愛についてのキンゼイ・レポート(KINSEY)
| （2004年 アメリカ・ドイツ）（上映時間１時間58分） 監督・脚本：ビル・コンドン 出演：リーアム・ニーソン、ローラ・リニー、クリス・オドネル、ピーター・ サースガード、ティモシー・ハットン、ジョン・リスゴー ＊シネマスクエアとうきゅう、シネスイッチ銀座ほかにて全国公開 ホームページ http://www.kinsey.jp/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ インディアナ大学で動物学を教えるアルフレッド・キンゼイ博士（リーアム・ ニーソン）は、教え子クララ（ローラ・リニー）と恋に落ち結婚する。初夜を うまく過ごせなかった２人だが、医師の指導によって問題は解決。自信を得た キンゼイは同じ悩みを持つ学生の相談に乗るようになり、やがて大学で「結婚 講座」を開講する。そこで、セックスという分野がいかに未開拓であるかを痛 感した彼は、科学者として性の実態調査を決断するのだが……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 セックス研究まっしぐら！ 時代の異端者を描いた波乱のドラマ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 タイトルにある「キンゼイ・レボート」というのは、アルフレッド・キンゼイ 博士が行った、全米1万8000人もの人々を対象にしたセックスに関する調査をま とめたレポート。今読んでもけっこう衝撃的な内容だったりするのだが、なん とコレ、性に関する話題が絶対的にタブー視されていた1940年代に行われた調 査なのだ。 ；￣ロ￣）！！ そのキンゼイ博士の生涯を描いたのがこの映画。監督・脚本は『ゴッド・アン ド・モンスター』でアカデミー賞脚色賞を受賞し、『シカゴ』などの脚本でも 知られるビル・コンドン。 といっても、ただの偉人伝ではありません。実に起伏に満ちた人間ドラマにな っています。セックスに関する面接調査を前にした模擬インタビューで、助手 たちの質問にキンゼイ博士が答える形で、彼の生い立ちなどが語られます。厳 格な父との確執、妻クララとの愛と性、そしてセックス研究に没頭していく姿 ……。 意外だったのは、もともとキンゼイ博士は昆虫を研究していた生物学者だった ということ。それが、様々な背景からセックスの研究に進んでいきます。しか も、彼の探究心はケタはずれ。昆虫を研究していた時もそうでしたが、真理の 探究に没頭すると周囲など見えずに、どんどん暴走していくのです。おかげで、 セックスの研究を始めてからも、何とまあ自らを研究の実験材料に……。 Ｗ（・o・）Ｗ そんな博士を見ているうちに「何なのだ？ この人は」と最初はあきれてしま いました。しかし、彼の行動に悪意はなく、いわゆる学者バカの一途さが混乱 を招くだけなのです。だから、妻は彼を見捨てないし、子供の頃に確執のあっ た父ともやがて和解します。 しかし、何しろ保守的な時代。博士の研究は大きな反響を呼ぶものの、やがて バッシングの嵐にさらされてしまい、彼は偉人どころか、社会の異端者とされ てしまいます……。 こうして波乱の人生を送った博士のドラマは見応えたっぷり。何よりも印象的 なのが、キンゼイ博士役のリーアム・ニーソンの演技です。研究のためにすべ てを投げ打つ顔と、家族のことを思う優しい顔の両面をうまく演じ分け、博士 の人物像を厚みのあるものにしています。 同時に、この映画は当時の保守化した世の中のコワさも描き出しています。一 度世論が保守化すると、真理の探究などままならなくなってしまうのです。キ リスト教保守派の影響を受けたブッシュ大統領のもと、保守化しつつある最近 のアメリカ社会。だからこそ、製作者たちはこうした映画をつくろうとしたの ではないでしょうか。真実を追求することの大切さはいつの時代も変わりませ ん。今につながる重い意味を持つ映画だと思います。 ラストの森の中のシーンでは、邦題にある「愛」がジンワリと心にしみます。 「愛について」という放題でありながら、それまでは、愛なんて計測できない 非科学的なものとして邪魔者扱いしているかのようなキンゼイ博士の言動。し かし、最後になってようやく、愛の大切さが伝わってきました。いくらセック スが大事でも、やっぱり愛がなくちゃね！！ (＾▽＾)／ キンゼイ博士と息子や娘との関係がやや中途半端な描き方だったりするものの、 全体としてはなかなか見応えある映画でした。 リーアム・ニーソン以外の役者も充実していて、妻役のローラ・リニー（『ミ スティック・リバー』）、助手役のピーター・サースガード（『ニュースの天 才』）、クリス・オドネル（『バーティカル・リミット』）、ティモシー・ハ ットン（『普通の人々』）などがどれも存在感アリ。 個人的に特にうれしかったのが、主人公の父親役で、ジョン・リスゴーが出演 していたこと。『ガープの世界』『愛と追憶の日々』などの名優ですが、久々 に目撃できて感激！！ 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆（＋1／2★） （リーアム・ニーソンのさすがの演技が光る異端の人物伝。保守的な世の中の コワさも伝わってきます。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年８月28日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後３時30分の 回。 |