華氏911(FAHRENHEIT 911)
（2004年 アメリカ）（上映時間２時間２分）
製作・監督・脚本・出演：マイケル・ムーア
＊恵比寿ガーデンシネマほかにて全国公開
ホームページ http://www.kashi911.com/
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＜ストーリー＞
2000年大統領選挙で不正によって当選したブッシュ大統領は、就任後はテロの
危険を放置。ついに2001年9月11日に同時多発テロが発生する。だが、ブッシュ
の対応は後手後手にまわった。なぜなら彼の一族はサウジアラビアの石油利権で
ビンラディン一家と深く結びついていたからだった……。
＜レビュー＞
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偏った内容の映画で何が悪い！ 娯楽性タップリで必見の反ブッシュ映画
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コロンバイン高校銃乱射事件を題材にアメリカの銃社会を追及した『ボウリン
グ・フォー・コロンバイン』のマイケル・ムーア監督の新作。今年のカンヌ国際
映画祭で最高賞パルムドールを受賞しました。
まずはオープニングで2000年大統領選挙が不正によるものだったことを告発。
それに続いて、ブッシュがいかに無能で遊んでばかりいて、まともな政治をして
こなかったかを暴く。
それだけでなく彼の行動はすべて利権がらみ。衝撃の911事件後の迷走は、彼
の一族がサウジアラビアの石油利権によってあのビンラディン家と深く結びつい
ていたことが背景にあったのだ。 Ｗ（゜Ｏ゜）Ｗ
そして、それがやがて正当性のないイラク戦争につながり、多くの犠牲者を出
した。同時に、国内では根拠のないテロの危機を煽り、国民を政府の監視下に置
く恐怖政治を敷くようになった……。
てな感じのブッシュのデタラメぶりを、ユーモラスかつ皮肉タップリに描いて
いくワケですね。
いやぁ〜、ムチャクチャにおもしろいッ！ (＾−＾)
ドキュメンタリー的要素とエンターティメント的要素が見事に融合したマイケ
ル・ムーアらしい映画。彼の手にかかると、小難しいテーマを描いてもちっとも
難しくなく、楽し〜く観ることができるのですヨ。
カンヌの審査委員長タランティーノが「単に映画としておもしろかったから賞
を贈ったんだ」と言ったのも納得。
後半はややタッチが変わってイラク戦争の泥沼の映像を、そのまま提示します。
黒焦げの死体、手足を失った兵士やイラク国民、そして我が子を失った親たち。
あまりの悲惨さに思わず息を飲んでしまいます。
娘や息子をたくさん軍隊に入れたアメリカの母親が、息子の死に直面するとこ
ろでは、そのツライ心情がヒシヒシと伝わってきて、思わず泣けてしまいます。
(T^T)
それでも依然としてブッシュは、メチャクチャなことを続けているのですね。
全体を通してみると、ブッシュのアホさに笑えるし、戦争の悲惨さに泣けるし、
最後には怒りが込み上げてくる。まさに一級のエンターティメントになっている
のだ。「マイケル・ムーアはフツーのドラマをつくってもかなりのものがつく
れるはず」というのがボクの持論なのだが、それを再確認してしまいました。
『ボウリング・フォー〜』ほどの突撃取材はないけれど、議員に「あなたの子
供をイラクに送りませんか？」と勧誘するあたりは笑えるし、911事件の映像を
流さずに音だけで表現する演出も見事。胸にズシーンときてしまいました。
この映画に対して日本のメディアや批評家はかなり手厳しい批判をしています。
でも、そのほとんどはボクから見れば的ハズレ。 ┐(´-｀)┌
たとえば某新聞記者のこんな批判。「情報操作という点では、ブッシュ政権と
五十歩百歩ではないか」ですと。
あのなぁ〜、世界の強国の最高権力者による情報操作と、いくら人気者とはい
え一映画監督によるプロパガンダを同一に論じてどーすんの？
だいたい情報操作っていうけど、「もしかしたらこうなのでは？」という仮説
に基づいて、素材を組み立てていったら、「こんなになりましたぁ〜！」と提示
するのがイケないのか？
そんな見せかけの客観的だか中立だか（でも、中立ってなに？）な映画、ボク
はち〜っとも観たくありません。マイケル・ムーアのように、多少強引でも「オ
レはこう思うんだッ！」と言ってくれたほうが、そこからアレコレ論じ合えるっ
てもんじゃあ〜りませんか？ (｀ヘ´)
「こんなのドキュメンタリーじゃない！」という批判もありますが、そもそも
マイケル・ムーア自身が「ドキュメンタリーじゃなくてプロパガンダ映画だ」っ
て言いきってるんだから、これはもう論争にもなりませんよね。
てことで、笑って、泣いて、怒って、たぶんブッシュが嫌いになる映画。少な
くとも、ブッシュやイラク戦争について考えるきっかけを与えてくれるだけでも、
観る価値のある映画です。
この映画を観て、それでもまだブッシュを無条件に支持する人がいたらよほど
の頑固者。「反ブッシュのプロパガンダ映画だ！」というマイケル・ムーアの作
戦は見事に成功なのでありました。隊長！ (^o^)ゞ
小泉サン、やっぱり観たほうがいいよ、この映画。なに？ そんな勇気ないっ
てか？ な〜るほどね。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない？】
（重たいテーマなのに、気楽に楽しめる映画。内容に賛否はあれど、一見の価
値は絶対にアリ。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年８月21日（土）シネ・リーブル池袋にて。午後４時の回。