いつか、きっと(LA VIE PROMISE)
（2002年 フランス）（上映時間１時間33分）
監督：オリヴィエ・ダアン
出演：イザベル・ユペール、パスカル・グレゴリー、モード・フォルジェ、ア
ンドレ・マルコン、ファビエンヌ・バーブ
＊新宿武蔵野館にて公開。
ホームページ http://www.gaga.ne.jp/ituka/
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＜ストーリー＞
ニースの街角に立つ娼婦シルヴィア（イザベル・ユペール）は、自堕落な生活
を送り、それを見られたくなくて、14歳の娘ロランス（モード・フォルジェ）
を遠ざけていた。だが、ある日、母親恋しさにシルヴィアの部屋へ忍び込んだ
ロランスが、シルヴィアともみ合う男を刺殺してしまう。逃亡の旅に出た母と
娘は、かつてのシルヴィアの夫と息子の家を目指す。そこに、わけありな中年
男ジョシュアが加わって……。
＜レビュー＞
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一人の女性の心の再生を描いたロードムービー。説得力ある演技と演出が光る
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この映画の主演は、フランスの演技派女優イザベル・ユペール。カンヌ映画祭
女優賞を獲得したミハエル・ハネケ監督の『ピアニスト』ではマゾのピアニス
トを、フランソワ・オゾン監督の『８人の女たち』ではオールドミスをと、ユ
ニークな役どころを演じてきた彼女。今回は心に傷を持つベテラン娼婦を演じ
ています。
簡単に言えば母と娘のロードムービー。ただし、かなり風変わりです。
主人公である娼婦の母シルヴィアと娘ロランスとは、ギクシャクした関係。ふ
だんは別々に暮らしているのだが、たまたまロランスが忍び込んだ母の家で、
シルヴィアに暴力をふるった娼婦の元締め組織の男を刺してしまう。それがき
っかけで２人は逃亡の旅に出る。
行く当てもなくとりあえず頼った元の娼婦仲間から、別れた夫がまだ自分を愛
しているらしいことを知らされ、そこを訪ねてみようとするシルヴィア。そこ
には、８歳になる息子もいるはずだったが……。
このテのロードムービーは、やっぱり行く先々の風景が心に残らないとつまら
ない。その点、この映画はよくできています。母と娘が訪れる場所の風景がバ
ツグンに美しい。田園風景、青い空、白い雲、山、川、虹、月など、どれも心
にしみ渡るような印象的な風景。しかも、今目の前にある風景だけでなく、主
人公の記憶の中に残る風景さえ美しい。 (*^。^*)
特に美しいのがその色彩なんですねぇ〜。
大自然のナチュラルな色彩の美しさに加え、主人公の服なども実にヴィヴィッ
ドにとらえられています。ホント、みんなそのまま絵はがきにして売り出した
いぐらいだなぁ〜。
また、オープニングでは花言葉が語られ、その後も「花」がところどころで使
われているのだが、この映像も美しく、効果的なポイントになっています。
そうした美しい映像をバックに、主人公をはじめ登場人物の心の変化をじっく
りとあぶり出していきます。セリフで多くを語ることなく、表情の微妙な変化
やしぐさ（タバコを持つ手が震えるとか）などで表現していくんです。多用さ
れる手持ちカメラも効果的。
特に主人公シルヴィアの心の変化が、スクリーンに鮮やかに刻み込まれていき
ます。娘に対する屈折した思い、かつての夫や息子への思い、過去のトラウマ
……。
表面的には自堕落な生活を送り、気に入らない相手に悪態をつき、ウソばかり
並べ立てる女なのだが、その奥底にある複雑な思いがジンワリとしみ出してき
ます。
イザベル・ユペールの演技も説得力十分。抑え目な演技で、シルヴィアの心の
奥底を見事に表現していきます。
旅の途中ではシルヴィアとロランスが離れ離れになったり、ナゾの中年男と出
会ったりするわけですが、それ以外にはそんなに大きなことは起きません。
むしろ、旅をしながらシルヴィアが自らの過去の傷をたどり、今までとは違う
自分を見つけていく心のドラマが中心。
そして、クライマックスでは、いよいよかつての夫と息子との再会……となる
わけですが、まあ、ここからはほぼ先の読める展開。それでも、その巧みな心
理描写のおかげで、最後まで飽きることはありません。けっこう切なさを感じ
てしまいました。
ラストもありがちですが、余韻を残した良い結末でした。
欲をいえば、もう少し母と娘の関係の変化をキッチリ描いて欲しかったな。ク
ライマックスでの娘の位置づけをハッキリさせれば、それがうまく表現できた
気がするんだけれど。
それに、刺殺事件のてん末ももう少し加えたほうがよかったのでは？ 母と娘
、それにナゾの男が追い詰められていくところを描いたほうが、もっとおもし
ろくなった気がします。そのあたりは、やや叙情に流れすぎて、曖昧なところ
が目につくんだよね。
それを除けば、心に残る良い映画だと思います。監督のオリヴィエ・ダアンと
いう名前は、どっかで聞いたことがあると思ったら、ジャン・レノ主演『クリ
ムゾン・リバー２』の監督でした。リュック・ベッソンの脚本がヒドかった映
画だけど、演出は素晴らしかったもんね。どんな駄作でも、才能ある人は輝く
ものなのです。 (☆o☆)キラキラ
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない？】
（大ワクはありがちなロードムービーだけど、心理描写の巧みさで、主人公の
再生を見事に描いた作品。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年７月８日（木）新宿武蔵野館にて。午後４時20分の回。