帰郷
| （2004年 日本）（上映時間１時間28分） 監督：萩生田宏治 出演：西島秀俊、片岡礼子、守山玲愛、高橋長英、相築あきこ、光石研、吉行 和子 ＊新宿武蔵野館ほかにて公開、全国順次公開 ホームページ http://bitte942.rsjp.net/kikyou/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 再婚する母親の結婚式に出席するため故郷に帰ってきた晴男（西島秀俊）は、 久しぶりにかつての恋人、深雪（片岡礼子）と再会する。出戻りの彼女には、 ７才の娘、チハル（守山玲愛）がいた。「もしかしたら自分の子では？」と思 った晴男は、翌日、深雪の家を訪ねるが、深雪は携帯を置いて出かけたまま帰 ってこない。晴男はチハルと一緒に深雪を探すのだが……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 頼りない男と可愛い少女の心の交流。まずまずの佳作ではあるけれど…… 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 某雑誌（て、『キネマ旬報』だけど）で評論家の評価が真っ二つに分かれ、某 映画サイト（て、ａｌｌｃｉｎｅｍａ ＯＮＬＩＮＥだけど）で「こういう映 画が日本映画をダメにしてる」みたいな投稿を目にしたこの映画。「だったら、 ワシが判断したる！」と観にいってきたのですワン。 Ｕ・ェ・Ｕ 東京で暮らす男が、突然母の再婚を知らされ結婚式に帰郷。そこで、昔好きだ った同級生と再会し、ひょんなことからその女性の娘の面倒を見ることに。で もって、昔、その女性とエッチしたこともあって、「もしかしたら、この子、 オレの子？？？」という思いに心が乱れ……というのが大まかな筋。 率直な感想をいうと、そんなにヒドイ映画じゃないじゃない。主人公の男と少 女との心の交流は、とっても良い雰囲気だし、全体を包むほのぼのとしたムー ドも魅力的。「こういう映画が日本映画をダメにしている」などという映画フ ァンのほうが、かえって日本映画をダメにしているような気がするのだが。 かといって、手放しでホメるほどの感動は残念ながらありませんでした。 中心は主人公の男と少女との心のふれあいで、そのあたりは実によく描写され ています。 しかし、それ以外の部分がイマイチしっくりこないのですヨ。特に晴男と深雪 の関係。 ２人がいったいどういう人で、どういうことを考えていて、それがどう変わっ ていくのか。そのあたりがよく見えてこなかったんだなぁ〜。両者の心のスレ 違いみたいなものも、あんまり伝わってこなかったしね。 深雪が子供をほっぽらかして消えるところも、セリフで心理を説明しているだ けで、本当の心の奥底が見えてきません。あれじゃ、ただ面倒だから子供を置 いて出かけたワガママ母にしか見えませんゾ！ (▼ヘ▼；) 一方、男のほうにしても、とってもお手軽に「これからこの子の面倒は一生見 ます！」なんて言っちゃってるけど、それって飛躍しすぎじゃないのか？ そ の前にもうちょっとなんか欲しい気がするんだけど。 ラストの展開も、どうも腑に落ちない。男のほうはともかく、女のほうが「彼 との結婚はないと思う」みたいなことを言う心根が、あんまりよく伝わってこ ないのだ。２人の関係が、スッゴク薄っぺらなものに見えてしまう。 そして、この一件によって、晴男がどう変わったのか、その変化もあんまり見 えないんだよなぁ〜。これって、ボクが鈍感だからですかねぇ〜。 それに、これは完全に個人的な好みの問題だと思うんだけど、セリフが物足り ないのヨ。ヘンに説明しすぎるセリフがあったかと思うと、逆に削り落としす ぎのセリフが出てきたりして、そのへんのバランスが悪い感じ。 ちなみに、脚本は萩生田監督と俳優としても活躍する利重剛です。 そんなこんなで、全体として切ない情感が伝わってくるところまではいかず。 でも、まあ、ここまで文句を言っておいてなんですが、個人的な好みを差し引 いて、客観的に観ればまずまずの佳作だと思います。特に晴男とチハルの交流 は、みずみずしさと、ほほえましさに満ちていて、とっても見応えがあります。 役者も、晴男役の西島秀俊は相変わらず独特のオーラを持った演技だし、病気 から２年ぶりに復帰した片岡礼子のサッパリ感もいいし、娘役の守山玲愛チャ ンのカワイさもハンパじゃないし。 晴男とチハルの交流を中心に、繊細でほのぼのとしたムードに浸りたい方はど うぞ。 《ぽちのオススメ度》 ★★☆☆☆（＋1／2★） （愛すべき佳作だとは思うのだが、セリフがボクの好みとイマイチ違っていた りして、物足りなさを感じてしまいました。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年６月23日（木）新宿武蔵野館にて。午後５時10分の回。 |