隠し剣 鬼の爪


(2004年 日本)(上映時間2時間11分)
監督:山田洋次
出演:永瀬正敏、松たか子、吉岡秀隆、小澤征悦、田畑智子、高島礼子、田中
邦衛、倍賞千恵子、田中泯、小林稔侍、緒形拳
*丸の内ピカデリー1ほか松竹・東急系にて全国公開
ホームページ http://www.kakushiken.jp/
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ストーリー>
幕末。東北の小藩・海坂藩の平侍、片桐宗蔵(永瀬正敏)は、きえ(松たか子)
との再会に胸を痛めていた。かつて片桐家に行儀見習いの女中奉公に来ていた
彼女だが、その後大きな油問屋へ嫁入り。だが、今は痩せ細り、元気がない。数
カ月後、病で倒れたきえを宗蔵は自宅に連れ帰る。やがて、きえが元気を取り戻
した時、海坂藩の江戸屋敷で謀反が発覚。首謀者の一人である狭間弥市郎(小澤
征悦)は、山奥の座敷牢に閉じ込められるが、脱獄して民家に立てこもる。藩の
上層部は、狭間の剣術仲間だった宗蔵に彼を斬るよう命令するのだが……。

<レビュー>
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下級武士のまっすぐな生き様が清々しい時代劇。でも二作目ってツライ
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心にしみるとっても良い映画です。映画館を出る時に清々しい気分になれるこ
とは間違いナシ! なのだが……。 (~ヘ~;)

東北の小藩の下級武士、片桐宗蔵は、かつて下働きをしていたきえが嫁ぎ先の
商家で過酷な仕打ちを受け、病に臥せっていると聞いて強引に連れ戻す。やがて
元気を取り戻した彼女は、再び宗蔵の身の回りの世話をするが、周囲にあらぬウ
ワサが立ったことから、宗蔵は彼女を実家へ帰す。

そんな中、藩の剣術指南役だった戸田寛斎の門下生として、宗蔵とともに学ん
だ狭間弥市郎が謀反人となり、幽閉されてしまう。狭間は隙を見て脱走し、人質
を取って民家に立てこもる。片桐は家老から「狭間を討て!」と命じられるのだ
が……。

物語は、宗蔵ときえとのかなわぬ恋と、宗蔵の友人との決闘という2つのドラ
マを軸に描かれます。

まず、きえとの恋なんだけどさぁ〜、これがなんとも切ないのヨ。お互いに好
きなんだけど、身分の違いだの何だので、それを言い出せないんです。全力でき
えを守り、自分は誰とも結婚しない宗蔵。そして、ひたすら彼のそばで身の回り
の世話をするきえ。そういう形でしか愛を貫けない2人の気持ちが伝わってきて、
泣けてきてしまいます。
インスタントな恋愛が横行するこの時代だからこそ、この一見古風な恋が胸に
しみるのですよん。あーあ、たまらんなぁ〜。 (T^T)

一方、宗蔵と狭間との決闘を通しては、権力者に翻弄される男たちの哀しさや
ツラサが伝わってきて、こちらもなかなかに味わい深いドラマ。師匠直伝の秘技
をめぐる活劇としても見応えがあります。

だけど、ここまで語って気づいたボク。あれ? これって、どこかで見た風景
だぞ!
そーなんです。物語の大枠の構造が、山田洋次監督の前作『たそがれ清兵衛』
とそっくり同じなのヨ。真田広之演じる下級武士と宮沢りえ演じる幼なじみの恋、
そして藩指導部から謀反人を討つことを命令される下級武士。て、そっくりその
まんまやん!!! (`ヘ´)

もちろん細かいところは違うものの、大筋は完全に同じ。舞台になる藩も同じ
海坂藩。俳優もかなりカブッているので、観ているうちに「ああ、あの時真田広
之はこうだったよなぁ〜、宮沢りえはこうだったなぁ〜」とついつい前作を思い
出してしまうのだ。

なんといっても前作は、時代劇に新境地を開いた傑作でしたからねぇ〜、それ
に比べれば、さすがに今回はインパクトが弱い。情感漂う映画なのは前作と同じ
なのだが、その漂い具合もイマイチ希薄な感じがしてしまう。これってやっぱり
“二匹目のドジョウ”のツラサですかねぇ〜。
まあ、あの「寅さんシリーズ」を延々つくり続けた山田監督にしてみれば、こ
のぐらいどうってことないのかもしれませぬが……。 (^0^)

前作と違っているのは、緒形拳演じる家老の行動を通して、権力者の横暴ぶり
がよりクッキリと浮かび上がっていること。そして、それに対してある行動で立
ち上がる下級武士の姿を通して、時代劇の醍醐味の「勧善懲悪」も織り込んでい
ること(タイトルにある「隠し剣 鬼の爪」の使い方がうまい!)。
ヒューマニストの山田監督らしく、反戦思想や人の命を奪うことの虚しさも、
押し付けがましくなく描かれています。

西洋砲術に象徴される新時代の到来による、新時代VS旧時代の対立の構図も
明確になっているのと同時に、その西洋砲術を巧く使ったりした笑いどころが多
いのも今回の特徴。笑いでは藩士役の赤塚真人が実に良い味を出しています。

主人公の永瀬正敏の優しくキリリとした姿、松たか子の清そさも印象的。おま
けに、ボクの好きな田畑智子チャンが主人公の妹役で登場というのも見逃せない
ゾ。 (*^_^*)

前作同様、セットや衣裳、殺陣などのこだわりぶりもハンパではなく、何より
も清々しいあと味がたまらない映画。

ただし、2作目だけに、全体にこなれてきてエンタメ色も強くなった分、前作
のピュアさや鬼気迫る迫力に欠けるように感じました。
もしも『たそがれ清兵衛』を観る前だったら、「素晴らしいぃ〜!」と無条件
でホメたかもしれないのだが……。

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観ても損はナシ】
(“二匹目のドジョウ”のツラサはかなりあるが、良い映画なのは確か。清々
しいあと味がたまりません。特に『たそがれ清兵衛』未見の方にはオススメ)
                             <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2004年11月7日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時30分の回。


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