エネミー・ライン (BEHIND ENEMY LINES)
（2001年 アメリカ）（上映時間１時間46分）
監督：ジョン・ムーア
出演：オーウェン・ウィルソン、ジーン・ハックマン、ガブリエル・マクト、
チャールズ・マリク・ホイットフィールド、ホアキン・デ・アルメイダ
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＜ストーリー＞
停戦中のボスニアの監視活動にあたるアメリカ海軍のクリス大尉（オーウェン
・ウィルソン）。だが、偵察飛行中に突然ミサイル攻撃を受け撃墜されてしま
う。敵地のど真ん中で、セルビア人民軍の残虐行為を目撃し、命を狙われるク
リス。はたして無事に生還できるのだろうか……。
＜レビュー＞
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ドラマは薄っぺらな戦争アクション映画。でも映像はスゴイ！
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紛争の傷跡も生々しいボスニアを舞台にした映画。「これは限りなく現実に近
い物語か!?」と思ったら、そうじゃありませんでした。
想定されているのは「近い将来」のボスニア。一応、それらしい政情なんかを
織り込んでいるものの、描かれているのは完全なフィクション。しかも、エン
ターティメント性の強い戦争アクション映画でした。 (~ヘ~;)
アラビア海に浮かぶ米海軍の空母。停戦中のバルカン半島の平和維持活動にあ
たるクリス・バーネット大尉は、偵察飛行ばかりのルーティン・ワークに嫌気
がさし、海軍を辞めようと考えていた。
そんなある日、クリスは相棒のスタックハウスともにボスニアへの偵察飛行に
出る。だが、 その途中でセルビア人勢力が、ＮＡＴＯに報告していない部隊を
集結させているのを目撃。証拠写真を撮影する。
それに気づいたセルビア人勢力は、地対空ミサイルを発射し撃墜にかかる。必
死でミサイルをかわすクリスたちだったが、結局、避けきれずに撃墜されてし
まう。
敵地のど真ん中に不時着したクリスは、空母と連絡を取ろうとする。しかし、
その間に、スタックハウスがセルビア人民軍に発見され、射殺されてしまう。
それを見たクリスは思わず声をあげ、敵に察知されてしまう。降り注ぐ銃弾を
かいくぐり必死で逃げ出すクリス。はたして無事に生還できるのだろうか？
社会性やメッセージはまったくナシ。
最初にクリスたちの戦闘機が撃墜されて、相棒が殺されるあたりでは、「あ〜
あ、またアメリカは正義！ アメリカ万歳！」てな映画かと思ったんです。で
も、そんな陳腐なメッセージさえ感じられなかったなぁ〜。
この映画に出てくる戦争だの軍隊だのは、ただエンタメ映画を盛り上げるため
の道具でしかないんだと思います。
クリスをつけ狙うスナイパーが登場するところなんか、まるで西部劇の悪役ガ
ンマンみたいなんだもん。 (＾。^/)
敵の真っ只中に入った兵士がひたすら逃げまくるという設定はおもしろいもの
の、それ以外はドラマ的にこれといって見るものがありません。
アメリカ軍内部の対立なんて「いかにも」って感じだし、クリスが大勢の敵に
囲まれてピンチを脱出するところなんか都合良すぎ。眠狂四郎や木枯らし紋次
郎だって、あんなにうまくはいかないよぉ〜〜〜！！！ (＾0＾)
ラストのお気楽な結末も、コケが生えたみたいな古典的パターンで全然つまら
ない。 (｀ヘ´)
それより何より、クリスの内面が全然描けていないんですよねぇ〜。
ああいう絶望的状況になったら、もっとジリジリするような気持ちがあるでし
ょう。「オレはどうなるんだッ！ どうすればいいんだぁ〜！」ってね。そう
いうところもほとんど感じられませんでした。 (´ヘ｀;)
ただねぇ、そういうつまらなさを覆い隠すぐらい映像がスゴイんです。
W(゜o゜)W
最初の方の戦闘機とミサイルとの空中戦、雪の中の追いつ追われつの逃亡劇、
地雷の爆破シーンなど、最後までまったくテンションが下がりません。その斬
新で、迫力タップリの映像にはただ圧倒されるばかりでした。たたみかけるよ
うなテンポも素晴らしい！
戦争映画好きならずとも、この映像にはハマっちゃうんじゃないでしょうか。
しかも、映像のタッチがドキュメンタリーっぽいんですよね。青みがかかった
トーンで、かなりリアル。ちっともウソくさくないんです。地雷のそばで子供
が遊ぶシーンとか、思わず「ハッ」とするようなシーンもたくさんあります。
なんでも、この映画のジョン・ムーア監督は、実際に戦場カメラマンを経験し
たそうです。だから、あれだけの映像が撮れたんでしょうね。
主人公のクリス役に、あんまりビッグじゃないオーウェン・ウィルソン（『シ
ャンハイ・ヌーン』でジャッキー・チェンと共演）を起用したのも、ドキュメ
ンタリー性を高める作戦なのかもしれません。（それにしても華がないんだけ
どねぇ〜。）
おかげで上官役のジーン・ハックマンがやたら目立ちすぎ。貫禄タップリで、
とても『ハートブレイカー』のエロオヤジと同一人物とは思えんゾ。(＾0＾)
結論としては、戦争アクション映画としてそれなりのレベルにはあると思いま
す。特に迫力の映像は必見。エンターティメント作品として、入場料分モトは
とれるのでは？
まぁ、いくらエンタメ映画でも、もうちょっと心に残るものがあってもいいと
は思うんですけどね。
「戦争がしたい！」って言ってたクリスが、実際に地獄のような戦場に入っち
ゃったわけだから、どこかで「こんなはずでは！」というところを見せて欲し
かった気もします。別に「それを反戦のメッセージに結び付けろ！」なんてこ
とまでは言いませんけど……。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（あんまり心に残るものはありません。その代わり、楽しい時間を過ごすのに
はピッタリの映画かも。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2002年３月12日（火）池袋シネマサンシャインにて。午前11時50分の回。