二十日鼠と人間 (OF MICE AND MEN)


(1992年 アメリカ)(上映時間1時間51分)
製作・監督:ゲイリー・シニーズ
出演:ジョン・マルコヴィッチ、ゲイリー・シニーズ、レイ・ウォルストン、
    ケーシー・シーマズコ、シェリリン・フェン、ジョー・モートン


<ストーリー>
体は大きくて力持ちだが子供並みの知能しかないレニー。頭の回転が早く
しっかり者のジョージ。レニーの悪意のない行動が事件を引き起こし、2人
は追われる身となる。やがて、ある農場に落ち着くが、レニーが雇い主の若
妻を図らずも絞め殺してしまい……。

<レビュー>
文豪スタインベックの原作を真正面から映像化した、骨太の人間ドラマです。

いや、実はこの映画を観たのは、スパイク・ジョーンズ監督の『マルコヴィッ
チの穴』(2000年)を観たのがきっかけ。
個性派俳優のジョン・マルコヴィッチの頭の中に入り込むというユニークな設
定のこの映画。
ジョン・マルコヴィッチといえば、クリント・イーストウッド主演の『ザ・シークレッ
ト・サービス』(1993年)の暗殺者役など渋い脇役というイメージがあったので、
「スタインベック原作ものって、いったいどんな作品なの?」と観てみたわけです。

で、感動しましたぁ〜。 (T^T)
何を隠そう、僕、こういうのに弱いんですぅ〜。

マルコヴィッチ演じる子供のように純粋な大男レニーと、ゲイリー・シニーズ演じ
る彼の面倒を見る友人ジョージとの友情物語。
といっても、ジョージはけっして教科書に載るようなリッパな人物ではない。とき
には、レニーの愚かな行動に怒り、「コイツさえいなければ……」と思ってしまう。
それでも、どうしても彼を見捨てることができない。
このあたりの葛藤がよく出ている。

以前いた農場を追われて、ようやく新しい落ち着き先の農場を見つける2人。
そこには個性的な面々が揃っていた。厳しい農場主とキレた息子。淋しさに耐え
切れずにいるその妻。レニーとジョージに理解を示すリーダー、老いて今後に不
安を感じている雇い人……。
こうした人々の描き方がうまい。どの人物も生き生きと描かれているから、そこ
から生まれるドラマが生きてくる。

様々な事件に遭遇しながらも、どうにか仕事を続けるレニーとジョージ。
自分たちの農場を持つという2人の夢も、年老いた同僚の協力によってついに実
現しそうになる。
ところが、そこで大変な事件が起きる。

結論を言ってしまえば、レニーが農場の若妻を殺してしまうのだが、それはけっし
て悪意のある殺人ではない。ちょっとしたアクシデントから、彼の怪力が災いして
悲劇が起きてしまうのだ。
そして、涙、涙のラストへ……。

レニーの純粋さが涙を誘う。
マルコヴィッチの演技は歴史に残る名演かもしれない。演技だから当然誇張は必
要なわけだが、けっして不自然さは感じさせない。そのあたりのバランスが見事だ。
ロバート・デニーロやダスティン・ホフマンなんかも、脳に障害を持つ人の役を熱演
しているが、それにけっしてヒケをとらない演技だと思う。
(『マルコヴッチの穴』でも、タクシーの運転手がマルコヴィッチに向かって「あの精
神障害の役をやってた人だろ?」と言うところがあります。)

そして、監督・出演のゲイリー・シニーズだ。
この人も、トム・ハンクス主演の『アポロ13』(1995年)や『フォレスト・ガンプ』(1994
年)などでおなじみの渋い脇役。いかにもクセモノって感じだが、こんなに真正面か
ら骨太の作品がつくれる人だとは……。お見それしましたぁ! (_ _,)/~~
それでも、演技は相変わらずのクセモノって雰囲気でしたけどネ。

ちなみに、ゲイリー・シニーズとジョン・マルコヴィッチは一緒に劇団を旗揚げした旧
友だとか。だから、こんなにお互いのよさを引き出せたんでしょう。

そうそう、この映画ではイヌが大きなポイントを握っています。
老いた雇い人が飼う老犬が安楽死させられ、それによって彼が自分の行く末に不
安を抱く。
また、レニーが生まれたばかりの子犬を溺愛し、その犬が死んだことが凶行の引き
金になる。
このあたりの設定もなかなかうまいなぁ。
(レニーが子犬をかわいがる理由を、「フワフワで柔らかいものを触ると気持ちいいか
ら」って説明するのがおもしろいんですよ。)

グイグイと悲劇を押し付けてくるんじゃなくて、逃れられない運命としての悲劇をさり
げなく提示する。だから、観ているほうはよけい感動してしまうんじゃないでしょうか。
ただの「お涙ちょうだい物語」とはまったく違う魅力を持った映画だと思います。

《ぽちのおススメ度》
★★★+1/2★
(最後はただ涙、涙。泣かせるなら、こういうふうにしてくんなくっちゃ。)
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