半落ち


(2003年 日本)(上映時間2時間2分)
監督:佐々部清
出演:寺尾聰、原田美枝子、柴田恭兵、吉岡秀隆、鶴田真由、國村隼、伊原剛
志、樹木希林、嶋田久作、西田俊行、石橋蓮司、井川比佐志、奈良岡朋子
*丸の内東映ほか東映系にて全国公開
ホームページ http://www.hanochi.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

<ストーリー>
現職警察官の梶聡一郎(寺尾聰)が自宅で妻を殺したと自首してくる。彼はア
ルツハイマー病を患う妻の看護のために、半年前に刑事を辞職、警察学校で指
導にあたっていた。なぜ彼は殺人を犯したのか。そして、自首してくるまでの
2日間に何をしていたのか。刑事・志木(柴田恭兵)が取調べを担当するが、
梶は口を開こうとしなかった……。

<レビュー>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
骨太なミステリーだが、期待はずれの事件の真相にガッカリ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

柴田恭平が刑事役ってあなた、そりゃやっぱり「あぶない刑事」や「はみだし
刑事」を思い浮かべちゃいますよ。それを承知でキャスティングしたなら、そ
れはそれである意味スゴイかも。
ていうか、この映画のキャストは全部スゴすぎます。今の日本映画&テレビ界
を代表する役者がゾロゾロゾロと大出演。上に書いた人以外にも、脇役まです
べて豪華キャストです。TBSが製作に加わっているだけに、久保田智子アナ
まで役者としてご出演。女子アナ好き必見か!? とにかく、こういう役者の
演技を観るだけでもお得な映画かもしれませんね。 (*^_^*)

横山秀夫の同名ベストセラーを映画化したこの作品。物語の大ワクはミステリ
ーです。
現職警官が妻を殺して自首。犯行そのものは認めているが、殺害後2日間の行
動については一切何も語らない。いったい彼は何をしていたのか。なぜそれを
隠すのか。
刑事や検察官、新聞記者などがそのナゾを追いかけるミステリー劇ってワケ。

最初は警察による取調べ、続いて検察官による取調べ、そして最後は裁判とい
うように舞台を変えながら、真相解明へのドラマが展開されます。
その間、事件を穏便に済ませようとする警察幹部とそれに反発する検察官。警
察と検察の裏取引。女性新聞記者の必死の取材活動、裁判官内部の対立など、
様々な要素を盛り込んで、見応えあるミステリーをつくり出しています。

主要な登場人物が抱えるドラマをきちんと描いているのも好感が持てます。例
えば左遷された検事、不倫中の新聞記者、アルツハイマーの父を抱える裁判官
というように……。
それぞれの心の内がリアルに描かれて、ただのミステリーではない厚みのある
ドラマが展開されます。 (~ヘ~;)

そして、何よりも、ナゾの真相がラスト近くまで全くわからないというのがい
いですねぇ〜。アルツハイマーの妻に頼まれて殺したという事実以外、明確な
真実はなかなか提示されません。やっぱりミステリーなので、それが早いうち
にわかっちゃったら興ざめですものねぇ〜。

なのに、なのに、あの最後のオチは何なのよ??? (`ヘ´)
梶が隠していたのは、あんなことだったのか? あの程度のことをそんなに必
死に隠しとおしていたのか? うーん、なんだか納得できないなぁ〜。
あれじゃ、ナゾに満ちたミステリー劇の真相としては拍子抜けですヨ。

なになに? ミステリーとしてはともかく、人間ドラマとしては素晴らしいっ
て? (・_・?)
わかってるって。この映画、大ワクはミステリーですが、事件の背後にある感
動の人間ドラマが同時に描かれます。
それは、アルツハイマーという大きく、重たいテーマ。自分のことがわからな
くなっても人間は生きる価値があるのか? 「それはイヤだ」という人に対し
て家族はどうすればいいのか?
てなことをグイグイグイと観客に突きつけてくるんです。

でもさぁ、それが出てくるのがラスト20分ぐらいだけってのはどーなんだ? 
それまではナゾの追及ばかりに走って、肝心のテーマがほとんど描かれないん
だもん。
で、ラストでそれまで貯めていたものを吐き出すようにドトーの人間ドラマ攻
撃。暴風雨クラスの感動、感動、また感動の嵐。うう、スリムなボクは吹き飛
ばされそうだぜ(ウソ)。(∋_∈)

なので、確かに感動はできますよ。実際に客席で泣いている人がたくさんいま
したからね。
でも、あの重たいテーマをちゃんと捉えたかといえば、僕にはそうは思えませ
ん。突きつめ方が甘すぎますヨ。
あれじゃ、本当にアルツハイマーに悩んでいる本人やご家族に失礼じゃん。し
かも、見ようによったら殺しを正当化してないか??? そういうヤツは死ん
でもいいってか???
アルツハイマーというテーマが、途中で骨髄移植の話にすり変わってるのも何
だか気に入らないゾ!!!

というわけで、文句ばかりを並べてきましたが、そんなにヒドイ映画というわ
けではありません(オイオイ)。いや、ホント。ミステリーとしてはなかなか見
応えがあるし、役者の演技も充実しているので……。ボクみたいにひねって考
えずに、素直に観れば泣けるかもしれないし。

でも、それだけになおさら、もうちょっと人間ドラマの組み立てをしっかりし
たら、日本映画史に残る傑作になったのではないか。それがかえすがえすも残
念に思えるのであった。 (´ヘ`;)

《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆(+1/2★)【ちょっとだけオススメ。おヒマでしたらどうぞ】
(まあ、観ても損のない映画だとは思いますが、もう少し工夫すればスゴイ映
画になったと思うと、それがもったいなくてねぇ〜。ヨヨ (T^T) )
                           <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2004年1月14日(水)シネマサンシャインにて。午後3時40分の回。


[レビュートップページ][「は」のページ]