ほえる犬は噛まない（BARKING DOGS NEVER BITE）
（2000年 韓国）（上映時間１時間50分）
監督：ポン・ジュノ
出演：ペ・ドゥナ、イ・ソンジェ、キム・ホジョン、ピョン・ヒボン、コ・ス
ヒ、キム・ルェハ、キム・ジング
＊ユーロスペースにて公開。順次全国公開。
ホームページ http://www.hoeruinu.com/
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＜ストーリー＞
大学教授の職を得られないユンジュ（イ・ソンジェ）は、出産間近の妻の稼ぎ
で暮らしていた。最近マンション内に響き渡る犬の鳴き声にイライラしていた
彼は、ある日、隣のドアの前に座る犬を見つけて、地下室のロッカーに閉じ込
めてしまう。飼い主の少女は、愛犬の捜索願いのチラシを管理事務所に提出。
そこで経理の仕事をしているヒョンナム（ペ・ドゥナ）は、正義感に燃えチラ
シを貼りまくる……。
＜レビュー＞
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日常と非日常の境目でジタバタするダメダメ人間たち
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コラコラ、犬をイジメるなぁ〜〜〜〜！！
この映画、犬を虐待するとんでもない映画です。犬好きのボクとしては許せま
せん。こんな映画、観なくてよろしいッ！！！ (｀ヘ´)
と言いたいところですが、そう簡単に斬って捨てられない魅力があるのヨ〜。
この映画ったら。
うーむ、しかし、説明が難しい。なんて言ったらいいんでしょ。既成のタイプ
にあてはまらない不思議な映画なんです。
物語の舞台は、とあるマンション。そこの住人で、大学教授になれずに妻に食
べさせてもらう男ユンジュ。そして、管理事務所に勤めるものの、上司や同僚
から冷たい視線を浴びせられる女ヒョンナム。このダメダメの男女を中心に話
が展開します。
マンションで起きる連続愛犬失踪事件を軸に、ひたすら大学教授を目指すユン
ジュと、事件の犯人を目撃したことから、以前から憧れていた正義のヒロイン
の座が近づいたヒョンナムの姿がユーモアたっぷりに描かれます。
ユーモアといっても、爆笑できる笑いじゃないんですよね。むしろクスクス笑
い。ブラックで、乾いていて、ディテールを使った笑いなんです。
たとえば、スーパーまでの距離を測るのにトイレットペーパーを転がしてみた
り、遺言状を渡されたらそこに書いてあったのは「私のお金をあげる」じゃな
くて、「私の切干大根を食べて」だったり……。
キャラクターでも笑わせます。
主役２人の周囲の人たちがみんなヘン！ 犬を食う（おいおい！）警備員とか
、ヒョンナムの太めの女友達（まさにデコボコ・コンビ）とか、ひたすらクル
ミを食うユンジュの奥さんとか。とにかく個性的な面々ばかり。あまりに個性
的で、なんだかシュールだったりもするのだ。 (＾。^/)
登場人物の心理もキッチリ描いています。それも日常の中の幸せや怒り、悲し
み。そういうものを抑制的なタッチですくいとっていくんです。この抑え目な
ところがスゴク魅力的。おかげでつまらんドタバタ劇にはなっていません。
特に後半は、ユンジュと奥さんの夫婦の絆や、ユンジュの改心の情などを見せ
て、観客をグッと感動させます。 (・_・、)
アクションの要素まであるんですヨ。ヒョンナムが犯人を追い詰めるシーンは
、かなりの迫力。逆に彼女が追われるところもスリリング。彼女を応援したく
なっちゃう人も多いのでは？
この映画に出てくる人々は、みんな日常を生きているフツーの人たちです。特
に中心人物２人は、ダメダメな日常を送り、なんとかそこから脱却したいと思
っている。
それがひょんなことから非日常に足を踏み入れ、大きな変貌のチャンスを手に
入れる。この日常と非日常の境目のビミョーなところで、ジタバタする人たち
の心情を的確に描いているんです。
映像もみずみずしくてキレがある。全編に流れるジャズも効果的に使われてい
ます。
ヒョンナム役のペ・ドゥナもいいんですよ。顔はアイドル顔なのに、フツーの
ダメダメ女をさりげなく自然体で演じている。これ、けっこう難しいこと。
ジャンル分けすれば、コメディー映画ってことになるんでしょうが、それだけ
ではくくれない奥行きを持った映画。ホラーやアクション、ファンタジーなど
いろんな要素が詰まっています。この監督、ただものじゃありませんね。（韓
国では新作『殺人の思い出』が大ヒット中とか。）
苦々しいところもたくさんあるけれど、後味は悪くありません。一見の価値が
あると思いますが、犬好きの方はご用心ください。オープニングで「ちゃんと
管理して使ってます」なんてメッセージが流れますが、ありゃあ、どう見ても
イジメてます。まさか撮影終了後、みんなで食ってねえだろうな!? (＾0＾)
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない？】
（ありきたりの映画に飽きた方にはオススメ。それにしても、最近の韓国映画
って元気すぎるぜ！）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2003年10月18日（土）ユーロスペースにて。午後２時20分の回。