ハイ・フィデリティ (HIGH FIDELITY）
（2000年 アメリカ）（上映時間１時間54分）
監督：スティーブン・フリアーズ
出演：ジョン・キューザック、ジャック・ブラック、ジョエル・カーター、リサ・ボネット、
ジョーン・キューザック、サラ・ギルバート、イーベン・ヤイレ、トッド・ルイーゾ、
リリ・テイラー、ナターシャ・グレグソン・ワグナー
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
音楽オタクで小さなレコードショップを経営するロブ（ジョン・キューザック
）は、一緒に暮らす弁護士のローラ（イーベン・ヤイレ）から、別れを告げら
れる。どうやら彼女には新しい恋人がいるらしい。言いようのない嫉妬心が沸
き起こったロブは、何とかして彼女とよりを戻そうとするのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
平凡なラブ･ストーリーがオタクのパワーで魅力的に
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
なんだ、ただのラブ・ストーリーじゃん。
観終わってようやく気づきました。別れようとする女と、それを阻止しようと
する男。ただそれだけの話。
でも、観ている間はけっこう楽しめたんですよね。何しろかなり変わってるん
だわ。このラブ・ストーリーったら。 _(‥
)
音楽オタクで小さなレコード店を経営するロブ・ゴードン。
つきあう女性から次々にフラれてしまい、現在は同棲中だった恋人ローラから
別れを告げられている。
ローラに「君なんか僕を振って傷つけた女のトップ５にも入りやしない！」と
強がりを言ったものの、本当は未練タップリ。
特に彼女にイアンという新しい恋人が存在することを知り、ますます未練が強
くなる。気がつけば、ローラはロブの失恋トップ５に、しっかりとチャートイ
ンしていたのだ。
いったい自分の何が問題なのか。ロブは失恋トップ５の女の子たちを訪ね、問
い正そうとする……。
主人公ロブのキャラクターがいいんですヨ。 (*^。^*)
超音楽オタクで、ミーハーな客なんか相手にしない。他人の価値を人間性では
なく趣味で判断してしまう困ったヤツ。
おまけに子供の頃から女のコにフラれ続け、今も同棲中の恋人からポイされそ
うになっている。ま、いわば大人になりきれないダメ人間ってワケですね。
(x_x)
ただし、彼ったらミョーにリアリティがあって、ちっともマンガチックじゃな
いんです。
製作、脚本にも携わったジョン・キューザックの演技が自然だし、血の通った
人物として温かい視点でとらえられている。彼が観客に語りかけるというスタ
イルも、まずまず功を奏していると思う（ちょっとウザイところもあるけれど）。
いずれにしても、こういう男じゃ女性も大変。 (´ヘ｀;)
「あなたは昔のまま。人や自分が変わることをあなたは許さない」な〜んて言
われて、恋人ローラに出て行かれそうになるんです。
で、そこからロブがとった行動がいかにもオタクらしい。自分の人生で自分を
フッた女性のトップ５を決め、彼女たちを訪ねて、自分のどこが問題なのか調
べようとするのだ。
この迷走ぶりがおもしろいんだなぁ〜。 (＾。^/)
いろんな女性と会って、そのたびに「これは運命で、僕のせいじゃない」と思
ったり、「アンタのおかげでセックス恐怖症になったわよ！」と怒鳴られたり
……。
相手の細かな言葉が気になってアレコレ深読みしすぎるあたりも、いかにもオ
タクらしい迷走ぶり。そのあげく、はずみで知り合ったばかりの女のコと寝ち
ゃったりする始末。 ┐(´-｀)┌
こういうことをするうちに、やっぱりローラと仲直りしたいと思うようになる
ロブ。でも、ローラは新しい恋人がいるし、なかなか思い通りには進まないん
です。
オタクでダメ人間を描いているとはいえ、この映画には観客が共感できる部分
がたくさんあります。
ロブの失恋体験に自分の経験を投影する人も多いはず。恋人がいるのについ浮
気心を出してしまうところなんかも、男女を問わず共感してしまうのでは？
「地に足をつけないと」と思いつつも、いつまでも大人になれない姿には、自
分の心を見透かされたような気恥ずかしささえ感じてしまいました。すんませ
んねぇ。子供のまんまでサァ。
そういうところで、ついつい感情移入してしまう僕なのであった。それって、
つまり僕もオタクでダメ人間ってことか？ (・_・？)
ラストはちょっと安易な結末という気もしますが、それでもなかなか良い雰囲
気で、思わず感動しちまったぜ。 (^-^)
ああやって、人間は大人になっていくの……だろうか？
主人公が超音楽オタクなので、音楽もこの映画のもうひとつの主役です。ザ・
キンクス、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ステレオラブ、ベータ・バ
ンドなど、ツウ好みの新旧ミュージシャンによるナンバーが次々に登場。さら
にブルース・スプリングスティーンをはじめとするミュージシャン本人も劇中
に登場します。
セリフにもロック・ジョークがたくさん出てきますが、このへんは音楽ファン
じゃないとつまらんかな？
ジョン・キューザック以外では、彼のレコード店の店員役のジャック・ブラッ
クがナイスな味。特にクライマックス・シーンでの歌がよかったですね。
ヒロインのローラ役のイーベン・ヤイレ（『ミフネ』）もなかなかのもの。彼
女の友人役でジョンの実姉ジョーン・キューザックも出演しています。
どうってことないラブ・ストーリーなのに、オタクの迷走ぶりのおかげで、楽
しくてリアリティのある作品に仕上がっています。シニカルだけど、けっして
バカにしているわけじゃない。オタクの愛と悲しみをよ〜く描き出していまし
た。僕はかなり好きな作品ですね。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）
（コレ観たからって、別に大人になれるわけじゃないけどさ。少なくとも共感
はできるんじゃないでしょうか。）
（ぽち）
＊ビデオ鑑賞