キル・ビル ｖｏｌ．２(KILL BILL VOL.2)
（2004年 アメリカ）（上映時間２時間16分）
監督・脚本：クエンティン・タランティーノ
出演：ユマ・サーマン、デヴィッド・キャラダイン、マイケル・マドセン、ダ
リル・ハンナ、ゴードン・リュー、マイケル・パークス
＊丸の内ピカデリー１ほか松竹・東急系にて全国公開
ホームページ http://www.killbill.jp/
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＜ストーリー＞
結婚式の教会で友人や夫を殺害され、自らも瀕死の重傷を負い、身ごもってい
た子供を失った暗殺組織の元メンバー、ザ・ブライド（ユマ・サーマン）。奇
跡的に一命をとりとめた彼女は復讐の旅に出る。オーレン・イシイ、ヴァニー
タ・グリーンを倒し、残るはエル・ドライバー（ダリル・ハンナ）、バド（マ
イケル・マドセン）、そして、子供の父親であり、かつて愛した男ビル（デヴ
ィッド・キャラダイン）だった……。
＜レビュー＞
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タランティーノはただのオタクじゃない。今度は愛の物語だッ！！
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オタク精神大爆発。「そんなのアリかよ〜〜〜？？？」と思いつつも、ありと
あらゆる映画の要素を叩き込むというあまりのバクレツぶりに、ボクもつい★
★★★を献上してしまった前作。その続編であり、もともとは１本の映画を分
割した「ｖｏｌ．２」がついに登場です！ (＾o＾)／
結婚式の教会で夫や友人を殺害されたザ・ブライドが、組織のボス、ビルをは
じめ５人に対して復讐を誓う。まずはヴァニータ・グリーンを殺し、続いて日
本に飛び服部半蔵に名刀をつくってもらい、それを手にオーレン・イシイと対
決する……。
てのが、『ｖｏｌ．１』のストーリー。ルーシー・リュー扮するヤクザのオー
レン・イシイと復讐に燃えるザ・ブライドの青葉屋での決戦が最大の見どころ
で、いかにもタランティーノらしい暴走しまくりのアクションがギチギチに詰
まった映画でした。
それを受け継いだ今作は、当然ながら残りの３人、エル・ドライバー、バド、
そして、ボスのビルを倒すのだが、なんとビックリ、今回はアクションはごく
ごく控えめ。
その代わりに展開するのが、この復讐劇に至った背景や複雑な愛憎劇を解き明
かす人間ドラマ。なんとタランティーノは、この映画で人間ドラマを描いてし
まったのです！ そういや、サブタイトルに「ザ・ラブ・ストーリー」ってあ
ったわい。
オープニングのモノクロシーンで、これまでの経緯をコンパクトに説明。ユマ
・サーマンが車をドライブしながらの独白は、まるで昔のハリウッド映画のよ
うな懐かしさあふれる映像。
そして、事件の発端となった教会での回想シーンでは、ブライドとビルとの息
詰まる対話が印象的。両者の愛憎が入り混じった複雑な感情が、スクリーン全
体に満ち満ちています。
「え！？ タランティーノって、こんなに心理描写が上手かったっけ？」と驚
いてしまうような素晴らしいシーン。 (*^。^*)
その後、現在に戻って、ビルと弟のバドが話すシーンも、これまた両者の心理
がキチッと描かれる。「自分は罰せられて当然」と言いながらも、今さら逃れ
られないバドの表情に哀愁が漂う。
もう、とにかくタランティーノ上手すぎ！ これだけ濃密な空間をつくり出せ
るなんて、ちっとも知りませんでした。ゴメン、見損なっていたぜ。m(._.)m
その濃密さの典型が、ブライドが生きて地中に埋められるシーン。スクリーン
がしばらく真っ暗になって、スコップの音だの、土がかぶせられる音だのが聞
こえるんです。
これはすごいシーンでしたねぇ〜。観ていてブライドに同化しちゃって、自分
が窒息死するかと思いましたもん（そんな大げさな）。
もちろん控えめとはいえアクションもちゃんとあります。 O(・_・)○☆
かつてのブライドが、拳法の達人パイ・メイのもとで地獄の特訓を繰り返すシ
ーンは、まさにカンフー映画そのもの。
そうそう、この映画全体はマカロニ・ウエスタン風につくられているのね。音
楽もマカロニ・ウエスタンの巨匠エンニオ・モリコーネの曲を使ったりして。
こういうところで、タランティーノのオタク精神は健在です。
さて、こうして人間ドラマを追求しつつ、復讐劇は進行。
バドは思わぬことで思わぬことになり、最初の血戦はダリル・ハンナ演じるエ
ル・ドライバーとの戦い。これはまさに壮絶な戦い。あれ、あれ、目が、目が
ぁ〜〜〜〜〜〜！！！（∋_∈）
そして、クライマックスは当然ながらビルとの対決。
しかし、その前に意外な展開が。ま、詳しくは言いませんが、ある重要な人物
が登場します。とってもキャワイイわよ〜ん。 （☆o☆）
しかも、ビルとの対決の前には、延々と２人の対話が展開される。そこで両者
が背負ったものがクッキリと浮かび上がり、２人の愛憎がいよいよ沸騰点へと
達する。
つまり、ここまで描かれてきた一見荒唐無稽な復讐劇が、実はそれなりに自然
な展開だったことがわかるんですヨ。
でもって、避けられぬ２人の対決。しかし、これが意外にあっさりと終わる。
クライマックスの戦いをこれだけあっさり済ませるというのは、この映画でタ
ランティーノが描きたかったのが、人間ドラマ以外の何物でもないということ
を証明しています。
そうです。これはまさにタランティーノ流の「ラブ・ストーリー」なのです。
誰もが愛し合いながら、同時に憎しみ合っている。そして最後に残るのは親子
の情愛……。
キャスティングは今回もユニーク。特にかつてＴＶドラマ『燃えよ！ カンフ
ー』で活躍したデヴィッド・キャラダインをビル役に起用したのは大ヒット。
『スプラッシュ』のダリル・ハンナにアイパッチをさせたり、ビルの弟役にＢ
級アクションには欠かせないマイケル・マドセンを起用したりと、ツウをうな
らせるキャストです。
『ｖｏｌ．１』とはまったく違うタランティーノの魅力が味わえる映画。『ｖ
ｏｌ．１』のようなキレたアクションが好きな人には、物足りないのでしょう
が、ボクはかなり楽しめました。
この映画のエンドタイトルでは『ｖｏｌ．１』も含めたキャストが、実にてい
ねいに紹介されます。おかげで異様に長いタイトルロールになっています。い
かにも映画大好きなタランティーノらしい配慮だと思います。
そういうところでもわかるように、タランティーノはオタクです。底抜けのオ
タクです。どうしようもないオタクです。
でも、ただのオバカなオタクじゃない。彼は人間の心理もキチッととらえられ
る優れた映像作家でもあるのです。それがよーくわかる映画でした。 (~ヘ~)
《ぽちのオススメ度》
★★★★☆【絶対にオススメ！ みんな観てねぇ〜】
（深みと味わいは『ｖｏｌ．１』より断然あります。個人的にはこちらの方が
好き。前作に★４つつけた以上、こちらにもつけないワケには……。ド派手な
アクションを期待すると、とんでもなく裏切られるので要注意ですゾ。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年４月24日（土）池袋シネマサンシャインにて。午後２時40分の回。