キリング・ミー・ソフトリー (KILLING ME SOFTLY)
（2001年 アメリカ）（上映時間１時間41分）
監督：陳凱歌（チェン・カイコー）
出演：ヘザー・グラハム、ジョセフ・ファインズ、ナターシャ・マケルホーン、イアン・ハート
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＜ストーリー＞
ロンドンに住むアリス（ヘザー・グラハム）は、登山家のアダム（ジョセフ・
ファインズ）と電撃的な恋に落ちる。めくるめく情事に溺れ、恋人を捨ててア
ダムのもとに走るアリス。だが、アダムは思いも寄らない凶暴性を見せ始める。
彼の以前の恋人の死に疑問を持ち始めたアリスは真相を追求するが……。
＜レビュー＞
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ソツなくまとめた官能サスペンス。でも、なんでチェン・カイコーが？
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『さらば、わが愛／覇王別姫』などで知られる中国の鬼才、陳凱歌（チェン・
カイコー）監督のハリウッド進出第一弾。お得意の歴史モノではなく、いかに
もハリウッド的なサスペンスを撮ったというので、いったいどんな映画なのか
興味津々で観ました。 (@_@)
アメリカ生まれでロンドンに渡り、ウェブサイト開発などを担当するキャリア
ウーマンのアリスは、エンジニアの恋人ジェイクと平穏な生活を送っていた。
だが、ある朝出勤途中の交差点でミステリアスな男と出逢う。その視線の魔力
に引き込まれたアリスは、彼が気になって仕方なくなり、男が消えた本屋を覗
く……。
おいおい！ いくら何でも唐突だって。 (＾0＾)
何しろ最初に、アリスと恋人との生活がとっても幸せであることが強調されて
いるんですよ。それなのに、たった一度交差点で見つめ合っただけで、彼の後
を追うほどメロメロになっちゃうなんて……。
理屈を越えた官能の世界への導入部というつもりなんでしょうけど、それにし
たって不自然すぎる。
そりゃあ、たしかにアダム役のジョセフ・ファインズは、男のフェロモンたっ
ぷりの目をしていたけどねぇ〜。 (^。^;)
おまけに、その後、すぐに２人はタクシーでアダムの家へ行って、そのまま速
攻で激しいエッチをしちゃうんですもん。
これじゃ、アリスはただのケーハクな、おバカ女にしか見えません。もうちょ
っとビミョーな女心でも表現してくれたなら、それなりに納得してあげてもい
いのだが……。
この冒頭部分で、僕はかなりの違和感を感じてしまいました。 (~ヘ~;)
さて、アダムは実は有名な登山家。そして、登山の滑落事故で当時の恋人フラ
ンソワーズを救えなかったことをずっと後悔していた。
そんな彼への思いをさらに募らせたアリスは、恋人に別れを告げて彼の家へ向
かう。だが、そこにいたのはアダムではなく、姉のデボラだった。そこは彼女
の家でアダムは留守番に来ていたのだ（余談：留守番しに来てエッチするなぁ
〜！）。
アリスはアダムの本当の住所を聞き、そこでアダムとともに暮らし始める。幸
せな愛の日々を送る２人は、やがてアダムのお気に入りの、山間にある教会で
結婚式を挙げる。
ところが、そのうちにアリスのもとには、無言電話やアダムとの関係を警告す
るナゾの手紙が舞い込むようになる。
アダムの隠された過去を知りたくなったアリスが調べを進めると、そこには信
じられないような事実が浮かび上がってきた……。 W(゜o゜)W
電撃的な恋ゆえに男のことを何も知らない女。そこに疑惑のタネが生まれ、そ
れがどんどん大きくなっていく……という「官能のサスペンス」なワケです。
そこで、サスペンスの面からチェックしてみると、はっきり言って二流のサス
ペンス劇でしかありません。ソコソコまとめてはいるものの、どちらかという
とありがちで、どうってことのない話。ストーリーも平板だし、ナゾ解きの魅
力もあんまりない。アダムの登山家という仕事も、そんなに効果的に使われて
いる感じではありません。この程度のシナリオなら、どこにでも転がっていそ
う。 ┐(´-｀)┌
その中で、唯一、感心したのがラストのドンデン返し。正直これは予想外でし
た。 ( ゜_゜;)
この映画の原作は、ジョーン・フレンチとニッキ・ゲラードというジャーナリ
ストの夫婦がニッキ・フレンチというペンネームで書いた英国のベストセラー
小説『優しく殺して』ですが、この結末は原作とは違うものだそうです。
でも、よくよく考えたら、ナゾの背景に、アダムとある女性との関係があるこ
とはミエミエなんですよねぇ、最初から。だから、ミステリーの好きな人なら、
意外に簡単に事件の真相を見破っちゃうかもしれません。
というわけで、「官能のサスペンス」の「サスペンス」はイマイチ。それなら
「官能」の方はどうかといえば……。
これもねぇ、ヘザー・グラハムとジョセフ・ファインズの文字通り体を張った
熱演は目立ったけど、あんまりエロチックな感じはしなかったなぁ〜。アリス
が官能の世界にハマり込んで身動きできなくなるコワさとか、「わかっちゃい
るけどやめられない」ツラさとか、そういう心の中が全然伝わってこなかった
んです。 (´ヘ｀;)
「検閲のある中国では描けないセックスを描きたかった」というチェン監督の
気持ちもわからないではないが、そうまでして描く価値があるのかどうか、大
いに疑問。
人間の性に対する深い洞察でもあるのかと思ったら、そんなものはどこにもあ
りませんでした。やたらにハダカを出せばいいってもんじゃないんだからサ。
(・_・？)
サスペンスとしても官能の世界を描いた映画としても中途半端。
でも、まあこの程度の脚本を、それなりの映画に仕上げてしまうところがチェ
ン監督の力量なんでしょうか。細かなテクでナゾを深めていくあたりは、さす
がという感じもします。色彩鮮やかな映像の美しさも光っています。
もしも、これがチェン監督の映画じゃなければ、サスペンスとして平均点ぐら
いはあげられるかも。でも、「なぜチェン監督が？？？」という疑問は最後ま
で消えませんでした。そこがどうにもツライところです。
いくらハリウッド進出ったって、こんなどーでもいいような映画を撮ってどー
するの？？？？？
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆
（よくまとまっているが可もなく不可もない平均点の映画。『ラスト・タンゴ
・イン・パリ』のように官能の世界を突き進むか、本格的なサスペンスに徹す
るか、どちらかに絞った方が良かったのでは？）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2002年２月25日（月）池袋ＨＵＭＡＸシネマズ４にて。午前10時40分の回。