ゴールデンボーイ (APT PUPIL)
(1998年 アメリカ)(上映時間１時間52分)
製作・監督：ブライアン・シンガー
出演：イアン・マッケラン、ブラッド・レンフロ、ブルース・デイヴィソン、
エリアス・コーティアス、デビッド・シュワイマー
＜ストーリー＞
ロサンゼルス郊外に住む高校生トッドは成績優秀、スポーツ万能の優等生だっ
た。だが、ナチスのユダヤ人虐殺について勉強をするうちに、アーサーという
一人暮らしの老人が、実はアウシュビッツの副所長で戦争犯罪人だったことを
知る。トッドはそれをネタに老人を脅し、収容所の実態を聞き出すが……。
＜ストーリー＞
原作はスティーブン・キング。
いかにも彼らしい心理サスペンスを『ユージュアル・サスペクツ』でおなじみ
のブライアン・シンガーが映画化した。
どちらかというとオーソドックスな演出で、それがかえって原作の持つコワさ
を際立たせている。
老人から虐殺に関する話を聞いた少年が、少しずつ悪の魅力に取りつかれてい
く。ただの興味本位のはずだったのに、いつのまにか夢や幻覚まで見るように
なり、極限状態に追いこまれていく様子がうまく描かれている。
老人にナチスの制服を着せて、無理に軍人のように振る舞わせるサディスティ
ックな場面には、思わずゾッとさせられた。
そして、同時に老人も悪の世界に入り込んでいく。
迷い込んだネコをオーブンで焼こうとするシーンはちょっと唐突だけど、老人
の残虐性を浮き彫りにする効果はバッチリ。
そういえば、トッドが傷ついたハトを虐殺する場面もあるし、動物愛護団体か
ら抗議は来なかったのか？ （＾0＾)
やがて悪の世界に引き込まれたトッドの成績が急降下し、そこにつけ込んで今
度は老人が優位に立つ展開がおもしろい。
コイツらホンマにどっちもどっちや。救いようがない！ ┐（´−｀）┌
ただ、気になったのは、老人がトッドを脅す理由が弱いこと。
トッドが、過去のユダヤ人虐殺をネタに老人を脅かすのは納得できるけど、そ
れを黙っていたことをネタに老人がトッドを脅すっていうのは、ちょっと無理
があるなぁ。
だって、2人がやったことの重さって全然違うじゃん。トッドが「そんなことは
聞いちゃいない！」って言えば、それで終わっちゃうわけだしサ。
不満ついでにもう1つ言えば、全体にセリフで説明させる場面が多すぎる。特に
後半は、老人があるカラクリを長々とセリフで説明するけど、そこがとっても
つまらない。
その後の展開が何となく予想できちゃうし、流れもブツ切れになっちゃう。
ラストはあんなもんかなぁって感じで、驚きもなかったし、背筋かゾっとする
ような場面もナシ。
うーん、少年が悪に魅入られていく前半の展開に比べて、後半はちょっと苦し
かったな。
もっと大胆な演出で、スリリングにしたほうがよかったかもネ。
ってなわけで、それなりにおもしろいサスペンス映画にはなったけど、原作の
魅力にはやっぱり勝てなかった……。
鬼才ブライアン・シンガーでも、スティーブン・キングの厚い壁は乗り越えら
れず！？
《ぽちのおススメ度》
★★+1／2★
（老人役のイアン・マッケランと少年役のブラッド・レンフロの気味悪さ対決
が光る。でも、年の功でイアン・マッケランの一本勝ちってとこですネ。）
＜ぽち＞