こころの湯 (洗澡)


(1999年 中国)(上映時間1時間32分)
監督:チャン・ヤン
出演:チュウ・シュイ、プー・ツンシン、ジャン・ウー
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<ストーリー>
北京の下町でリュウ(チュウ・シュイ)が営む銭湯「清水池」は、今日も常連
客で賑わっていた。そこに、家業を継がずに遠くの都市でサラリーマンとして
働く長男ターミン(プー・ツンシン)が、突然帰ってくる。知的障害のある弟
アミン(ジャン・ウー)から来たハガキを見て、父に何かあったのではないか
と心配になったのだ。だが、父は無事だった。安心したターミンはすぐに帰ろ
うとするが、いくつかの事件が重なり、滞在が延びていく。そんな時、地域開
発のために「清水池」の取り壊しが決まり……。

<レビュー>
皆さん、最近銭湯に行きましたぁ?
僕は全然行ってませ〜ん。でも、そういう人って多いんじゃない?
アパートにもお風呂があるのが当たり前になって、銭湯の数もどんどん減って
いるからねぇ。

そんな中、この映画の舞台は中国の銭湯。
そこで繰り広げられるほのぼのとしたホームドラマ。下町の人情や家族の愛情
が伝わってきて、まるで本当に銭湯に入ったみたいに、なんだかとっても温か
になれる映画なんです。 (*^。^*)

まず、オープニングが傑作なんですヨ。
車を洗車するみたいに、人間を「洗人」するマシンが登場。立ってるだけで、
ボディを自然に磨いてくれるんです。
そのブッ飛んだ光景に思わず笑っちゃいましたね。 (^。^/)

でも、ブッ飛び場面はココだけ。
そこから先は、一転して落ち着いたタッチの人情ドラマが展開されていく。
驚くような映像もなければ、意外な展開もナシ。

舞台になる北京の下町の銭湯「清水池」は、とっても楽しい場所。
マッサージ、あかスリ、吸盤治療(?)、そんなサービスもあるけれど、それ
以上にそこは庶民のコミュニティーの場。いろんなユニークな人たちが集まっ
てくる。
コオロギを戦わせる老人、「オーソレミオ」を絶唱する若者、妻と不仲の夫、
借金取りに追われる男……。
そんなお客たちを相手にするリュウとアミンの親子。時には、お客たちの悩み
事の相談まで引き受けるリュウ。まさに、ここは人々にとって心身ともに癒さ
れる場所なのだ。 (^。^;)

そんな温かな場所に、突然、舞い戻ってきた長男のターミン。
家業を捨てて遠くで暮らす彼と、父のリュウとの間にはわだかまりがある。
外出時に弟を見失ってしまったターミンに向かって「わしや弟のことなんか、
お前の眼中にないんだろう。だがわしはアミンまで失いたくないッ!」とリ
ュウが吠える……。(`ヘ´)

でも、爆発するのはその時だけ。激しいぶつかり合いは他にはない。
それ以外は、3人の親子と銭湯のお客たちの日常が、淡々とユーモラスに描か
れていく。
予定外に滞在が延びるターミンだが、その心の揺れ動きもごく控えめにしか表
現されない。

やがて、銭湯の取り壊しが決まり、さらに大きな悲劇が家族を襲う。 (T^T)
だが、それでも過剰な涙もなければドラマチックな展開もあまり見られない。
とにかく静か〜に話が進んでいく……。

こういうおとなしいタッチに、初めのうちはちょっと疑問も感じたんです。 
(・_・?)
だってさぁ、描いているのは、銭湯や人情といった、時代に取り残されて消え
ていくものたちでしょ。
家業を継がず家を出たターミンは新しい時代の象徴であり、銭湯を守り続ける
父は古い時代の象徴でもあるわけだ。
そういう姿をクッキリ描き出すためには、もっと両者のゴツゴツしたぶつかり
合いを激しく出すべきだったのでは? 監督の主張をもっとストレートに伝え
る部分があった方がよかったのでは?

でもねぇ、チャン・ヤン監督は、あえてそういう撮り方をしなかったんですね
ぇ〜。
失われつつあるものへのノスタルジックな気持ちを声高に叫んだりせずに、ホ
ンワカした雰囲気のホームドラマにしちゃったんです。
それによって、かえって、なつかしさや悲しさがジワ〜ッと伝わってくるんだ
なぁ〜。(^.^)
その控えめな描き方が、とってもいい味を出している。

チャン・ヤン監督は、前作『スパイシー・ラブスープ』でノリのいい、キラキ
ラした映像を生み出した。今回は、そんなノリの良さこそないものの、ユーモ
アのセンスは健在。知的障害のある弟アミンをネタに使った笑いが多いんだけ
ど、こういう笑いって以前の中国映画だったらタブー視されてたんじゃない?
でも、それがまた独特のぬくもりをつくり出しているんだよね。

それから、主演の父親リュウ役のチュウ・シュイは、日本ではNHKドラマ「
大地の子」で知られている。この人、中国では国宝級の役者だそうで、なるほ
ど余韻のある演技が見事ですねぇ。

いやぁ〜、ホント、銭湯に入っているみたいに、心から温まる映画です。
ホンワカした気持ちになりたい方にはピッタリ!
もしかしたら、観た後で銭湯に行きたくなっちゃうかも!?  (#^_^#)

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆(+1/2★)
(え? このクソ暑いのに温かくなんかなりたくないって? まあ、そういわ
ずに。映画館は冷房も効いてることだしサ。)
                              <ぽち>


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