グラディエーター (ＧＬＡＤＩＡＴＯＲ)
(2000年 アメリカ)(上映時間２時間35分)
監督：リドリー・スコット
出演：ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、オ
リバー・リード、リチャード・ハリス、デレク・ジャコビ、ジャイモン・ハンスゥ
＜ストーリー＞
西暦180年、大ローマ帝国。アエリウス・マキシマス将軍は、時の皇帝マルクス
・アウレリウスから次期皇帝の座を託すと告げられる。だが、それを聞いた皇
帝の息子コモドゥスは激怒。父を殺害し、マキシマスの処刑を命じたばかりか、
彼の家族まで殺害させる。どうにか生き延びたマキシマスは奴隷商人に買わ
れ、剣闘士として宿敵コモドゥスと再会するが……。
＜レビュー＞
★ぽち：男。「Ｃｉｎｅｍａの王国」編集発行人兼ライター
☆もも：女。「Ｃｉｎｅｍａの王国」ライター
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これだけのスペクタクル史劇は『ベン・ハー』以来かも。
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☆もも：わ〜い、私の好きなコスプレだヨ！ ｏ（＾ｏ＾）ｏウキウキ
★ぽち：コスプレっていっても、ローマ帝国だろ？ 古すぎてサ。時代考証が
合ってんのかどうかもわかんないゾ。
☆もも：そんなこと言ったら、ローマ人が英語しゃべってんのだってヘンじゃ
ん。細かいことは気にしない！
★ぽち：それにしても金かけてるなぁ。全部で１億ドル使ったんだってサ。１
ドルが105円として105億円！ １個100円のアイスが１億500万個も買
えるんだゾ！ いやぁ〜、映画の中身よりも、「このセットにいくら
かけたんだろう？」「この衣装はいくら？」なんてことばっかり気に
なっちゃいました。 (＾0＾)
☆もも：な、なんて、みみっちい……ウルウル。(T^T) コロシアムなんかの
セットはスゴイし、衣装も本格的。金があるならドンドン使っちゃい
ましょう。これだけのスペクタクル史劇は『ベン・ハー』（1959年）
以来かも。
★ぽち：最近じゃメル・キブソンの『ブレイブハート』（1995年）もスゴかっ
たけどね。
☆もも：でも、あれはアイルランドの話でしょ。悪いけど、やっぱり日本人に
とってはローマ帝国のほうがなじみがあるんだよネ。それに、なんた
ってオープニングからド迫力。ラッセル・クロウ扮するマキシマス将
軍率いるローマ帝国軍がゲルマニア軍と戦うんだけど、森の中での戦
闘シーンは最近の映画にはないスケールの大きさ。
★ぽち：つくだ煮にできるぐらいたくさんの兵士が登場！ 泥だらけになって
闘う姿は壮絶デシタ。だけど、なんかちょっとエグかったなぁ。生首
ビューン！ 血しぶきドバッ！ 日本映画の合戦シーンとは大違い。
☆もも：しょうがない。何たってヤツラは狩猟民族で肉食人種なんだもん。だ
いたいグラディエーター（剣闘士）同士を死ぬまで闘わせて喜ぶなん
て、日本人にはない発想かも。でもさ、この当時って、日本じゃやっ
と卑弥呼の時代なんだよネ。それを考えるとスゴイよね。
★ぽち：日本でも、邪馬台国を舞台にしたスペクタクル映画を作らんかい！
卑弥呼は藤原紀香なんてどう？ 缶チューハイ飲んで踊る卑弥呼。イ
チ、サン、パッ！ (＾0＾)
☆もも：バカ言ってんじゃないの！ スケールが違いすぎる。とにかく、戦い
はローマ軍の大勝利。マキシマス将軍は正真正銘のスーパーヒーロー
なのだ。そこにホレ込んで、マルクス・アウレリウス皇帝が彼を後継
者にしようとする。でも、皇帝の息子コモドゥスは、自分が後継者に
指名されると確信していたからおもしろくない……。
★ぽち：コモドゥス役のホアキン・フェニックスが、屈折したバカ息子の役を
うまく演じていたゾ。そういえば、彼は亡きリバー・フェニックスの
弟。よくまあこんなに立派になって。お兄さんはうれしいよ！
☆もも：誰がお兄さんだって？ (▼、▼メ)
★ぽち：(^。^;) い、いや、別に深い意味は……。でも、彼が皇帝を殺した
あとで、マキシマスだけじゃなくて彼の妻や子供も殺害させるだろ？
そこまで残虐なヤツなのにあんまりそういう性格が伝わってこないん
だなァ。
☆もも：ただ残虐なだけじゃなくて、彼はファザーコンプレックスとシスター
コンプレックスのダブル。なんせ父親は五賢帝の最後で「哲人皇帝」
と呼ばれた偉大な男。姉もその父をして「お前が男だったら」と嘆か
せるほどの女傑。かわいそうだよね。そりゃ、ズルくて小心者にもな
るワ。尊敬する父の愛をマキシマス将軍に奪われたと思い込んで、激
しく嫉妬するわけ。だから、マキシマスと家族を全部殺しちゃおうと
する。
★ぽち：マキシマス自身はどうにか逃げ延びるけど、彼が家族のもとに駆け付
けた時にはもう間に合わなくて……。
☆もも：マキシマスが地獄を見た瞬間。彼の悲痛な叫びが胸に突き刺さるなぁ
。 (;＞_＜;)
★ぽち：でもさぁ、彼の悲しみや絶望の深さは、そんなに感じられなかった。
だって、すぐに捕まって奴隷になっちゃうんだから。荒野をあてもな
くさまようとか、自分も死のうとするとか、もう少し彼の心の傷をて
いねいに描いて欲しかった。
☆もも：そうかな。彼のその後の行動の動機づけとしては、それなりに描けて
いたと思うけど。
★ぽち：いきなり襲われて、気がついたらオリの中ってのはちょっと……。奴
隷仲間の黒人が「家族にはいつかあの世で会える」なんて言って慰め
てたけど、そんなもんで慰めになるかい！
☆もも：でも、そのセリフがラストで生きてくる。悲しいけど、とっても穏や
かでホンワカしたラスト……。
★ぽち：おっと、ラストはまだまだ先。その前に激しい闘いが展開されるんだ
から。
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戦車隊と闘うマキシマスの戦略がスッゴクおもしろい！！
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★ぽち：奴隷になったマキシマスは、奴隷商人プロキシモに買われて、グラデ
ィエーターにさせられる。円形の闘技場に放り込まれて剣と楯を持っ
て闘うんだ。
☆もも：あとで出てくるローマの巨大コロシアムもスゴかったけど、ここの闘
技場のセットがスゴかった。最近の映画ってみんなＣＧ使いまくりで
しょ？ 「これでもか！」って感じで。でも、この映画では、巨大な
セットとＣＧをうまく組み合わせて使っているから、そんなにウソっ
ぽい感じがしなかったな。
★ぽち：全部ホンモノみたいで違和感がないんだよね。たぶん実際はセットは
一部だけで、あとはＣＧで処理してると思うんだけど。そうそう、ラ
イオンさんやキリンさんも登場します。ほとんど動物園状態！？
☆もも：グラディエーターのバトルも迫力あったなぁ。マキシマスの"闘う男"
としての本能を発揮して連戦連勝。観衆から歓声を浴びる存在になっ
ていく。でも、彼が闘う理由がちょっと弱い。
★ぽち：どういうこと？ 彼は、生きるために闘っているんだろう？ 奴隷と
して生き延びるために仕方なく……。
☆もも：それにしちゃあ、ずいぶん生き生きとしてたじゃない。「仕方なく」
って感じでもなかった。
★ぽち：だけど、闘いのあとで観客に向かって、「こんなことをして何がうれ
しいんだ！」みたいなことを言ってたじゃない。本当は闘いたくなか
ったんだヨ。意味のない闘いはしたくなかったんだ。
☆もも：うーん、そこまで平和主義者だとは思えない。だいたいローマ帝国の
領土拡大の先頭に立って戦争してたんだから。そのへんがどうもわか
りにくいゾ。いったい彼は何のために闘ってるの？ グラディエータ
ーになってからは、殺す快感を味わっているようにも見える。
★ぽち：まあ時代が時代だし、単純な平和主義者ってことはないだろうけどサ
。どっちにしても、彼が死んじゃったらこの映画終わっちゃうんだか
ら……。生き残ったマキシマスは、今度はローマに連れていかれるん
だ。
☆もも：ローマのコロシアムでの闘いはおもしろかった。鎖につながれた２人
がタッグを組んで他のチームと闘ったり、どう猛なトラが囲む中で１
対１で対決したり……。
★ぽち：でも、あのトラに襲われそうになるシーンはＣＧ見え見えだった。
☆もも：あそこを実写だけでやったら、ホントに死人が出るって。 (^。^/)
★ぽち：戦闘用の馬車と戦うところも迫力あったよネ。
☆もも：マキシマスたちが蛮族に見立てられて、ローマ軍に見立てられた戦車
隊と闘うの。本当はローマ軍が勝つはずなのに、マキシマスの見事な
指揮でグラディエーターたちが勝っちゃう。「みんなかたまれ！」と
か「ダイヤモンドの形になれ！」とか。そういう戦略がスッゴクおも
しろかった。ｏ（＾−＾）ｏ
★ぽち：まあ、実際にあんなこたぁないだろうけどサ。武器を積んだ戦車に勝
てるわけないヨ。フン！ (｀ヘ´)
☆もも：夢がないヤツだなぁ。そういう次元の話じゃないの！ 大観衆の熱気
も加わって、とにかくスリリング！ さすがにリドリー・スコット監
督。アクションシーンはああでなくっちゃ。
★ぽち：その闘いを現皇帝のコモドゥスが見てるだろ。それで、仮面をかぶっ
たマキシマスに近づいて名を尋ねる。マキシマスは……。
☆もも：「私はグラディエーター」。そして、仮面を脱いで素顔を見せる。
★ぽち：もちろんコモドゥスは超ビックリ！ だって、マキシマスは死んだと
思ってたんだから……。でも、なんで彼はマキシマスを殺さない？
そのあとも、何度も殺すチャンスはあったわけじゃん。相手はオリの
中の奴隷なんだから。
☆もも：マキシマスに民衆の支持があったからよ。コモドゥスには何の軍功も
なくて、親よりも劣っているということは自分でも痛いほどわかって
いる。だから、よけいに民衆の動向が気になる。
★ぽち：ふーん、権力者の気持ちって複雑。
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ラッセル・クロウは何の役にもハマっちゃう
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☆もも：私は、逆にマキシマスが皇帝を殺さなかったのが不思議。コモドゥス
皇帝が挑発する場面があるじゃない。妻や子供を殺した憎い相手にあ
んなこと言われたら、その場で殺したっておかしくない。
★ぽち：最初は私的な恨みだったけど、そのうちにそれだけじゃなくなったん
じゃない？ このままローマ帝国を放っておけない。私的な恨みでコ
モドゥスを殺すんじゃなくて、公的に彼を権力の座から引きずり下ろ
すしかない。そう思ったんじゃないかな。
☆もも：たかが奴隷のグラディエーターがどうやって？ だいたい、それを感
じさせる場面って全然なかったじゃん。
★ぽち：マキシマスが元老院の議員と手を結ぼうとするだろう。コモドゥスを
倒したら、自分は権力にはつかずに田舎に引っ込むって言って。カッ
コ良かったなぁ。あれこそローマ帝国の行く末を心配していた証拠だ
ぜ。
☆もも：いきなり元老院の議員と手を結ぼうとするのは不自然。マキシマスが
ローマ帝国をどういう国にしたいのかわからないし、手を結ぶ相手の
議員が何をしようとしているのかも？？？ だいたい議員たちって民
衆をバカにしてたじゃない。権力を握ったら、コモドゥスより悪くな
る危険性もある。だから、自分は権力につかないっていうのも、一歩
間違えばただの無責任男だゾ。
★ぽち：うーん、まあ確かにそのへんはツッコミ不足って感じもするけど。コ
モドゥスの姉のルシラが仲介したってこともあるし……。
☆もも：それもよくわかんない！ マキシマスと彼女は元恋仲だっていうんで
しょ。でも、いくら将軍とはいえ農民出身のマキシマスと皇帝の娘が
どうやって知り合った？ どういうつきあいをしていた？ そのへん
の説明がないから、ルシラの子供が出てきた時には、「もしかしたら
この子はマキシマスの子？」なんてことまで考えちゃった。
★ぽち：そりゃあ、考えすぎっていうもんです。 (＾0＾)
☆もも：でも、いかにも意味ありげに対面してたじゃない。まるで父と子みた
いに。
★ぽち：だから、考えすぎだって！ ただ、２人の関係がわかりにくかったの
は事実。そこまで深く描く余裕はなかったのかもネ。それにしても、
今回は＜ぽち＞が文句言うつもりだったのに、やっぱり＜もも＞ちゃ
んに負けちゃいましたぁ〜。ヤレヤレ ┐（´−｀）┌
☆もも：いやいや、でもけっこう楽しかったヨ。ラストシーンもよかった。
★ぽち：マキシマスとコモドゥスの最後のバトル。ああいうシーンは最後の最
後まで見応えがあった。その結末は……。
☆もも：シー！ それはまだ観てない人のために黙ってましょう。とにかく、
マキシマスが英雄になってハッピーエンド、なんてラストじゃなかっ
たのは正解！ ただコモドゥスがね……。もうちょっと、小心者であ
るがゆえの恐ろしさを出して欲しかったな。でも、ちょっとだけラス
ト言わせて。あの扉……。扉の向こうには、ああ……。（やっぱり黙
っていようっと）
★ぽち：主演のラッセル・クロウはどうだった？ 彼がこんなに肉体派の演技
をする人だなんて思わなかったけど。
☆もも：抑えた演技が、かえって怒りや絶望をうまく表現していたと思う。な
んか、昔のチャールトン・ヘストンみたい。クラシックな雰囲気が似
合うなぁ。この人、ホントに何の役にでもハマっちゃうネ。
★ぽち：『Ｌ．Ａ．コンフィデンシャル』とも『インサイダー』とも全然違う
役だもんネ。なんか、相当体重を落として、本格的なトレーニングを
したらしい。そういえば、最初この役はメル・ギブソンがやることに
なってたんだって。
☆もも：それじゃあ、『ブレイブハート』パート２じゃん。(＾０＾)
★ぽち：メルもラッセルもオーストラリア育ち。広大な大地がいい役者を育て
る！？
☆もも：結論としては、人間関係がよくわかんなかったのと、マキシマスの考
えが理解しにくいところがあったのを除けば、かなり楽しめる映画。
何といっても、戦争シーンや闘いの場面がスゴい！
★ぽち：コスプレ好きな＜もも＞ちゃんほどじゃないけど、僕もけっこう楽し
めた。でも、細かな人間ドラマなんかに期待しちゃダメ。戦闘シーン
やバトルアクションを楽しむ映画だよネ。そういう意味じゃ、「これ
は2001年の『タイタニック』だ！」っていうニューヨーク・ポストの
評価は当たってるかも……。
《ぽちのおススメ度》
★★★
（やっぱり大きなスクリーンで観るほうがいいと思うな。迫力が違うもん。）
《もものおススメ度》
★★★
（昔の映画『ベン・ハー』や『クレオパトラ』がつくられた時とは、時代が違
うんだなァとしみじみ感じた。そうそう、音楽も良かったデース。