家族のかたち(ONCE UPON A TIME IN THE MIDLANDS)


(2002年 イギリス)(上映時間1時間44分)
監督・脚本:シェーン・メドウス
出演:ロバート・カーライル、リス・エヴァンス、シャーリー・ヘンダーソン
、フィン・アトキンス、キャシー・パーク、リッキー・トムリンソン
*シャンテ・シネほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.crest-inter.co.jp/kazoku/
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<ストーリー>

イギリス・ノッティンガムで自動車工場を営むデック(リス・エヴァンス)は、
テレビ番組で恋人のシャーリー(シャーリー・ヘンダーソン)に結婚を申し
込むが、断られてしまう。一方、この放送をたまたま見ていたシャーリーの元
夫ジミー(ロバート・カーライル)は、「俺にもまだやり直すチャンスがある
!」と、スコットランドから戻ってくる。恋人の元夫の出現に動揺を隠せない
デックは……。

<レビュー>
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元夫におびえるサエない男を応援したくなるハートウォームな映画
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せっかく新しい夫&父親ができそうな母娘のところに、元夫&実の父親が出現
してさあ大変。な〜んて話は別に珍しくもないですね。

それを魅力的にしているのがキャスティングの妙。なにしろ元夫ジミーを演じ
るのが、ちょっぴりワルでカッコいいロバート・カーライル(『トレインスポ
ッティング』)。それに対して現在の恋人デックを演じるのは、いかにもダメ
ダメで、ダサい感じのリス・エヴァンス(『ヒューマン・ネイチュア』)。ど
う見たって、こりゃあ元夫が有利でしょ。
だから、結末は最初から予想がついちゃうのに、その過程でついデックに肩入
れして、恋の行方にハラハラドキドキしてしまうのです。 o(^o^)o

しかも、その2人の間で揺れる母親を、夢見る少女がそのまま大人になったよ
うなシャーリー・ヘンダーソンが演じているから、なおさら恋は迷走状態。そ
こに娘のマーリーンが絡んできて、ますます混沌としてしまうワケ。

オープニングはテレビの人気番組「フェルツにおまかせ」。視聴者参加番組で、
シャーリーの義理の姉夫婦が出演。そこにシャーリーも加わり、彼女の恋人
デックが突然のプロポーズ。動揺したシャーリーはこれを拒否してしまう。
シャーリーの心から、まだ元夫の影が消えていないことがわかる象徴的な幕開
けで、その後の展開の布石になっています。

この番組を見ていたのがシャーリーの元夫で、今はスコットランドで荒れた生
活を送るジミー。「もう一度やり直せるかも」と思った彼は、シャーリーのい
る街に戻ってくる。

てことで、ジミーが登場してからのデックのうろたえ方はハンパではありませ
ん。笑っちゃうぐらいにオロオロして、情けないばかり。イギリス映画らしい
ユーモアを込めつつ、彼の動揺とジミーのシャーリーへの復縁攻勢、そして揺
れるシャーリーの思いを描いていきます。

しかし、これはけっして男女の愛だけの話ではありません。邦題にもあるよう
に、「家族のかたち」を描いた映画。娘のマーリーンと本当の父親であるジミ
ーとの関係、血のつながらないデックとの関係もしっかり描きながら、家族の
行く末を見せていきます。
同時にジミーの姉一家の姿もチラチラと描いて、ここでも一つの家族の姿を提
示しています。

ドラマの後半はうろたえるデックがとんでもない行動に出て、それをきっかけ
に大波乱の展開になります。ダメダメ男もやるときゃやるのです。たった1回
だけど(笑)。

ラストはやっぱり予定調和。それでも、そこに至るまでがけっこうハラハラさ
せられるので、ついホッとしてしまう。自然に微笑んでしまうとても温かな結
末です。 (*^。^*)
ノラ・ジョーンズの『Shoot the Moon』、サラ・マクラクランの『Adia』など
の音楽も、うまく雰囲気を盛り上げていますねぇ〜。

ま、ジミーの姉夫婦の描き方がやや中途半端だったり、途中でジミーがまたも
との自分勝手な男に戻るあたりの描き方が駆け足だったりと、いくつか気にな
るところはあるのですが、全体としてはよくまとまったハートウォームな映画
でした。

特に感心させられたのが、脚本、演出、演技が一体となって、巧みに観客の感
情移入を促すところ。なんたってヒネクレ者のボクまでが、ダメダメ男のデッ
クにすっかり感情移入してしまったほどですから……。

話自体はたいした話ではないけれど、ちょっぴり笑えて、切なくて、最後に心
がポカポカしてくる。おまけに、「家族ってなに?」と考えさせられて、最後
には「家族っていいなぁ〜」と思わせてくれる。小品ながら「うーむ、なかな
かやるわい」とうならされる映画でした。

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観ても損はナシ】
(適度な笑いと適度な切なさ、最後には心がポカポカして特別鑑賞券1500円は
まあオトクでしょう。)
                          <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2004年7月13日(火)シャンテ・シネにて。午後3時55分の回。


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