムダなシーンもあんまりなかったし、テンポもよかったし、おもしろ
かったよね。今回は、残念だけど、文句のつけようがないかな……。
☆もも：ちょっと待った！ ある、ある（笑）。
★ぽち：そんなにうれしそうな顔するなよ（笑）。じゃ、とりあえずストーリ
ーを追いながら……。まず、ヒロインのリビーが夫殺しの罪を着せられるよ
ね。
☆もも：事件のトリックが見え見え。どう考えたって、夫が仕掛けたってすぐ
わかるじゃない。
★ぽち：まあ、でも謎解きを楽しむ映画じゃないわけだし……。
☆もも：だけど、彼女の親友アンジーが共犯だっていうのまでわかっちゃうの
は、ちょっとねぇ……。
★ぽち：え！ 彼女も共犯だったの？
☆もも：気がつかなかったの？ あきれた……。だって、あんまり詳しい関係
の説明とかないのに、あれだけカメラが追っていったら、何かあると思うで
しょ？
★ぽち：そう言われれば、そんな気も……。けっこうキレイな人なんで見とれ
てました(＾。^/)。
☆もも：だから、なおさらアヤしいんだって！ 別にあんなにきれいな人じゃ
なくてもいいわけじゃない。もうちょっと普通の人を起用して、カメラワー
クも普通にしてたら、事件はミステリアスなままだったのに。
★ぽち：それより、もっと疑問だったのは、夫の死体が発見されなかったのに、
ヒロインが起訴されて有罪になっちゃうことだよ。まあ、アメリカは陪審
裁判だから仕方ないのかもしれないけど。
☆もも：死体がないのに起訴されるっていうのは、日本じゃあんまり考えられ
ないわよね。せめて現場に残っていた血液のＤＮＡ鑑定なんかで、夫の血液
かどうか確認するぐらいのことはしないと……。
★ぽち：弁護士もソコんところを、きちんと突っ込んで弁護しろよ！ プロだ
ろ（笑）。結局、リビーは刑務所送りになるんだよね。そこで夫が生きてい
ることを知り、ガク然とする。そこに、元弁護士だっていう囚人仲間が「ダ
ブル・ジョパディー」の話をする。
☆もも：「誰もが同一の犯罪で二度有罪にならない」ってやつね。
★ぽち：その元弁護士と、もう一人ユニークな囚人仲間が登場するけど、けっ
こう個性的でおもしろかったよね。
☆もも：あの二人をもっと効果的に使うのかと思ったら、刑務所のシーンだけ
で消えちゃったのが残念。
★ぽち：さて、「ダブル・ジョパディー」の話を聞いたリビーは、毎日ひたす
ら体を鍛えて、出所の日を待つわけだ。
☆もも：『ターミネーター』のリンダ・ハミルトンか、『Ｇ．Ｉ．ジェーン』
のデミ・ムーアか（笑）。まあ、だから、出所後のビーチや海中でのアクシ
ョンシーンが生きてくるんだな。でも、残念なのは彼女の肉体は変化してい
るけど、心はあんまり変わっていないってこと。
★ぽち：それ、どういうこと？
☆もも：最初からけっこう強くて、頼もしい母って感じがするのよ。だから、
肉体と同時に、心も鍛えられていくっていう感じがしないの。最初は一人で
は何にもできないカワイイ奥さんで、無実の罪に問われてメソメソしている
のに、刑務所で肉体だけじゃなくて精神的にも強くてたくましい女に変身す
る。そんな感じのほうが、もっとよかった気がするな。再会した時にも、夫
が自分の妻だとわからないぐらいに変身してて……。
★ぽち：なるほど、それは言えるかもね。まあ、そうやってヒロインは肉体改
造して仮出所するわけだけど、よくわからないところがあるんだ。仮出所し
てから寮みたいなところで、他の仮出所者と一緒に暮らすよね。アメリカっ
て、仮出所者はみんなああいうところに入らなきゃいけないの？
☆もも：保護監察官のトミー・リー・ジョーンズが寮長みたいよね（笑）。運
動部にいそうな鬼寮長。でも、その彼が何であんなに必死で、逃げ出したヒ
ロインを追いかけるのかわからない。刑事でもないのにさ。
★ぽち：それはやっぱり仕事だからサ。保護観察中の仮出所者が大事件でも起
こせば、自分のクビにかかわるわけだし。それに、彼にも妻と子供に関わる
暗い過去がありそうだったじゃないか。それがヒロインの身の上にオーバー
ラップしていったのかも。
☆もも：でも、それがちゃんと出ていなかった。もっと観客にわかるようにし
ないと。だって、追跡の途中で、海の中に車でダイブして死にかけたりする
んだから、そのあたりの動機づけは、もっとはっきりしたほうがよかったわ。
★ぽち：そのあとは夫の行方を追うヒロインと、彼女を追いかける保護監察官
っていう展開が続くんだよね。
☆もも：そこで感じたのはアメリカのネット社会のすごさ。だって、保険者番
号や車の登録ナンバーで、簡単に住所や名前がわかっちゃうんだもん。 (
゜_゜;)
★ぽち：図書館の端末で、職業別の名簿が検索できちゃうのもすごかった。日
本だったら名簿業者にでも行かなくちゃ難しいよね。あんなに簡単に個人の
情報が手に入るっていうのはコワイ。日本がまだあそこまで行っていなくて
よかった（ホッ）。
☆もも：なんか知られたらマズイ情報でもあるわけ？
★ぽち：そういうことじゃなくて！ 最近のネット社会を効果的に利用してい
るなと思っただけだよ。
☆もも：画廊で絵の検索をするところはうまかったわね。カンディンスキーの
絵が追跡のキーポイントになるけど、新聞記事に載ったわずかなヒントから
探り当てるのね。
★ぽち：謎解きの映画じゃないけど、それなりに謎解きのおもしろさも味わえ
るよね。
☆もも：ただ夫が別人に成りすましているけど、あれだけ悪事を働いてきて、
そんなことが簡単にできるわけ？
★ぽち：なんてったってアメリカは広いから。シアトルの情報も逃亡先のニュ
ーオーリンズまでは届かないんだよ、きっと。
☆もも：そんな都合のいい……。今、ネット社会だって言ったばかりでしょ。
だいいち、あんなにハデにホテルを経営してたら、たいがいバレるわよ！
★ぽち：でもさ、南部ってある意味じゃ別世界だぜ。文化や習慣も違うし。葬
式や墓場のシーンがあったろ？ デキシーランドジャズで、にぎやかに死者
を送っちゃうんだから。
☆もも：あの墓場のシーンで気になったのは、ヒロインが夫に棺桶に閉じ込め
られた時に、持っていたピストルを奪われなかったっていうこと。普通は、
ちゃんと調べるわよネ。
★ぽち：僕は、ヒロインが他人の子を自分の子だと思い込むのが、ちょっとヘ
ンだった。いくら６年間会っていなくても、我が子なんだからさ。少しぐら
い疑問に思えよ（笑）。
☆もも：ねえねえ、なんか私たち、だんだん話が細かくなってきてない？
★ぽち：それは言える。公開前の映画なのに、そんな細かいことを言っても、
読んでいる人にはわからないって（笑）。でも、逆に言えば、そういう細か
いところを除けば、なかなかおもしろいっていうことじゃない？
☆もも：そうそう。サスペンスとしても、アクションとしても合格点。ここか
ら先は見てのお楽しみということにしておくけど、ハラハラドキドキの展開
といい、感動のラストシーンといい、なかなか見応えがあります。
★ぽち：興行的にいうと、トミー・リー・ジョーンズぐらいしか、知名度が高
いキャストがいないのが苦しいかもネ。
☆もも：でも、主演のアシュレイ・ジャッドはよくやっていたんじゃない？
アクションシーンといい、夫への憎しみと子供への愛に揺れる女心をよく演
じていた。
★ぽち：アル・パチーノとロバート・デニーロの『ヒート』にも出演していた
よね。それに、『ノーマ・ジーンとマリリン』では、無名時代のマリリン・
モンローを演じていたし。
☆もも：猟奇殺人を描いた『コレクター』とか、サイコ・スリラーの『聖なる
狂気』にも出てるわよ。
★ぽち：トミー・リー・ジョーンズはやっぱり存在感バツグン。
☆もも：でも、年とったって感じ……。
★ぽち：いや、あれは演技だろう。疲れた中年男をうまく演じていたよ。『メ
ン・イン・ブラック』なんかとは全然違う演技だよね。それにしても、『逃
亡者』にしろ『追跡者』にしろ、とことん追いかけるのが好きなオジサンだ
なァ（笑）。
☆もも：私みたいに、イヤになるほど男に追いかけられる女もいるのにネ。
(＾0＾）オッホホ。
★ぽち：なんか悪いコトしたのか？ 結婚サギか？ オヤジ狩りか？
☆もも：そんなことするか！
★ぽち：ちょっと雰囲気がアヤしくなってきたので、今回はこのへんで……。
《ぽちのおすすめ度》
★★★★
（お金払って見てもモトはとれます）
《もものおすすめ度》
★★★＋★半分
（恋人やダンナに対して、恨みを持っているアナタ。ラストで欲求不満を解
消しましょう！）