グリーン・デスティニー (臥虎蔵龍)
(2000年 アメリカ・中国)(上映時間２時間)
監督：アン・リー
出演：チョウ・ユンファ、ミッシェル・ヨー、チャン・ツィイー、チャン・チ
ェン
＜ストーリー＞
伝説の名剣グリーン・デスティニー（碧名剣）の使い手の剣豪リー・ムーバイ
（チョウ・ユンファ）が引退を決意。だが、献上したその剣が何者かに盗まれ
てしまう。リーとその女弟子ユー・シューリン（ミッシェル・ヨー）は剣の行
方を追い、師匠の敵でもある女賊のジェイド・フックスを追い詰める。だが、
そこに彼女の弟子で長官の娘イェン（チャン・ツィイー）が現れて……。
＜レビュー＞
こらこら、鳥じゃないんだからサ。
人間があんなに飛ぶわけないでしょーが！！ (＾0＾)
というわけで、バカバカしいのは確かだけど、そんなことを忘れさせるぐらい
スゴイ迫力のアクションシーン。
香港映画ではおなじみのワイヤー・アクションはもちろん、ＣＧなんかも駆使
してブッ飛びの映像をつくり出している。
闘う２人の細かな足の動きのアップなどカメラワークもユニーク。
『マトリックス』のユエン・ウーピンがアクションを担当しているだけあって
、最近にないスリリングなアクションシーンの連続だ。
でも、この映画の見どころはアクションだけじゃない。
剣豪リー・ムーバイとその女弟子ユー・シューリンの秘めた恋、長官の娘イェ
ンと砂漠の盗賊ローの激しい恋、そして彼らの対立と和解……。
４人の男女の人間ドラマがていねいに描かれている。
いくらアクションがスゴクても、それ以外のドラマがつまらない映画は魅力が
半減してしまう。
その点、この映画は登場人物の微妙な感情まできちんと表現しているから、ド
ラマとしての見応えもたっぷりだ。 (^-^)
前半は、引退を決意した剣豪リーが献上した名剣グリーン・デスティニーが盗
まれてしまい、リーとユーがそれを探してジェイド・フォックス（碧眼狐）と
いう女賊を追う展開。
いわば犯人探しから始まるわけだが、なんと盗みの実行犯がバレバレ。女賊の
弟子でもある長官の娘イェンが犯人だとすぐにわかっちゃう。
覆面なんかしたって、あの目を見たら一発だもん。人をバカにするんじゃあり
ません！！ (｀ヘ´) フン
とマジで怒ったのだが、何のことはない。実際は犯人探しのドラマなんかじゃ
なかったのだ。
早いうちにイェンの正体を明らかにして、そこから名剣にまつわる人々の人間
模様を描き出すという仕組み。バレバレなのは監督の計算通りだったわけ。
クー！ 怒ったりして損したゾ。
だから、問題のグリーン・デスティニーも意外に早く戻ってくる。
ところが、親が進めた意に沿わない結婚を嫌ったイェンが、かつて砂漠で知り
合った盗賊のローを慕い、再びグリーン・デスティニーを盗み出して家出をす
る。それを追跡するリーとユー……。
このあたりで気になったのは、イェンとローの出会いの場面がちょっとクドイ
こと。全体の流れの中でちょっと突出した感じなのだが、もしかすると、これ
は２人の激しく荒々しい恋を強調することで、リーとユンの秘めた恋を浮き彫
りにする効果を狙ったのかも。これって、深読み？
後半は、またまた迫力満点のアクションシーンが何度も登場する。
特にスゴイのが、いろんな武器を使ってくり広げられるユーとイェンの女同士
の激しいバトル。
そして、リーとイェンの竹林でのバトルもユニークだ。これは香港の武侠アク
ションの巨匠故キン・フー監督の「女侠」という作品に出てくるシーンで、彼
を尊敬するアン・リー監督からのオマージュだとか。
ドラマの最後には、大きなヤマ場がもう１つ用意されている。
まだ観ていない人のために詳細は言わないけれど、とっても悲しい場面だ。ラ
ブ・ロマンスの結末としてはありがちな展開なのだが、そこまでの持っていき
方がうまいから思わず納得してしまう。
ただラストが漠然と終わってしまったのは残念だな。幻想的で美しい終わり方
には違いないけれど、話の流れから言って、もうちょっときっちりした終わり
方をして欲しかった。
最初、アン・リー監督がアクション映画をつくったと聞いて、どうもピンと来
なかった。『ウェディング・バンケット』やイギリスで撮った『いつか晴れた
日に』といった感情表現豊かな人間ドラマを得意にする彼が、カンフー・アク
ションだなんて……。
でも、それはリー監督自身にとっては自然なことだったらしい。台湾出身の彼
は、子供の頃、キン・フー監督の作品のような香港映画を観て、中国大陸に思
いをはせたという。
一見、アクションとは関わりがないように思える監督にまで、香港アクション
の魂は深く浸透している。中国の人々にとって、この手の映画は特別な存在な
のだろう。それがとってもよくわかる作品だ。
おまけにアクション映画と言っても、彼本来の持ち味はドラマ部分できちんと
発揮されている。
だから、アクションが好きな人は、とっても中身の濃いアクションシーンが楽
しめるし、人間ドラマが好きな人は、２組の男女の対照的な愛の物語が楽しめ
る。
そういう意味で、実にお得な映画といえるかもネ。
俳優陣では、長官の娘イェン役のチャン・ツィイーがいいなぁ。はねッかえり
で生意気だけど、かわいくて繊細な少女の雰囲気がよく出ていました。今後に
注目！（近々、彼女のデビュー作、チャン・イーモウ監督の『初恋のきた道』
も公開されるはず）
でも、僕的にはユー役のミッシェル・ヨーが一番。『トゥモロー・ネバー・ダ
イ』でボンド・ガールになった女優さんですが、体を張ったアクションはもち
ろん、リーやイェンに対する複雑な感情を表現しているところも素晴らしかっ
た。強くてやさしいステキなお姉さんデス。憧れちゃうなぁ〜。 (*^^*)
あ、そうそう、チョウ・ユンファはさすがに貫禄ですね。黙って立ってるだけ
で絵になるのは、彼と上野の西郷さんぐらい！？ (＾。^/)
《ぽちのオススメ度》
★★★
(チョウ・ユンファ45歳、ミッシェル・ヨー36歳、それであれだけのアクション
をこなしますか……。僕も頑張らなくっちゃ！！)
＜ぽち＞