イースト／ウエスト 遥かなる祖国 (EST−OUEST)
（1999年 ブルガリア・フランス・ロシア・スペイン）（上映時間２時間１分）
監督：レジス・ヴァルニエ
出演：サンドリーヌ・ボネール、オレグ・メンシコフ、セルゲイ・ボドロフ・Ｊｒ、
カトリーヌ・ドヌーヴ
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
第二次大戦終了後、ロシア人の医師アレクセイ（オレグ・メンシコフ）は、フ
ランス人の妻マリー（サンドリーヌ・ボレーヌ）とともに、亡命していたフラ
ンスからソ連へ帰国する。だが、彼らは当局の厳しい尋問を受けたうえ、半ば
軟禁状態に置かれてしまう。自由のない生活に絶望したマリーは、ある人物に
救いを求めるが……。
＜レビュー＞
東西冷戦を背景にしたドラマ。
といっても、政治そのものを描いているわけじゃありません。過酷な状況の中
で人間はどこまで愛を貫けるかというテーマを、真正面から取り上げた正統派
の人間ドラマです。
ロシア人医師アレクセイとフランス人のマリー夫妻は、ソ連当局の呼びかけに
応えて亡命先のフランスから、息子ともにソ連へ向かう。そこには新たな希望
に満ちた生活が待っているはずだった。
だが、帰国した夫妻を待っていたのは秘密警察の取り調べ。マリーが西側のス
パイだと疑った当局は、彼女のパスポートを破り厳しい尋問を行う。
命は助けられたものの、キエフの粗末な共同住宅に送られるアレクセイ一家。
そこは、私生活が筒抜けで、厳格な規則でがんじがらめになっていた……。
前半は、いきなり過酷な状況に突き落とされた夫妻の苦しみと悩みが、手にと
るように伝わってきます。特に夫の祖国とはいえ、異国でツライめにあうマリ
ーの苦悩ときたら……。 (T^T)
途中で、管理人のおばあさんがＫＧＢに連行される事件が起きます。かつて家
庭教師からフランス語を習っていた彼女が、マリーとフランス語の歌を歌って
いたことを密告され、連行されてしまうんです。
自分たちが直接ツライめにあうだけでなく、他人まで巻き込んでしまう。こう
いうのってやるせないっスよねぇ〜。このへんのストーリー展開は、なかなか
ウマイです。
そして、中盤になると夫婦の間にスレ違いが生まれます。
妻は望郷の思いを強くし、危険を冒してまでも祖国に戻れる方法を模索しよう
とする。
一方、夫は体制に順応して、その中で少しずつ生活を改善しようとする。
単純に、「国家に迫害されるかわいそうな夫婦」という構図にしないで、夫婦
それぞれの葛藤をジリジリと描いたところがいいですねぇ〜。２人のビミョー
な心理のアヤが、ドラマ全体にズシリと厚みを加えています。 (^_^)
夫婦のスレ違いは、さらに広がります。
夫はなんと新しい管理人と浮気！（まあ、これにはいろいろと事情があったこ
とがあとでわかるんですけどネ。）
一方、妻にも気になる男性が……。 ｏ（＾ｏ＾）ｏ
それは、前の管理人の孫サーシャ。
マリーは、有望な水泳選手だったサーシャを応援し、水泳の練習につきあう。
両親を秘密警察に殺された過去を持ち、今や天涯孤独の身となった彼は「僕も
国を出たい」とマリーに打ち明ける。
ここで２人は共通の思いを抱く同志になっちゃうワケ。
なんたって、マリーにとって、体制ベッタリの（おまけに浮気までした）アレ
クセイなんか「もうどーでもいい存在なのッ！」 (｀ヘ´)
それに代わって、サーシャが新たな希望の星になったんですねぇ〜。
というような中盤も、相変わらず骨太な人間ドラマが続いていきます。でも、
残念ながらこのへんは、ちょっぴりダルいなぁ〜。 (´ヘ｀;)
同じテンポが続いていくし、描写がややクドイ感じ。それでいて、肝心なポイ
ントはボヤケちゃってる。たとえば、アレクセイはある意図のもとに体制に順
応しているのだが、そのあたりがまったく感じられない。あれじゃ、ただの軽
薄な浮気男にしか見えんゾ！ (＾0＾)
そして、ラスト30分になって、いきなりドラマは大激動に突入デス！
え？ え？ そうなの？ アレアレ……という感じで、スリリングな場面が連
続。ちょっと省略しすぎの感じもしますが、感動のラストに向かってググッと
盛り上がるのは間違いナシ。
特にここでは、カトリーヌ・ドヌーブ演じる大女優（そのまんまやんけ！）が
重要な役目を負います。さすがに貫禄の演技が光っていますねぇ〜。
夫婦役の２人（夫役のオレグ・メンシコフと妻役のサンドリーヌ・ボネール）
もいかにも大河ドラマらしい重みのある演技。
２人がダンスをするシーンはスッゴク印象的でしたねぇ〜。 (*＾。＾*)
さてさて、物語は波乱の中で終幕へ。ラストに映るのはアレクセイの笑顔。そ
こに至るまでの経過を考えると、その笑顔がとっても切ないなぁ〜。
夫婦の絆とは？ 生死がかかった過酷な状況で人間はどう生きるべきなのか？
柄にもなく、そんなことをアレコレと考えちゃいました。 (~ヘ~;)
それにしても、これだけ個人を翻弄しちゃう国家って何なんでしょう。イヤだ
なぁ。
ヨシ！ もう税金も健康保険料も払わないぞッ！（って、そういうことじゃな
いと思うんですけど……。）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）
（東西冷戦の悲劇を背景に、国家に翻弄される夫婦の歳月を丹念に描いた骨太な
人間ドラマ。途中やや中ダルミがあるものの、全体を通してみればなかなか見応
えがあると思いますヨ。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2001年11月20日（火）シネスイッチ銀座にて。午前11時45分の回。