イグジステンズ (EXISTENZ)
(1999年 カナダ・アメリカ)(上映時間1時間37分)
製作・監督・脚本：デビッド・クローネンバーグ
出演：ジェニファー・ジェイソン・リー、ジュード・ロウ、ウィレム・デフォー、
イアン・ホルム、ドン・マッケラー
＜ストーリー＞
ある教会で、新作ゲーム「イグジステンズ」の発表会が行われた。開発したの
は人気女性ゲームデザイナーのアレグラ。だが、観客の１人が彼女を狙撃し、
負傷させてしまう。どうにか命拾いした彼女は、居合わせたゲーム会社の社員
テッドとともに逃亡。逃亡先で２人は問題のゲームを体験する……。
＜レビュー＞
テレビの情報番組なんかで、よく紹介されていたシーン。
ジェニファー・ジェイソン・リー扮するゲームデザイナーと、ジュード・ロウ
扮するボディガードが中華レストランで食事をする（と言ってもゲームの中で
の話なんだけど）。
出てきたのは突然変異した両生類の料理。それを食べて残った骨を組み立てる
と銃が完成！ 名づけて「グリッスル・ガン」だ！
なんと弾丸は人間の歯ですぜ、ダンナ。(＾0＾)
この時の料理の名前は「スペシャル」。
だけど、考えてみたらこの映画全体が「スペシャル」なものかも……。
そう、これはクローネンバーグ監督が自分のファン"だけ"に贈った特別な映画
なのだ！
いや〜、最初から極論を言っちゃいましたね。
クローネンバーグが聞いたら怒るだろうなぁ。
「オレは普通に映画を撮ってるだけで、ファンのために作ってるんじゃない！
(｀ヘ´) 」とか言ってサ。
でもねぇ、クローネンバーグのファンじゃない人には、かなりツライと思いま
すヨ。ホント。
何しろ、すごくキモチ悪いですぅー。（'_`）
僕なんかあんまりキモチ悪すぎて、途中で思わず笑っちゃいましたもん。
最近は、昔ほどの直接的なエグさは消えていたクローネンバーグ作品。
でも、今回は初期に戻ったみたいなバリバリ全開ぶりデス。
このキモチ悪さが快感になる人もいるんでしょうけど、ほとんどの人はついて
行けないんじゃないの？
前宣伝の割に、あんまり観客動員が伸びていないっていうのも、うなずけます
ね。ハイ。
やっぱりこの人、カルトの巨匠だな。
ストーリーの中心になっているゲーム「イグシステンズ」は、プレイヤーの脳
の中にダウンロードされて、そのままバーチャルな世界に入りこむもの。10年
前なら「スッゲー、ぶっ飛んだ発想！」と話題になるところだけど、バーチャ
ル・リアリティーが現実になりつつある今じゃ、どうってことはない。ゲーム
を素材にしたこの手の映画には、ありがちなパターンだ。
┐（´−｀）┌
だが、さすがにクローネンバーグ。細かなディテールがキレている。
まず、ゲームを進めるコントローラーがエグいの何のって……。
「ゲームポッド」と呼ばれ、外見はなんと肉の塊。それをクニュクニュ撫でく
りまわしながらゲームを進める。その様子ときたら、ウワー、何だかとってもエッチ！
このゲームポッド、突然変異した両生類（例の中華料理になったヤツ）の有精
卵を培養して作られたとかで、その修理シーンときたら完全な生体解剖。
思い出しても吐き気がこみ上げてきますぅー。ゲェッー。
でもって、そのゲームポッドをどこに接続するかというと、なんと脊髄に穴を
開けて、背中からコードを差し込むのだァ！
スゴク痛そう……。(>_<)
近未来では、ちょうどピアスの穴を開けるように、この穴を開けるのが普通ら
しい。
まだ穴を開けていないテッドに、非合法の穴開け屋（個性派ウィレム・デフォ
ーがいい味出してるゾ）が、マシンガンみたいなもので穴を開けるシーンがあ
るけれど、観ているこっちも背中がウズウズしてきちゃいました。
そうやって背中に開けた穴とゲームポッドを結ぶコードが、これまた不思議な
形。まるで人間のヘソの緒のような外見をしている。
それを背中の穴に差しこむ時には、入りやすくするために潤滑油みたいなもの
を塗ったり、なめたりする。これがまたミョーにエッチな感じなんだわ。
それにしても、背中に穴まで開けて楽しむゲームって何なんだ！？
もしかしたら、麻薬で幻覚を見るのと似たような快感なんだろうか？
だとしたら、何となくハマる気持ちもわかるけど、それにしたって背中に穴を
開けちゃうんですからねェ……。
きっとものすごい快感なんでしょうけど、そのへんはあんまり伝わってこなか
ったなぁ。ゲーム自体のおもしろさが実感できませんでした。(~ヘ~)ウーン
ただし、この映画、現代という時代を通して見ると、また違った味わいがある
かも……。
映画の中でゲームをする２人は、ゲームと現実との区別が曖昧になっている。
観ている僕たちもだんだん混乱してくる。
ラストのドンデン返しも含めて、いったいどこまでが現実で、どこまでが虚構
なのか、まったくわからなくなってくるのだ。
このあたり、最近の少年たちの事件なんかを見れば、ちょっとコワイ感じがす
る。これからは、現実と虚構の区別ができない人間が、どんどん増えていくの
かもしれない。
それに、ゲームをするために脊髄に穴まで開けてしまうというのは、快楽を追
求するためには何でもやってしまう、最近の風潮に共通するものを感じてしま
う。
別にそういうことを批判するようなメッセージ性があるわけじゃないけど、だ
からこそ、かえってゾッとするものがあったなぁ……。
主演のジェニファー・ジェイソン・リーはとにかく強くて強引な女。
一方、期待のホープ、ジュード・ロウはここではまったくの役立たず。ああ情
けない……。（＾０＾）
この男女の立場の逆転もなかなかおもしろいデス。
（でも、ジュード・ロウ君、こんな情けない役で将来に傷がつかなきゃいいけ
ど）
さて、結論。
バーチャル・リアリティーが現実のものになりつつある世界をシニカルに描い
た作品。
ただし、なんたってクローネンバーグの世界ですからねェ。あのキモチ悪さに
耐えられないことには、どーにもなりません！
《ぽちのおすすめ度》
★★★
（僕は絶対に背中に穴なんか開けませんから！）
＜ぽち＞