花とアリス
（2004年 日本）（上映時間２時間15分）
監督・脚本：岩井俊二
出演：鈴木杏、蒼井優、郭智博、相田翔子、阿部寛、平泉成、大沢たかお、広
末涼子
＊日比谷スカラ座２ほか東宝系にて全国公開
ホームページ http://www.hana-alice.com/
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＜ストーリー＞
高校生になったばかりのハナ（鈴木杏）は、落語研究会に所属する先輩の宮本
（郭智博）に恋していた。ある日、宮本が頭を打って気を失う場面に遭遇した
ハナは、目を覚ました彼に「私に告白したことを忘れたんですか？ 先輩、記
憶喪失になったんです」と告げる。それがきっかけでハナは宮本に急接近する
が、同時に幼なじみで仲良しのアリス（蒼井優）との関係は微妙に変化してい
く……。
＜レビュー＞
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２人の少女の日常をみずみずしく描写。詩的な映像は必見
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岩井俊二ってうまいよなぁ〜。少女たちの繊細さを描くのが。
もともとウエブで配信されていたショートフィルムをもとにつくったこの映画
でも、２人の女子高生のみずみずしい日常を切り取っています。
幼なじみのハナとアリスは、どこにでもいるような女の子。
駅で見かけた男の子が気に入って、尾行して写真を撮っちゃったりします（ど
こが普通やねん！ でも、まあせいぜいその程度）。
宮本っていうその男の子を最初に気に入ったのはアリス。でも、高校に入学す
る頃にはすっかり忘れて、今度はハナが彼を好きになる。そして、彼に接近す
るためにとんでもないことを仕掛ける。それがきっかけでハナとアリスの関係
は……。
とにかく繊細で生き生きとした描写が素晴らしい！ (*^_^*)
２人の少女の息づかいまで伝わってくる感じがします。
もう映像がキレイ過ぎです。光と影をうまく使った詩的な映像で、少女たちの
心の中を映し出していくんです。
２人が習うバレエに関するシーンも効果的に使われています。
もともとウエブで配信していたせいか、アクセントにお笑いネタが多いのも特
徴。ルー大柴、アジャ・コング、叶美香、テリー伊藤といったクセのある人を
チラリと出して、観客を笑わせてくれます。アリス特製"おにぎりサンド"も笑
えますヨ〜〜。 (＾0＾)
ただし、つくり過ぎの感じがするのがちょっと気になる。
特に本筋で記憶喪失の話が出てくるのだが、これがなんだかねぇ〜。恋愛にま
つわる記憶というテーマは岩井監督得意のテーマだし、今回も「記憶の曖昧さ
をついたウマイ設定！」と言いたいところだが、あまりにもムチャなので引い
てしまいました。 (~ヘ~)
たいたいわかるでしょッ！ あんな単純なウソ。「信じられないかもしれない
けど」って劇中で言うのは言い訳か？
岩井俊二の才能を持ってすれば、ここまでムチャな設定にしなくても、２人の
女子高生の恋心とビミョーな関係を、きちんと描ききることができたと思うの
だが……。
それに、ハナが好きになる宮本クンにあんまり魅力が感じられないのもツライ
ところ。これってボクが男だからそう思うだけですか？ (・_・？)
それでも、青春の日々の描写はそれを上回る素晴らしさです。
なんたって印象に残るシーンがワサワサあります。
たとえばアリスが離婚した父親と会うシーン。どこかギクシャクしながらも父
への愛が感じられて、胸がグッとなりました。駅で別れる時の「ウォー・アイ
・ニー」「サイチェン！」がいつまでも忘れられません。 (#^.^#)
シビアな話をするハナと宮本クンの向こうで、巨大な鉄腕アトムのバルーンが
揺れているなんてシーンは、緊張と弛緩が見事に調和して「うーむ」と唸って
しまいました。
そして、そして、この映画で一番美しかったのが、ラスト近くのアリスのバレ
エ・シーン。即席のトゥーシューズで、制服のまま踊るんだけど、これが実に
きれいなのよ。息を飲むほど美しいのよ。一歩間違えばパンチラのエロい映像
になりそうだけど、絶対にそうはならないんです。ああいう年頃にしかない輝
きみたいなものを、鮮やかに表現し尽くしています。 (T^T)
そのアリスを演じたのは蒼井優。ある意味、この映画は彼女のための映画かも
。そのぐらい魅力的でした。前にテレビドラマでチラッと見た時には、「こん
な普通のコのどこがいいんだ？」と思ったのですが、なるほどねぇ〜。こうい
う魅力があったのねぇ〜。
ハナ役の鈴木杏も等身大の少女を生き生きと演じています。
みずみずしい青春を実感できる映画です。２人の少女の輝きと戸惑いをそのま
まフィルムに焼き付けています。設定にムチャはあるものの、詩的な映像は一
見の価値アリ。前作『リリイ・シュシュのすべて』なんかと違ってほほえまし
い話なので、岩井監督の映画を体験していない人の入門編としてもいいんじゃ
ないでしょうか。
ああいう少女たちのキラめきって、やっぱりあの時期特有のものなんだろうな
ぁ〜。だからこそみずみずしいんだろうなぁ〜。
なんだかあんな年頃だった自分を思い出しちゃいましたわヨ。（て、アンタは
小汚い男子高生だったろうが！ おまけにデブだったし……。）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない？】
（ムチャな設定にはちょっと困ったけれど、あのみずみずしい描写には降参。
いったいどうやったら、あんなにうまく少女の内面が描けるんでしょ？）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年３月15日（月）テアトルダイヤにて。午後１時の回。