ふたりの人魚 (蘇州河)
（2000年 中国・ドイツ・日本）（上映時間１時間23分）
監督：ロウ・イエ
出演：ジョウ・シュン、ジア・ホンシュン
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＜ストーリー＞
上海に住む"僕"の仕事はビデオの出張撮影。ある日、撮影に
出かけたバーで水槽の中で泳ぐ美しい人魚にひとめぼれして
しまう。彼女の名前は「メイメイ」。"僕"たちはつきあい始めるが、
どうやら彼女には謎があるらしかった。そして、やがて"僕"の前
にマーダーという男が現れる。彼はメイメイは、自分のかつての
恋人「ムーダン」と同一人物だと言い張るのだが……。
＜レビュー＞
なんと、この映画には主人公が登場しない！ (
゜_゜;)
どういうことかというと、主人公の目線で物語が進行していくのだ。
登場人物が主人公と話す時はスクリーン越しに観客に向かって
話すし、ヒロインが主人公にキスするシーンはスクリーンのこちら
側に唇が突き出されるってワケ。
その間、主人公の心理や行動は、彼のセリフ＆独白だけで説明される。
「ふーん、そんなんでよく最後まで続くなぁ」と思うでしょ。
でも、実は主人公が絡むシーンはそんなにないんだよネ。
ビデオ撮影屋の男が、バーの人魚のショーを撮影するよう依頼され、
そこで水中ダンサーのメイメイと知り合う。
２人はすぐにつきあうようになるのだが、メイメイは時々、何日も姿を
消してしまうことがあった。
何か秘密があるのではないかと思った男は、彼女が言った「マーダー」
という男についてあれこれ勝手な想像をめぐらす。
で、そこから、主人公の頭の中で展開されるマーダーという男とメイメイ
との物語が始まるんですヨ。
運び屋のマーダーが仕事でムーダンという少女と知り合い恋に落ちる。
ところが、やがて悪い仲間にそそのかされたマーダーは、彼女を誘拐し、
監禁する。
父親が身代金を支払って解放されたムーダンだが、ショックのあまり河
に飛び込んでしまう。
それからしばらくして、刑務所から出所したマーダーは街に戻ってムー
ダンを探す。
そして、バーで人魚のショーに出演していたムーダンそっくりのメイメイと
出会い、「キミはムーダンなんだろ？」と迫る。
しかし、メイメイはそれをきっぱり否定する。
いったい彼女は、本当にムーダンなのか？？？ (・_・？)
てなストーリー。あ〜あ、面倒クサイ。
おまけに、主人公の空想の物語だと思ってたら、途中から主人公の前に
実際にマーダーが現れて、メイメイをめぐる三角関係（ムーダンも入れれば
四角関係!?）になっちゃうんだから、まったく。いったいどーなってんだ？
でも、ま、実際に観ると、それほどややこしくないのでご安心を。
いやぁ〜。僕は最初、何のためにこういう構成にしてあるのかよくわから
なかったんです。
愛する相手を誘拐しなければならない男の苦しみ。そして、誘拐された娘
の悲しみ。それだけの話じゃ、あまりにもベタでしょうがないから、こういう
ヒネった話にしたのかと思った。
でも、それにしちゃ、イマイチ生きてないんだよねぇ〜。この構成。
メイメイの正体をめぐるサスペンスも、そんなにドキドキするような展開じゃ
ないし。
それでも、どうにか退屈しないで済んだのは、緊張感あふれる鮮烈な映像
のおかげ。
上海の風景、特にゆったりと流れる河をバックに、クラクラするぐらい美しい
映像が展開される。 (◎-◎)
それに、ヒロインのジョウ・シュンがいいんだよねぇ〜。 (＊^。^＊)
奔放な水中ダンサーのメイメイと、あどけなくて傷つきやすい少女のムーダン
という、全然違う２役を見事に演じ分けるんです。その演技力もキャラも、
とにかく素晴らしいッ!!
なんなんだこの魅力は!? 女は魔物だなんて次元の話じゃないゾ。完全に
バケモンです！（ゴメン！）
で、彼女のプロフィールを見たらもう27歳！
うっそだぁ〜。メイメイの時はともかく、ムーダンの時なんかどう考えても10
代半ばぐらいにしか見えなかったゾ。やっぱバケモンだな（再度、ゴメン！）。
最近、世に出た中国の新鋭女優といえば、『初恋のきた道』や『グリーン・
デスティニー』のツャン・ツィイーが有名。彼女の場合、素直でまっすぐなコ
って感じだけど、この人の場合、けっこう屈折してて、小悪魔的な魅力もある。
個人的には、こっちの方が好きですな。フ、フ、フ……。
（何だ!? その気味悪い笑いは）
てなわけで、彼女の魅力で乗り切ったものの、相変わらずヒネった構成の
意味はよくわからなかった。
ところがぁ〜〜〜！！（そんなに力を入れなくてもいいんだけどサ）
ラストでブッ飛びましたヨ。
あんまり詳しくは言わないけど、要するにマーダーとムーダンの話はモノス
ゴ〜イ純愛物語。
ところが、ラストでこの監督ったら、「そんなものありゃしねぇ」ってバッサリ
やっちゃってるんですぜ。オイオイ。
ふーん、そういう仕掛けがあったわけですか。なるほどねぇ。 _(‥
)
しかし、この虚無感はなんだ！？ どうしてこんなにダルい！？
そういえば、ここだけじゃなくて、全編にそういう雰囲気が漂っているんだよネ。
最近の中国映画って、恋愛を描いても、それを通して社会の雰囲気がクッキリ
出てくることが多い。もしかしたら、この映画のケダルさも、中国社会の雰囲気
を反映したもの？
結論的には、最近の中国新世代の監督らしい、みずみずしい感性が感じ取れ
る作品。ヒネった構成もユニークでいい。
ただ、物語そのものに、もう少し工夫があってもよかった気がするなぁ。
ま、それでも、ジョウ・シュンという素晴らしい女優の演技だけでも、観る価値は
充分にある映画だと思いますヨ。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（ホント、最近の中国って、優秀な監督や俳優がウジャウジャ出てくるなぁ。
日本はどうした!?）
＜ぽち＞