ハウルの動く城
（2004年 日本）（上映時間１時間59分）
監督・脚本：宮崎駿
声の出演：倍賞千恵子、木村拓哉、美輪明宏、我修院達也、神木隆之介、加
藤治子
＊日比谷スカラ座ほか東宝系にて全国公開
ホームページ http://www.howl-movie.com/
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＜ストーリー＞
18歳のソフィーは、荒地の魔女に呪いをかけられ90歳の老婆になってしまう。
生まれ育った帽子店を抜け出し、魔法使いハウルの動く城に転がり込んだ彼女は、
掃除係として働くことにする。そんな彼女の前に現れた城の主ハウルは、なんと
街で兵士に声をかけられ困っていたソフィーを助けてくれた青年だった。ハウル
に恋心を抱くソフィーだが、その頃世界では戦争の火の手が上がって……。
＜レビュー＞
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これはただのラブストーリーではなく宮崎駿流の戦争全否定映画だッ！
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イギリスの児童文学「魔法使いハウルと火の悪魔」（ダイアナ・ウィン・ジョ
ーンズ）を大胆に脚色した宮崎駿監督の最新アニメ。
舞台は今までの宮崎作品にもお目見えした魔法世界。登場するのも今までの作
品で観たようなキャラクターばかり。ついでに倍賞千恵子が歌う主題歌の作曲者
は、前作『千と千尋の神隠し』の主題歌を自ら歌った木村弓、ということで、基
本はいつもの宮崎ワールド。
でも、注目すべき点はいくつかあって、まずは外見90歳、実年齢18歳というヒ
ロインの設定がユニーク。そして、彼女が入り込むのが、「動く城」のタイトル
通りにかなりハジケたお城。
その城の主である超美形の魔法使いハウルと、ヒロインのソフィーとの恋が、
この物語の中心です。
“魔法使いによって老女にされた少女と美青年の恋”と聞いたときには、「高
齢化社会も意識しつつ、人間は外見じゃないのだッ！ というメッセージが込め
られた作品なのかなぁ〜」と思ったのですが、実際はそんなものよりはるかに強
烈なメッセージをボクはキャッチしてしまったのです。
それはズバリ、反戦のメッセージ。恋物語の形式をとりつつも、全編を貫くの
は徹底して戦争に反対する姿勢です。
舞台になる世界では激しい戦争が行われています。魔法使いも国に協力するこ
とが求められています。しかし、それがイヤなハウルは老女になったソフィーを
国王のもとに送り、なんとか協力を拒否しようとします。
そして、後半になると、こちらがドキッとするようなセリフが登場します。戦
闘機（？）が迫ってきたときに、ソフィーが「敵？ 味方？」と聞くんですよね。
するとハウルがこう言うんです。「そんなのどっちでも同じだ！」。
そうなんです！ この言葉に象徴されるように、この映画に込められたのはた
だの反戦メッセージではなく、「戦争は全部ダメ！」という戦争全否定のメッセ
ージなのです。
これって、実はかなりスゴイことだと思います。イラク戦争に見られるように
「戦争には正義の戦争もある」というのが世界の指導者の考え方。特に9．11以
降は「テロとの対決」を旗印に戦争を正当化する動きが強まっています。日本の
国会議員の多くも「戦争はやんないほうがいいけどさぁ〜、しょうがない戦争も
あるんだよね」てな考えの持ち主が増えているようです。 (´ヘ｀;)
そんな世の中で「戦争は全部ダメ！」というのは、当たり前のようだけれど、
実はかなり勇気のいるメッセージだと思うのです。
この映画では戦争の具体的な点はボヤかされています。どことどこが戦争して
いるのか、原因は何なのか、そういったことは一切説明されません。これもまた、
「どんな戦争でもダメなのだヨ」という宮崎監督のメッセージの表れだと思うの
はボクだけだろうか？ (・_・？)
クライマックスでは、愛するソフィーのために戦おうとするハウルですが、宮
崎監督はそれさえも無敵のヒーローとして描きません。ハウルは戦いの中で傷つ
きボロボロになってしまいます。そして彼を癒すのは、ただ愛のみ……。
うーむ、これほど徹底した反戦のメッセージがあるでしょうか。 (~ヘ~;)
とはいうものの、けっしてお説教臭くそれを訴えているわけではありません。
いや、むしろかつての『もののけ姫』で、環境破壊への警告を強烈に発した
のなどに比べれば、かなり控えめなメッセージ。
この映画には、反戦メッセージやラブ・ストーリー以外にもいくつもの要素が
あって、観る人によってそのどれに触発されるか違ってくるのだ。たまたまボク
の琴線に触れたのが反戦メッセージだったわけで、他の人にはまったく別の何か
が伝わってくるのかもしれません。そこがまた宮崎アニメの魅力なのでしょう。
ええ、もちろん、な〜んも考えなくても普通に楽しめますヨ。
映像はバツグンに美しいし、そこで展開される恋物語も魅力的。動く城を中心
とした不思議ワールドや登場する数々のキャラも楽しいからね。 (*^。^*)
それでも、中心となるラブ・ストーリーはかなり弱い。たとえば愛の背景とな
るハウルやソフィーが背負ったものが明確に描かれなかったりするので、切なさ
や感動がググッと胸に迫るところがあまりないのだ。そこがこの映画の大きな欠
点かも。
だが、ボクにとってはそれがかえって、戦争に対するメッセージをなおさら強
烈に際立たせているのだ。
ここまで愚直に戦争全否定を打ち出す宮崎監督は、もしかしたら相当にラジカ
ルな映画作家といえるかもしれんなぁ〜。
最後に、声優陣ではソフィーの倍賞千恵子、ハウルの木村拓哉はなかなかのも
のでしたが、ボク的にはカルシファーの我修院達也と荒地の魔女の美輪明宏の怪
演に、大拍手です。ついでにヒンの原田大二郎には大笑い。セリフなしでヒンヒ
ン言っているだけなんだもん。宮崎アニメとはいえ、よく出演を決意したもので
す。そのシャレ心にも拍手。 (^-^)//""パチパチ
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない？】
（ラブ・ストーリーとしてはつまらないが、戦争を全否定するメッセージは強
烈。それ以外にもたくさんの要素が詰まった映画で、色んな意味でラジカルな
映画です。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年11月29日（月）池袋シネマサンシャインにて。午後３時20分の回。