ジョンＱ―最後の決断―(JOHN Q)
（2002年 アメリカ）（上映時間１時間56分）
監督：ニック・カサヴェテス
出演：デンゼル・ワシントン、ロバート・デュヴァル、ジェームズ・ウッズ、
アン・ヘッシュ、レイ・リオッタ、キンバリー・エリス
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＜ストーリー＞
息子が突然心臓病で倒れた工員のジョン（デンゼル・ワシントン）。助かるに
は心臓移植しかないが、会社が社員に内緒で保険ランクを下げていたため、保
険金が下りず手術費が払えない。病院から非情な退院勧告を受け切羽詰ったジ
ョンは、ついに人質を取って病院にたてこもる……。
＜レビュー＞
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究極の親子の情愛が胸を打つ！ アメリカの医療制度の欠陥も告発
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「子供のためなら命も捨てられるッ！」 (｀ヘ´)
よく言いますよね。こういうこと。
ホントかぁ？ ホントにそんなことできるのかぁ？
てことで、究極の親子の愛の形をズキンズキンと突きつけてくるのがこの映画
。なので、それだけでかなりグッとくるわけですよ。
しかも、演じるのが名優デンゼル・ワシントンとくりゃあ、これはもう何をか
言わんや。イワンのバカ！
さて、今回デンゼルが演じるのは、工場で午前中だけ働いている貧しい男。妻
と幼い子供を食べさせるのに四苦八苦。
そんなある日、野球の試合中に子供が突然倒れてしまう。病院に運んだところ
心臓に大きな欠陥があり、心臓移植しか助かる方法がないという。
もちろん両親は移植を望む。だが、彼らが加入する保険では移植は適用外。院
長は移植を拒否して、子供を退院させようとする。
あれこれ手を尽くして費用を集め、保険を適用させようと奔走する父親だが、
ついに切羽詰って病院ジャックという手段に走る……。
話自体はオーソドックスなんです。フツーのサスペンスとして観れば、そんな
にスゴイ話だとは思わない。なにしろボクなんか、予告編を観てだいたい話が
読めましたもの。オープニングを観たらほぼ結末がわかっちゃいましたもの。
しょせんその程度のお話。
でもねぇ、やっぱり親子の情愛をエキセントリックな形で描いているから、胸
にグイグイ迫ってきて、最後まで目が離せないんですよ。 (゜O゜;
病院ジャックとはいっても、犯人のジョンはワルではありません
彼を犯罪に走らせたのは、息子への愛。前半で親子の関係がしっかり描かれる
し、ジョンが追い詰められていく姿もていねいに描かれるので、一件ムチャな
行動も納得して観られます。
展開的に驚いたのは、意外に早く病院ジャックが起きちゃうこと。はたして、
それで最後までもつのか？ と心配したんですが、そこからの引っ張り方がな
かなか見事。
人質や警察官にユニークな人材を配置して、ジョンと警察との攻防戦や病院内
部での出来事など、小さなドラマでうまいこと引っ張っていくんです。
なんせ出てくるのがクセモノばっかり。警察側が御大ロバート・デュバルでし
ょ。これまた超クセモノのレイ・リオッタでしょ。病院長のアン・ヘッシュあ
たりも適度にコワクて、適度に人情味があるユニーク・キャラ。そういう人た
ちの行動で、けっこう飽きずに観られちゃうんです。
ただし、親子の情愛というテーマからすると、やや中だるみの印象がしてしま
うのは仕方のないところ。まあ、ここはクライマックスに向かって盛り上がる
前の前フリというところでしょうか。
病院ジャックという暴挙に出たものの、明確な目算があるわけではないジョン
。膠着状態の中で、どうすればいいのかわからずに大いに戸惑う。そして、彼
が土壇場で出した結論は？？？
クライマックスでジョンが究極の選択をする場面は、結果がわかっているにも
かかわらず手に汗握るシーンでした。緊迫感でドキドキ〜！ σ(^◇^;)
単純なハッピーエンドを避けたラストも好感が持てます。ていうか、あれしか
ないよね。やっぱり。犯罪は犯罪なんだしサ。
いやぁ〜、やっぱりネタの勝利ですね。この映画は。極限の親子の情愛には誰
だって感動してしまいますもの。デンゼルの迫真の演技がそれをますます深み
のあるドラマにしてくれる。
その感動的なネタに、たてこもり劇というサスペンスとしてのドレッシングを
まぶしているのだから、これはもう良い味に仕上がるわけですよ。
しかも、事件の背景としてアメリカの医療制度の欠陥も描かれるんです。公的
保険などな〜んもナシ。お金持ってりゃ、どんな高度医療も受けられるのに、
キチンとした保険にも入っていない貧乏人は、ロクな治療も受けられない。要
するに「金持ち生きろ！ 貧乏人死ね！」てことですね。
まあ、日本もそのうちそうなるんじゃないかと、ボクなんかは思ってるんです
けどね。イヤだよ〜。弱肉強食の世の中なんてぇ〜。
そんなアメリカの医療制度に対する批判も適度に織り交ぜながら、親子の情愛
を的確に描いたサスペンス映画です。デンゼル演じる父親のやるせない気持が
たまりません。 (T^T)
先の展開が読めたり、サスペンスとしてダルい部分があったりと、いくつか欠
点もあるけれど、観る価値は十分にあるんじゃないでしょうか。かなりの力作
であることは保証します。デンゼルはじめ役者の熱演だけでも見応えあるし。
ちなみに監督のニック・カサヴェテスは、知る人ぞ知るインディーズ映画界の
巨匠ジョン・カサヴェテス監督の息子さんです。王道のメジャー映画のスタイ
ルをとりつつも、ところどころでインディーズっぽいゴツゴツした雰囲気が漂
うのは血のせいか！？
《ぽちのオススメ度》
★★★★
（わかっていても感動してしまう。そういう映画です。感激屋サンはハンカチ
必携かも。藤原紀香みたいに号泣するかどうかはともかく……。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2002年10月12日（土）試写会（ヤマハホール）にて。