インソムニア(INSOMNIA)
（2002年 アメリカ）（上映時間１時間59分）
監督：クリストファー・ノーラン
出演：アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンク、モーラ
・ティアニー、マーティン・ドノバン、ニッキー・カット
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＜ストーリー＞
アラスカで猟奇的な少女殺人事件が起きる。同僚のハップとともに現地に派遣
されたロサンゼルス警察のベテラン刑事ウィル・ドーマー（アル・パチーノ）
。だが、捜査中にハップを射殺するミスを犯してしまう。しかも、その一部始
終を目撃していた人物がいたことから……。
＜レビュー＞
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『メメント』の衝撃はないけれど、一発屋じゃなかったことを証明
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逆回転ムービー（？）『メメント』でまさに彗星の如く登場したクリストファ
ー・ノーラン監督。いやぁ〜、ユニークなアイデアといい、緻密な構成といい
スゴイ映画でしたねぇ〜。
そんな彼が、スティーヴン・ソダーバーグ監督やジョージ・クルーニーなどの
製作総指揮のもと完成したのがこの映画。でも、『メメント』のイメージで観
ると拍子抜けしちゃうかも。何しろ今回は正攻法で勝負しているんです。
アラスカで起きた猟奇殺人事件の捜査に、ロス警察から助っ人として送られた
ドーマーとハップ。だが、捜査の途中でドーマーはハップを射殺してしまう。
保身のために必死に隠ぺい工作をするドーマー。
ところが、この現場を目撃していた人物がいた。彼はドーマーを脅迫。事態は
思わぬ方向に進んでいく……。
前半は、猟奇殺人の捜査と、その過程で起きたドーマーによる同僚の射殺事件
のようすが描かれます。
ところが、意外にあっさりと殺人犯人がわかってしまうんです。（ちなみにス
タートから約１時間で早くも犯人が判明）
おいおい、大丈夫か？ まだ１時間近くもあるのに。 (・_・？)
と思ったんですが、なんのなんの、ちゃ〜んと盛り上げてくれました。
後半はドーマーが脅迫によって、ジリジリと神経をすり減らしていく姿が丹念
に描かれます。
彼はけっして悪人というわけではなく、人一倍強い正義感を持つ男。それがあ
だとなって、かつて捜査で一線を踏み越えてしまったことがある。
それを知っているのが同僚のハップ。彼は警察の内部査察で、取引に応じて真
相を話そうとしていた。つまり、ドーマーにとっては命取りの存在。
そんなハップを射殺したとわかれば、これはもう周囲は故意に射殺したと思う
はず。だからこそ、ドーマーは必死に隠ぺい工作をしようとするんです。
でも、しっかりとそれを見ていた人物がいた。彼はドーマーを脅迫して、殺人
事件の真相をねじ曲げようとする。
断れば同僚射殺の一件がバレてしまう。だが、ＯＫすれば無実の人間が犯人に
されてしまう。「いったいどうしたらいいんだぁ〜！！！」 （∋_∈）
犯人とドーマーとの息詰まる心理戦は見応えタップリ。善悪の境界線上で大い
に悩み、理性を失っていくドーマーの姿には鬼気迫るものがある。
それを際立たせるのがアラスカの大自然。白夜なので夜中でも明るいままなの
だ。ただでさえ眠れないドーマーは、心理的葛藤でますます眠れなくなる。
そうです。タイトルの「インソムニア」とは不眠症のことなんです。
そんなドーマーの葛藤がリアルに伝わってきて、こっちまで神経がすり減っち
まいそうです。 (>_<")
こうしてドーマーのいら立ちを正攻法の演出によって描き出したノーラン監督
。「『メメント』のように奇をてらわなくったって、しっかりした演出はでき
るんだい！」というところを見事に証明しています。
とはいうものの、『メメント』っぽいところも多少は感じました。
まずその映像のキレ。スピーディーで、スリリングな映像は前作と同じ。
白夜のほかにも霧や水といったアイテムを象徴的に使うあたりも、いかにも彼
らしい凝り方だと思いましたヨ。
オープニングで登場する謎のシーンが、ラスト近くでタネ明かしされるところ
も、ちょっと『メメント』っぽかったですね。
描き方によっては三流のサスペンスになりそうなこの映画をここまでにするの
だから、やっぱりタダモノではない。
ただし、それも名優の出演があってのもの。並みの役者なら、ここまで見応え
ある映画にはならなかったはず。
アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムス、ヒラリー・スワンクの競演はかなり
の濃さ（笑）。
特にアル・パチーノはやっぱりスゴイ。年齢とともに渋さに磨きがかかって、
より狂気が引き立っている。彼とロビン・ウィリアムスとのシーンは、火花チ
リチリでヤケドしそうでした。 (>_<")
意外なキャスティングでは、ドーマーが宿泊する宿の女主人役で『ＥＲ／緊急
救命室』のアビー・ロックハート役モーラ・ティアニーが登場。この間の『ド
ニー・ダーコ』に出ていたカーター先生といい、『ＥＲ』勢が大活躍！（そう
いえばジョージ・クルーニーも『ＥＲ』出身だっけ）
さて、名優の演技に負うところが多いとはいうものの、ノーラン監督の演出も
それなりのキレで、十分に見応えのある映画になっています。
ただねぇ、素材が素材だけに『メメント』ほどの緊迫感はなかったなぁ。特に
前半は……。
できたら、前半で、もうちょっと犯人探しの魅力も取り入れてくれたらよかっ
たんですけど。そこがちょっと残念です。
でも、まあ、ぜいたくは言うまい。なんたって、実質的なメジャー第１作でこ
れだけの映画をつくったんだから。ただの一発屋じゃなかったことを証明した
だけで、今回は合格点を上げちゃいま〜す！ (*^。^*)
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）
（とにかくアル・パチーノの存在が大きい映画。『メメント』のことを意識し
すぎなければ、十分観る価値はあると思う。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2002年９月９日（月）シネマサンシャインにて。午前11時20分の回。