グリーン・マイル (THE GREEN MILE)
(1999年 アメリカ)(上映時間3時間8分)
監督・脚本:フランク・ダラボン
原作:スティーヴン・キング
出演:トム・ハンクス、マイケル・クラーク・ダンカン、デヴィッド・モース、
ジェームズ・クロムウェル、ダグ・ハッチソン、バリー・ペッパー、ハリー・ディーン・スタントン
<ストーリー>
大恐慌時代の1935年、ポール・エッジコムが看守を務める刑務所に、ジョン・
コーフィという黒人死刑囚が送られてきた。その巨体と2人の少女殺しの犯人
という経歴とは裏腹に、暗闇を恐がる心優しい男だった。ある日、彼はポール
の病気を不思議な能力で治してしまう。ポールは次第に彼に引きつけられるよ
うになり、脳腫瘍を患う刑務所長の妻を治療させようとするが……。
<レビュー>
★ぽち/男。「Cinemaの王国」編集発行人兼ライター。
☆もも/女。「Cinemaの王国」ライター。
「ますます首がなくなってるぞ! トム・ハンクス」
★ぽち:ネズミと超能力者の出てくるオカルト映画デス。(^0^)
☆もも:コラコラ、そんな強引なまとめ方をするんじゃない!
★ぽち:でも、素材はせいぜいそんなもんじゃない? とても3時間ももつと
は思えないゾ。舞台だってほとんど刑務所の中だけだし。
☆もも:あら、私はちっとも長く感じなかった。観る前は3時間って聞いて、
ちょっとビビッてたんだけど、あっという間だったな。
★ぽち:そうなんだよ! 素材は大したことないのに、3時間全然飽きさせな
いんだよ。どうしてかな?
☆もも:脚本も、演出も、役者もいいからよ。特に感心したのが伏線の張り方
。冒頭で老人になったポールが、老人ホームの食堂で冷えたトースト
をねだるんだけど、それがどうしてかがラストになってわかるの。あ
のあたりの構成がうまい!(^^)//゛゛゛パチパチ
★ぽち:全体が年をとったポールの回想っていうスタイルになってるんだよね
。それをスゴク効果的に使っている。フレッド・アステアとジンジャ
ー・ロジャースの映画『トップ・ハット』の使い方なんかもよかった
なぁ。
☆もも:役者では、やっぱり4人の看守たち。ほら、アメリカの看守っていう
と、『告発』(1994年/監督:マーク・ロッコ/出演:クリスチャ
ン・スレーター、ケビン・ベーコン、ゲイリー・オールドマン)みた
いにとんでもないヤツばっかりって感じだけど、今回はそうじゃなか
った。
★ぽち:トム・ハンクスのポールは職務に忠実で、人間味にあふれた男。今時
ああいう人ってめったにいないな。
☆もも:まあ、今から70年近く前の大恐慌時代の話だから。それにしても、ト
ムはどうしたの? すっかり中年太りで、ますます首がなくなってた
ゾ。あれは役づくりのため?(^0^)
★ぽち:ひたすらコネを振りまわす悪役のパーシーもよかった。演じるダグ・
ハッチソンは『評決のとき』(1996年/監督:ジョエル・シュマッカ
ー/出演:マシュー・マコノヒー、サンドラ・ブロック、サミュエル
・L・ジャクソン、ケビン・スペイシー)で、少女を強姦してたんだ
って。レイプ犯から看守に華麗な転進か!?
☆もも:いるいる、ああいうヤツ。劣等感の裏返しで意地悪しちゃうの。個人
的趣味でいうと、ブルータス役のデヴィッド・モースがよかったナァ
! 気は優しくて力持ち、男気にあふれてて……。うーん、タイプだ
わ。o(^o^)oウキウキ
★ぽち:デヴィッド・モースは、『交渉人』(1998年/監督:F・ゲイリー・
グレイ/出演:サミュエル・L・ジャクソン、ケビン・スペイシー)
なんかで活躍してたそーです。
☆もも:そのほかの看守や刑務所長も、みんな個性がはっきり出ていてよかっ
たわ。『ベイブ』シリーズに出てたジェームズ・クロムウェルなんか
もね。これだけしっかりしたキャスティングの映画は、めったにない
んじゃない?
★ぽち:忘れちゃいませんか。もう1人、いや1匹の名優を。
☆もも:ミスター・ジングルズ! ネズミね。
★ぽち:あれ、ほとんど実写なんだって。アニマル・トレーナーに仕込まれた
んだろうけど、かなりの名演技。巨漢の死刑囚コーフィ役のマイケル
・クラーク・ダンカンがアカデミー助演男優賞にノミネートされたけ
ど、僕はこのネズミもノミネートして欲しかった。(^0^)
☆もも:ホント可愛かった。でも、ネズミはやっぱりネズミだからねぇ。物語
の本筋はコーフィの話なのに、彼の超能力が登場するのが遅くてジラ
されちゃった。(○`ε´○)
「コーフィは神の使いか? 普通の人か?」
★ぽち:その超能力だけどさ、あそこがこの映画で唯一の派手なところ。SF
Xを使ってたのも、あの場面ぐらいだろ。
☆もも:超能力を使った後で、コーフィが口から紙ふぶきみたいなのを吐くで
しょ。あれってマンガチック。あそこまでやんなくてもよかったんじ
ゃない?
★ぽち:でもなぁ、『X−ファイル』や『ミレニアム』で鍛えられたアメリカ
の観客には、あれぐらいやんないと超能力って気がしないんだよ、き
っと。(^0^)
☆もも:そのマンガチックさを超える感動があるからいいけどね。
★ぽち:最初はポールのひどい尿路感染症を治すだろう。次は、いじわるな看
守パーシーが踏みつぶしたミスター・ジングルズを生き返らせる。ど
う考えたってあり得ないことで、最初は「ウソだろ!」って思うんだ
けど、そのうちに気にならなくなってくるんだよね。
☆もも:コーフィがただの超能力の使い手じゃないからよ。他人の痛みや苦し
みがわかるだけでなく、それを自分も受けてしまうのよね。だから、
病気に苦しんでいる人がいれば、心から助けたいと願う。その願いが
超能力って形で現われるんじゃないかな。
★ぽち:自由に超能力を操るんじゃなくて、あふれる思いが超能力になって出
てくるって感じだね。だから、それが殺人に使われることもある。
☆もも:コーフィが自分の事件の真犯人を、人を使って殺させる。あそこはい
かにもスティーヴン・キングって感じ。いいことばかりじゃなくて、
ちゃんと毒気もある。
★ぽち:それだけコーフィの怒りが強かったってことだよ。ただ、彼が無実じ
ゃないかって看守のポールが思い始めるけど、観客はそれよりも前に
彼の無実を確信しちゃうんだよね。そこはちょっと残念だったな。
☆もも:そう? 私は、あんまり気にならなかったけど。
★ぽち:ポールがコーフィの弁護士のところに行くじゃない。『フォレスト・
ガンブ/一期一会』(1994 年/監督:ロバート・ゼメキス/出演:
トム・ハンクス、サリー・フィールド)にも出てたゲイリー・シニー
ズが弁護士役でさ。コイツったら弁護士なのに、コーフィがクロだっ
て信じてるんだ。しかも、黒人を蔑視してる……。このエピソードで
逆に「コーフィは無実だ!」って確信しちゃったゾ!
☆もも:私はあのシーンはいらないと思う。ゲイリー・シニーズをゲスト出演
させるためだけの役って感じで。まあ、でも、あのエピソードもコー
フィが孤独なんだってことを表すためのものかもね。コーフィはあん
なに他人の気持ちがよくわかるのに、誰も味方がいなくて、たった1
人で生きているんだもん。かわいそう……。(・・,)グスン
★ぽち:要するに彼は神の使いなんだろ? あんまりひどい世の中なのを見た
神が、奇跡を起こす彼を地上に送ったんだ。だから、地上で孤独なの
は仕方ないんだよ。
☆もも:あら、私は彼は普通の人間だと思うわ。それが、たまたま不思議な能
力を持っちゃったために、あんな運命をたどったの。だから、なおさ
ら感動できるのよ。
★ぽち:そうかな? それにしちゃあ人間離れし過ぎてる。処刑を前にして「
俺の望みはすべてを終わらせることです」なんて言う?
☆もも:だから、普通の人間なんだけど、普通じゃないの。
★ぽち:何じゃ!? そりゃ。(・_・?)
☆もも:本当は普通の人間なのに、望みもしない不思議な力を与えられてしま
ったのよ。与えられたのはいいけど、その力をどう使っていいかわか
らない。「なぜ自分に?」って苦しむの。だから、「人々がお互いに
傷つけあうのに疲れた。この世界から感じられ、聞こえてくる苦痛の
叫びに疲れたんです」ってセリフが出てくるんだと思う。
★ぽち:そ、そういうもんスか?
☆もも:コーフィってキャラクターは、キリストを下敷きにしているんじゃな
い? キリスト教で彼がどういう位置付けかはともかく、私は彼は少
なくとも人間として生きている間は、普通の人間だったんだと思う。
でも、他人の痛みや苦しみがわかっちゃったために、それを救いたい
と考えていろんなツライ目にあったのよ。弟子にも裏切られて孤独で
、罪もないのに人々の憎しみやあざけりを受けて死んでいくところま
で、コーフィそっくり……。
★ぽち:「コーフィ=キリスト説」か。なんかスゴイことになってきたゾ。読
者のみなさんはどう思いました?
「スピルバーグが4回泣いたのはネズミ好きだから?!」
☆もも:あのコーフィの果てしない絶望と孤独にはすごく感じるものがあった
。それでも、処刑を前にしてようやく心が通じ合う人ができたことが
救いかな。
★ぽち:看守たちだね。処刑までの展開は、ホント涙なしには観られないゾ!
まだ観てない人は覚悟!
☆もも:それに看守の奥さんの病気を治すために、作戦を練って決行するとこ
ろなんかもハラハラドキドキ。
★ぽち:そういうスリルあるシーンもちゃんと用意されてるね。
☆もも:ラストも意外な展開でおもしろかった。ただ、そこでポールの孤独を
描いてるんだけど、コーフィに比べるとちょっと弱いかなって気がし
たな。
★ぽち:僕はネズミがちょっと恐かった。だって、計算したらあのネズミ60歳
超えてるゾ! ゾンビじゃ〜! (゜〇゜;)グェッ
☆もも:最後にあった「人はそれぞれのグリーン・マイルを歩いている」って
いう言葉が良かったなぁ。そうなのよ。みんないつかは死ぬわけだか
ら、その日まで一生懸命頑張らなくっちゃ!
e(^。^)g_ファイト!!
★ぽち:わかっちゃいるんだけどさ〜。なんかダルくってさ〜。
☆もも:人がその気になってんのに、いきなり休憩すんじゃない!
★ぽち:エライすんまへん。それにしてもこの映画、やっぱり死刑廃止を訴え
てるのかな。だから、保守的なアカデミー賞を取れなかったのかも。
☆もも:アカデミー賞ってスティーヴン・キングが嫌いなんじゃない?あるい
は原作がホラーだからバカにしてるとか。
★ぽち:処刑場面はけっこうリアルで残酷だったけど、『デッドマン・ウォー
キング』(1995年/監督:ティム・ロビンス/出演:スーザン・サラ
ンドン、ショーン・ペン)みたいに真正面から死刑廃止を訴えてるわ
けじゃないしね。
☆もも:でも、あのフランス人の死刑囚の処刑シーンは、あまりにムゴくて正
視できなかった。あれだけでも「死刑はちょっとな」って思わせる。
強いメッセージ性はなかったけど、ジワッとくるのよね。計算されし
尽くした曖昧さっていうか……。そこが物足りない人もいるみたいだ
けど。
★ぽち:死刑場面で気になったのは見物人の多さ。電気椅子の前に被害者の遺
族はもちろん、そのご近所サンみたいなのまで集まってる。あれって
やっぱり「目には目を……」っていう復讐心なのかな。
☆もも:まあ、ずっと昔の話だからね。今ならあそこまで極端じゃないでしょ
うけど。
★ぽち:日本じゃ考えられない。西部開拓時代に、みんなの前で縛り首にした
のと同じ感覚かも。
☆もも:直接じゃないけど、死刑についていろいろ考えさせてくれるわね。
★ぽち:ねぇ、スピルバーグはこれ観て4回泣いたらしいけど、何回泣いた?
☆もも:私は2回。でも、泣いたというより、ウルウル程度だからね!
★ぽち:<もも>ちゃんにも、そういう繊細な感情があったか……。
(T^T)ウルウル
☆もも:くだらないことに感激してんじゃない!
★ぽち:それにしても、スピルバーグの4回はスゴイ。
☆もも:もしかしてネズミに感動して泣いてたんじゃない? ほら、『インデ
ィー・ジョーンズ』にもネズミがウジャウジャ出てくる場面があった
でしょ。メイキングの番組を見た時、大量のネズミの横でウレシそう
な顔をしてたもん。ネズミ好きだよ、きっと。
★ぽち:うーん、「コーフィ=キリスト説」に「スピルバーグのネズミ好き疑
惑」。今日は、実りの多いバトルトークでした。
☆もも:コラ! どこに感動してる!
《ぽちのおすすめ度》
★★★★
(あんなに幅広い客層が3時間スクリーンに引き込まれていた。これはスゴイ
!)
《もものおすすめ度》
★★★★
(寝不足と疲労の最悪のコンディションだったにもかかわらず、眠らせてくれ
なかったほどおもしろかった!)