夏至 (A LA VERTICALE DE L'ETE)
（2000年 フランス）（上映時間１時間52分）
監督・脚本：トラン・アン・ユン
出演：グエン・ニュー・クイン、レ・カイン、ゴー・クアン・ハイ、
トラン・ヌー・イエン・ケー、アンクル・フン、チャン・マイ・クオン
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＜ストーリー＞
母親の命日に集まったスオン（グエン・ニュー・クイン）、カイン（レ・カイ
ン）、リエン（トラン・ヌー・イエン・ケー）の３姉妹。３人はとても仲が良
く、何でも話し合っていた。そんなある日、三女リエンは恋人との仲に悩むよ
うになる。一方、長女のスオンと次女カインも、それぞれに悩みを抱えていて
……。
＜レビュー＞
ずっとミニシアターランキングの上位を占めてきたこの作品。東京では３ヶ月
以上に渡る公開も今週でようやく終了。一時の殺人的混雑もなくなったという
ので、遅ればせながら観てきました。 ``r(^^;)ポリポリ
監督は、『シクロ』『青いパパイヤの香り』などで知られるトラン・アン・ユ
ン。
「なんかフランス映画っぽいなぁ〜」と思う人も多いようですが、そりゃそう
だ。この監督、生まれはベトナムだけど子供の時に家族で亡命。それ以来、ず
っーとフランスで生活してきたわけですからね。この映画も当然フランス製で
す。
舞台はもちろんベトナム。で、主人公はスオン、カイン、リエンの３姉妹。
仲良しの３人は、母の命日にいつものように楽しく語り合う。
だが、そこで、母が本当に愛したのは父ではなく初恋の人トアンだったのでは
ないか、という疑惑が持ち上がる。両親を理想の夫婦としていた姉妹の心は乱
れる……。
前半の３姉妹の会話がとっても楽しいんですよねぇ〜。 (*^。^*)
細かなセリフまでキッチリ気配りされた、弾むような会話。ちょっとエッチな
ことなんかも混ぜて、お互いにオープンに話し合う。
そこで登場する亡くなった母親に関する疑惑は、その後の展開への伏線になっ
ています。
実は３姉妹とも、お互いに打ち明けていない大きな秘密があったのだッ！
長女スオンは、カメラマンの夫との仲がうまくいかず、しかも自分はある青年
と不倫関係にある。
また、次女カインは妊娠していることを知り、処女小説を執筆中の夫に打ち明
けるが、他の姉妹にはまだ内緒にしている。
さらに、三女リエンは、近所の幼なじみの青年と仲が良いが、最近はどうもギ
クシャクとした関係にある。
途中からは、こうした３姉妹それぞれの秘密や悩みが、少しずつ明らかになっ
ていきます。
ただし、けっして３姉妹に焦点を絞らず、彼女たちの夫や恋人など周囲の人々
の行動も丹念に描いていきます。
長女スオンの夫クオックには、妻同様にとんでもない秘密がある。
また、次女カインの夫は小説家の卵で、処女小説を書き上げようとしていたが
、最後の仕上げに行き詰まってスランプ気味。
そして、三女リエンは役者の卵の兄ハイと一緒にアパートに暮らしているが、
この２人の関係ってなんだかちょっとヘン!?（と思うのは僕の考えすぎ？）。
こういうたくさんの人の行動をかなり細かにスケッチしていくワケ。
つまり、一種の群像劇のような感じになっているんですヨ。
だから、いろんな話が次々に出てきて飽きることがない。その代わり、ちょっ
と散漫な感じもしちゃうんだけど、まあ、このあたりは仕方のないところでし
ょう。
この映画で僕がいちばん感心したのは、やっぱり映像ですね。
みずみずしくて情感にあふれた映像は、まるで美しい絵画のよう。特に色彩の
鮮やかさはもはやアートの域に達している。食べ物や雨、草花、口紅といった
細かなアイテムをうまく使って、息を飲むほど見事な映像に仕上げています。
(◎o◎)
それに加えて、ベトナム音楽だけでなく、ルー・リードなどの曲を効果的に使
った音楽もいいですねぇ〜。
そういう様々な要素が一体となって、独特のスタイリッシュな世界を生み出し
ています。
それにしても、これってかなりヘビーな内容ですよねぇ〜。不倫だの、妊娠だ
の、官能だのと、キツイ話が詰まっています。一歩間違えば、いまどき昼メロ
でもやらないドロドロの愛憎劇に突入だぁ〜！ (;°°)
なのにこの映画の語り口はとっても穏やか。最初から最後まで、ず〜っと静か
で温かみのある雰囲気が漂っているのだ。 (#^.^#)
これって、もちろん意識してやっていること（ラストのオチはかなりクサイけ
ど、あれもきっと計算しているんだと思うな。）。
おかげで、見終わってホッとして、穏やかな気分になれるんだよねぇ〜。心に
ジーンと染み渡る優しさ。それが、この映画の最大の魅力かもしれません。
というわけで、セリフ、映像、音楽、どれをとってもかなりポイントの高い映
画。無条件に素晴らしいぃ〜！！
と絶賛したいところですが、僕的にはちょっと違和感も感じちゃいました。
例えば、あんまり淡々とした語り口なので、「たまには暴走してみせろヨ〜」
とか途中で思ったりもしちゃったんです。まあ、これは個人的な趣味の問題。
それから、登場人物の行動（特に女の人の……）にイマイチ理解しにくいとこ
ろもありました。
三女リエンが、兄と一緒にいるところをカップルと間違われて喜ぶあたりの心
情も、僕にはよくわかりませ〜ん。あれって、いわゆるブラザー・コンプレッ
クスなのか？
うーん、これはもう少し女性心理に関する修行が必要かもしんないなぁ〜。
よし！ しっかり修行して、出直してきまッス！（て、何をするんだ？ コラ
ッ！）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）
（個人的な好みとはちょっとズレがあったので★の数はこんなもので……。そ
れでもかなり完成度の高い映画ですネ。劇場ではもうオシマイなので、ビデオ
で観てください。特に女性にはオススメかも。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2001年10月24日（水）ル・シネマ（１）にて。午前11時40分の回。