アイス・ストーム(THE ICE STORM)
(1997年 アメリカ)（上映時間１時間53分）
監督：アン・リー
出演：ケヴィン・クライン、シガーニー・ウィーヴァー、ジョーン・アレン、
ジェイミー・シェリダン、クリスティナ・リッチ、イライジャ・ウッド、
アダム・ハン＝バード、トビー・マグワイア
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＜ストーリー＞
1973年、アメリカ・コネティカット州の郊外に住むカーバー家とフッド家の２つの
家族。一見、幸福そうにみえる彼らだったが、親たちは複雑な関係にあった。
やがて、子供たちも性的関係をもつようになる。そして、"アイス・ストーム"が
町に吹き荒れる夜、ついに悲劇が起る……。
＜レビュー＞
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70年代を舞台にした、家族の崩壊を描くヒューマン・ドラマ。
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のちにアクション活劇『グリーン・デスティニー』で大ブレイクしたアン・リー監督
ですが、それまではこういう人間ドラマを得意とする監督だったのですヨ。
そんな彼が手がけたこの映画は、70年代の典型的な中産家庭が、どんどん崩
壊していく様子を描いたかなりシリアスな物語です。
中心になるのは、カーバー家とフッド家という２つの家庭。どちらも一見幸福な
家庭に見えるけれど、ひと皮むけば大きな問題を抱えている。
まず、フッド家の夫ベンとカーバー家の妻ジェイニーはなんと不倫の関係にある。
ベンの妻エレナは、それを薄々感づいていて、夫婦仲はギクシャクし始める。
また、フッド家の娘ウェンディーは何かと反抗的。しかもカーバー家の息子マイ
キーと性的関係を持っている。それなのに、その幼い弟サンディーに興味を持ち、
彼を誘惑しようとする……。
もうムチャクチャです。こんなに入り乱れた家庭はめったにありません。
数々の家庭問題の相談に乗ってきた、「みのもんた」でもきっと驚くことでしょう。（笑）
ただし、最初のうちはごく普通の家庭のように描かれるんです。
冒頭はフッド家の長男ポールが列車に乗っているシーン。停電で一時的に止ま
った電車が再び動き出す。
そして、やがて駅に到着すると、父と母、そして妹が揃って彼を出迎えている。
というわけで、いかにも幸せそうな家族に見えるんですが、これがラストでとん
でもない状況下の出来事だとわかるんです。 Ｗ（ﾟＯﾟ）Ｗ
つまり、幸せに思えた家庭が実はいろいろと問題を抱えていて、どんどん崩壊し
ていく様子を小出しにチラチラと見せていくんですねぇ〜。うーん、もったいぶっ
ちゃって。(＾。^/)
それを過剰な説明を排して、淡々と描く姿勢には好感が持てます。
しかも、それを演じているのがケヴィン・クライン、シガーニー・ウィーヴァー、ジョー
ン・アレンといった名うての実力派俳優ですからねぇ。登場人物のビミョーな心情
までキッチリとこちらに伝わってくるんです。
どうにかしたいのにどうにもできない。そんな登場人物の気持がとっても切ない。
後半でおもしろいのは、キーパーティーなるもの。
これは、自動車のキーを器に入れて、女性がそこから一つ取るというもの。そして、
そのキーの持ち主と一緒に帰るという趣向。
つまり、向こうのパーティーは必ずカップルで来るわけで、帰りは別の相手と帰る
ということですね。まあ、擬似スワッピングに近いお遊びっつうわけですか。よう考
えるな、こんなこと。 (＾0＾)
そのパーティーで、フッド家とカーバー家の夫婦が、それぞれ決定的な空虚さを味
わってしまうという仕掛けです。この展開はなかなか見応えがありました。
そして、ラストは両家にとって悲劇的な事件が起きます。
フッド家はそれをきっかけに家族が集まるのですが、そういう形でしか集合できな
いことがとっても悲しい。
平凡な家庭が実は……という話はよくありますが、ここまで淡々としたタッチで描い
た映画は珍しいかも。それが逆に名優の演技を引き立てて、見応えある映画に仕
上げています。
ただし、全体に上っすべりな表現が目立つのが残念。夫婦の関係にしても、子供
たちの行動にしても、「もうちょっと深く突っ込んで欲しいのに〜〜」ってところがたく
さんあるんですよね。そのへんは、あえてそうしなかったのかもしれないけれど。
それと、チラチラと家庭のほころびを見せていく過程も、もうちょっと緻密に構成して
欲しかった気がします。原作モノなので、それに沿っているのかもしれないけれど、
イマイチ構成が甘い気がするなぁ〜。最初は小さなほころびがドンドンドンドン大きく
なって……という感じをもっと出して欲しかった。 (´ヘ｀;)
それでも、名優の演技など見どころは多い映画です。
若い俳優の競演も見もの。クリスティナ・リッチ、イライジャ・ウッド、トビー・マグワイア。
みんなこのあと大ブレイクした若手だからねぇ。
誰がキャスティングしたのか知らないけれど、かなり先見の明があります。特にトビー
が今とまったく変わらず情けな〜い雰囲気なのがいいですねぇ〜。 (＾。^/)
掘り下げ方に物足りなさはあるものの、まあ、それなりに心にしみる人間ドラマにな
っていると思います。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（70年代の出来事とはいえ、現代に通じる話なので、家族の問題に関心のある方
はぜひどうぞ。ただし、デッカイ出来事はあんまり起きないので、途中で眠くなっち
ゃうかも。）
2002年9月7日、ビデオにて鑑賞
＜ぽち＞