アイ・アム・デビッド(I AM DAVID)
（2004年 アメリカ）（上映時間１時間33分）
監督・脚本：ポール・フェイグ
出演：ベン・ティバー、ジム・カヴィーゼル、ジョーン・プロウライト、ヒリ
ストヴ・ショッポ、シルヴィア・デ・サンティス、パコ・レコンティ
＊シネマスクエアとうきゅうほかにて全国公開
ホームページ http://www.herald.co.jp/official/david/
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＜ストーリー＞
第二次世界大戦後のブルガリア。強制収容所に隔離されている12歳の少年デビ
ッド（ベン・ティバー）は、ある夜看守たちの目を盗んで脱出する。ある人物か
ら手紙を渡され、「この手紙を持って誰にもつかまらずにデンマークに行け」と
指示されたのだ。粗末なカバンに入っているのは手紙と食料とひとかけらの石鹸、
ナイフ、コンパスだけ。危険な目にあいながらも、デンマークを目指すデビット
だったが……。
＜レビュー＞
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影を背負った少年が心を解きほぐしていく旅の物語
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原作は、もともとデンマーク生まれの女性アネ・ホルムが1963年に発表した小
説で、その後世界各国でベストセラーになったそうです。
ドラマは、12歳の少年デビッドが収容所から脱走するところから始まります。
彼が何者かによって脱走を指示され、デンマークに向かいます。その旅は苦難に
満ちたものだった……。
ということで、原作は冒険少年物語らしいのですが、この映画はそういう感じ
じゃないんですよね。だって、冒険場面があんまりスリリングじゃないのだ。オ
ープニングの脱走場面からして、ハラハラしない。その後の旅も、都合よすぎの
展開が目立ったりして、冒険物語らしい緊迫感や躍動感はほとんど見られません。
（′O｀）〜３
演出があまりにもオーソドックスすぎるんだよね。少年の旅に、過去の記憶の
断片を織り込んでいくところなんかも、よくある演出だものねぇ〜。
ただし、冒険小説的な魅力はないものの、１人の少年の旅立ちのドラマとして
はけっこう良くできた映画です。
デビッド少年は、収容所で過酷な生活を送り、まったく笑顔を見せようとはし
ません。おまけに、そこを脱走する時に「だれも信じるな！」と教えられ、旅の
途中で出会う人に対して、不審の目を向け続けます。 （*￣0￣*）
しかし、そんな彼がツライ旅をする中で、カワイらしい女の子や絵を描く老婦
人と出会ったりしていくうちに、少しずつ心が解きほぐされて、ぎこちないなが
らも微かな笑顔を見せるようになるのです。 (^-^)
その心の軌跡が実にていねいに、そして温かく描き出されていきます。このあ
たりは、かなり見応えがありました。
特に絵を描く老女との出会いは、印象深いエピソード。演じるジョーン・プロ
ウライトの存在感のある演技もあって、ポカポカと温かなエピソードに仕上がっ
ています。
そして、ラストには予想もしない真実が……。 (◎-◎;)!!
よーく考えないで観ていると、少年に脱走を指示したのは、ジム・カヴィーゼ
ル演じる収容者仲間じゃないかと思っちゃうんですよね。でも、本当は、まった
く別の意外な人物が少年を見守り、脱走を指示したことがわかるんです。しかも、
その裏には、想像もできない驚きの真実が潜んでいる。
それを通して、単純な善人、悪人の区別を超えた、普遍的なヒューマニズムが
伝わってきます。
クライマックスをやたらに盛り上げず、サラッと描いた演出にも感心させられ
ました。（監督は､ファミリー向け番組の脚本家兼監督のキャリアを持つポール・
フェイグ）。
あの結末なら、普通は涙、涙の感動物語にしますよねぇ〜。でも、そういうタ
ッチを避けて、抑え目にラストを迎える。余韻を持った終わり方が、とても心地
よい映画でした。
デビッド少年にとっては、きっとラストの出来事と同じぐらい、旅の途中での
出来事が今後の人生にとって大きな影響を持つんでしょうね。
デビッド少年役を演じたベン・ティバーの繊細な演技もなかなかのもの。ハー
トウォームなヒューマン・ドラマとして観れば、なかなかの映画ではないでしょ
うか。
でもなぁ、アメリカ映画のせいか、言葉がほとんど英語ってのはどうなんだ？
イタリアやスイスなどが舞台なのに、主人公の少年や主要な人物はともかく、
町の普通の人まで全部英語なのはどう考えても不自然。ウソくさくてシラけちゃ
う。ここまで英語にこだわるのは、なんか特別な意図でもあるのか？？？
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観ても損はナシ】
（英語ばかりの不自然さなど気になるところはあるものの。最後に心がポカポ
カしてくるヒューマンな魅力にあふれた映画。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2005年２月24日（木）シネマスクエアとうきゅうにて。午後2時25分の回。