カル (ＧＯＮＥ ＩＮ ＳＩＸＴＹ ＳＥＣＯＮＤＳ)
(1999年 韓国)(１時間58分)
監督：チャン・ユニョン
出演：ハン・ソッキュ、シム・ウナ、ヨム・ジョンア、チャン・ハンソン、ユ
・ジュンサン、アン・ソクァン
＜ストーリー＞
ソウルで少年の転落死体が発見される。現場に駆けつけたのはチョ刑事（ハン
・ソッキュ）。その後、衝撃的なバラバラ死体事件が立て続けに３件発生。被
害者たちは体の一部分が欠けていた。チョ刑事は被害者たちがいずれも、美し
い女性スヨン（シム・ウナ）とかつて交際していたことを突き止める。だが、
彼女は、手がかりとなる自身の過去をなかなか語ろうとしなかった……。
＜レビュー＞
来週から、「Ｃｉｎｅｍａの王国」は韓国映画専門のメルマガになりま〜す。
なんてウソだよ〜ん。 (＾。^/)
でも、ホント最近よく韓国映画を取り上げるなぁ。たまたま、おもしろそうな
映画が続いたせいだけどサ。
で、この映画はどうだったかっていうと……。
「韓国のホラー・サスペンス」って言ったヤツは誰だ！
こりゃあ、ホラーじゃなくてスプラッター・ムービーじゃないか！！
オープニングから、いきなり生体解剖だゾ。血がドクドク流れるんだゾ。
その後も生首や、切断された手足、死体のリアルな切断面なんかがスクリーン
いっぱいに大映しだぁ〜！！
オエ〜ッ、つくりもんだとわかってても気色悪〜い。 (゜〇゜;)
これ観た後で、肉が食べられる人は相当に度胸がある。
ただ、そのスプラッター的な要素を除けば、まあまあよくできたサスペンスだ
と思う。
とにかく謎が謎を呼ぶという展開がおもしろい。
汚職の嫌疑をかけられた刑事チョ。
３件の連続バラバラ死体事件に出くわした彼は、捜査の過程で謎の美女スヨン
と出会う。被害者たちは、いずれも彼女と親しく交際した経験があった。
スヨンの身が危険だと感じたチョは自宅にかくまう。
捜査が進むうちに、事件は彼女の過去に関係があると確信したチョだが、彼女
は何も語ろうとしない。だが、やがて衝撃の事実が……。
二転三転の展開で、少しもスクリーンから目が離せない。
バラバラ死体というショッキングな事件を物語の中心に据え、その背後にある
ヒロインの秘めた過去をじっくり描き出すという構成もいい。
緊迫感にあふれ、時には不気味さを漂わせる映像も見事だ。
だが、あまりにも謎が多すぎる。しかも、それをポンポンと放り出して、結局
そのまんまで終わっちゃう。
肝心の真犯人はどうにかわかるものの、事件全体を取り巻く構図は観終わって
もまったくわからない。
その他にも解決しない謎が多すぎて、ただ混乱するばかり……。
どうやら、そういう謎は「お客さんが自分で考えてね」というのが、この映画
の姿勢らしい。
この映画のホームページには、ごていねいにも観た人たちが謎を推理し合うＢ
ＢＳまで用意されている。
「その謎を確かめるために、何度でも劇場に足を運んで欲しいなぁ〜」という
製作者側の願望がミエミエ。
まあ、そりゃ、営業政策的には良い企画だよネ。こういうのって。
だからこそ、韓国で記録的な大ヒットになったんでしょう。
別にわかりやすいだけが映画じゃないし、こうやって観客に問いを発する映画
もアリだと思う。
だけど、事件の核心まで謎のままってのはどうなんでしょう？
やっぱり反則だと思うんですけどネ。個人的には。
それとも、まさか続編をつくって、そこで種明かしをするの？
もしかしたら、これまで韓国にはこういうスタイルの映画がなかったのかも。
だとしたら、あえてそれにチャレンジした心意気は評価したい。
でも、すべてが謎だらけってのは、どう考えても納得できないなぁ。
(・_・？)
それに、あまりにもいろんなものを詰め込みすぎたために、全体に消化不良な
んだよネ。
たとえば、主人公のチョ刑事には汚職の嫌疑がかかっている。おまけに、母親
の生命維持装置をはずすことに同意して、母親が亡くなってしまう。そのあた
りの場面が最初のほうに登場するけど、後になるとまったく出てこなくなる。
あれって、いったい何の意味があったの？ 事件にどう関係していたの？
うーん、よくわからんゾ。
そんな中で、ヒロインのスヨンの過去については、なかなかウマイこと描いて
いたと思う。ドロドロになりがちな父親との屈折した関係を、乾いたタッチで
さりげなく描くことで、かえってその傷の大きさを浮かび上がらせていた。
ただ、それが事件とどう結びついていくのか。そこも謎のままだから、どうも
胸に何かがつかえているようで……。
チョ刑事とスヨンの関係が中途半端なのも気になった。
お互いに恋愛感情のようなものを抱くのだが、その描き方が浅いから素直に受
け止められない。
刑事と被害者（被疑者かも？）との心のふれあいが、事件をさらに奥深いもの
にするだけに、もう少しきちんと描いて欲しかったな。
でも、それって謎を深めるためにわざと浅く描いたの？
てなわけで、考えれば考えるほど謎ばっかりなんですヨ。最初から最後まで。
で、結局、ほとんど謎が解けない。
ほら、よくあるでしょ。ＴＶの『ツイン・ピークス』みたいに、「あれ、どう
なってるの？」って疑問ばっかりで、おかげで何度も観ちゃう作品……。
ああいうのと同じタイプの映画なんだなぁ。
監督は『接続』をヒットさせたチャン・ユニョン。
ただ僕は、あの作品はパソコン通信という素材はおもしろかったけれど、あり
きたりのラブ・ストーリーでどうもピンと来なかった。
その反動ってわけでもないだろうけど、今回はとんでもない方向にイッちゃい
ましたねぇ。ホント。大丈夫ですかぁ〜？ (＾。^/)
俳優陣では、『シュリ』でおなじみの「韓国の役所広司」ハン・ソッキュは、
今回もそのなりきりぶりが素晴らしい。美女に翻弄される刑事を、体当たりで
演じていた。
でも、この作品でいちばん光っていたのは、謎の美女スヨン役のシム・ウナで
すヨ。『八月のクリスマス』や『美術館の隣の動物園』の明るいキャラでおな
じみの彼女が、今回は180度違う影のある女を演じている。その変身ぶりにはた
だビックリ。 ( ゜_゜;)
だって、スクリーンに出てきても最初は気づかなかったもん。ずっと別人だと
思ってた。
顔が全然違うんだよね。化粧の違いとかもあるんだろうけどサ、それ以上に表
情やしぐさがまったく違う。女は魔物なんて言うけど、魔女ですよ、この人。
こんなに変身しちゃうなんて……。
最後にもう一度、念押しします。とにかく謎だらけでよくわからん映画です。
それだけにハマッちゃう危険性アリ。
それを覚悟してから観ましょうネ！！
《ぽちのオススメ度》
★★＋1／2★
(デビッド・フィンチャー監督の『セブン』を意識している感じもするんだけど
、あの戦慄感にはちょっと及ばなかったな……。)
＜ぽち＞